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シリウスをさがして…  作者: もちっぱち
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第46話



 人はダメだと言われることほどダメの方向に行ってしまうのはなぜだろう。





紬は忌引きで休んでいた輝久が登校するであろう次の日に早く起きて、同じバスに乗れるように準備を急いでいた。




 もう早く起きることができているため、家族は驚かなくなった。



 今日はわざと寝癖があるように見せてみようかなと鏡を見ながら、髪をとかした。



 頭のてっぺんが妖気が立つように盛り上がっている。



紬にあざとさが出てきた。






バス停に着くと、輝久が何事をないように待っていた。こちらに気づかない。



「おはよう。」


「あ、うん。おはよう。この間はありがとう。」


「ううん。全然。」


「今日、早いね。」


「乗ってもいい?」


「別に、乗ったら良いじゃん。」


 普通に話せていることに嬉しかった。

 輝久も少し緊張はしていたが、嬉しそうだった。


「断られるかと思った。」


「断る理由がわからない。」


 ちょうどバスが来た。紬が先に乗り込んで、後から輝久が乗り込む。


 1番後ろの座席に座った。


「紬…いや、なんでもない。」


言いかけて諦めた。


おもむろに自分で頭をとかした。


「これでしょう。」


「うん。それ。」


「直ったよね。」


「いいじゃないの。」


「普通に話してよ。」


「いや、別に。」


「それしか言わないね。」


「……。」


 輝久の中で決めていたのか、大きく会話を広げることはしなかった。


「あのさ、普通に話してはダメなの?」


「うん。」


「なんで。」


「放っておいて。」


「……。」


「陸斗先輩、大事にしなよ。俺のことは気にしないで。」


「そう言われると気になる。」


「俺も彼女作ったし、紬と話してたら嫉妬されるから。」


「え、そうなの。どんな人?」


「いや、食いついてこないで。話したくない。」


「なんだ。紹介してくれるわけじゃないんだね。」


「なんで、紬に紹介しないといけないわけ? 兄妹でもなんでもないじゃん。ごめん、無理。」



 完全に拒否された気分にことなおさらショックが大きい。


「……一緒のバス乗らなきゃよかった。」



紬は機嫌を損ねたのか、輝久からだいぶ離れた座席に移動した。ため息をつく。



輝久にとっては好都合だった。



徐々に紬離れをしなきゃと思っていたためだ。



彼女ができたなんて嘘だったし、離れる口実を作りたかった。




輝久もため息をついて、バスの外をみて、気分転換させたが、紬の様子がどうしても気になってしまう。

 

 


 子どものようにそっぽを向いてむつけている。



小学生の時もそんな状況があったことを思い出した。



  結局は翌日には忘れていた。



今日は、陸斗にラインさえも送っていなかったため、学校のバス停には誰も待っていなかった。



輝久と喧嘩のような感じになるし、ご機嫌ではないし、散々だなと思って、バスからおりてすぐの平なところでずてんと転んだ。




 膝を擦りむいた。



あんなに拒否していた輝久は、バックに入っていた絆創膏を黙って渡した。




紬は何も言わずに受け取った。



膝にピタッと貼る。



立ち上がって、近くにいたと思ったら、いつの間にか輝久は目の前からいなくなっていた。


 

 校舎の方に歩いていた。



 寂しさを残して校舎に向かう。





***


ピロン

ラインにメッセージが届いた。


『森本美嘉です。陸斗先輩から紹介されました。よろしくお願いします。』



宮島洸は、元彼女の家にいた。



突然大学の休講の時間を利用して、呼び出されていた。



アパートの1室のLED電球を取り替えてほしいとのことだった。



彼氏にやってもらえばいいのにと言ったら、別れたばかりで頼めないだの理由をつけてなぜか自分を呼び出される。

 


イヤイヤながらも返事をして来てしまった。


(俺は便利屋じゃないつぅーの。)


 テーブルの上に置いていたスマホをのぞく。


「ん?彼女からライン?」



「彼女になるかもしんない人からラインかな。」



「モテる男は大変ね。」



「おかけさまで…。はい、つけ終わりました。」



 踏み台を片付けながら、作業を終える。用意されたコーヒーを飲んだ。



「ありがとう。助かった。」



「遊衣先輩も俺なんて呼ばなくても来てくれる男子はいるんじゃないですか?」



 そう言いながら、洸は美嘉から来たラインにすぐ返事を返す。



「いないよ。洸くんくらい。」



「好きな人いるって言ってたの別れたんですか?」



「うん。」



「まぁ、次の彼氏すぐ見つかりますって。遊衣先輩、結構、大学内で有名ですし、ファイト!」



 洸はガッツポーズしてみせた。


 そろそろ帰ろうかと部屋から出ようとすると、遊衣は後ろから洸にしがみついた。



「ねえ、私たちあの頃みたいに戻れないかな。」



 腰に回された腕を優しく外そうとする。



「…もう、俺たち終わったじゃないですか。」



一瞬、理性が飛びそうになったが、顔を横に振って、精神を落ち着かせた。



「洸が良い。洸となら、上手くいきそう。私、洸の言うことならなんでも聞くから。お願い。より、戻そう?」



遊衣の手を右手で払いのける。



「……ごめんなさい。もう信じられません。俺は、あの時に見切りをつけたんす。遊衣先輩とはもう無理です。あの時、俺は本気だったんです。それを好きな人ができたって言ったのは遊衣先輩ですよね。」



「あ、あの時は…ごめんなさい。私もどうかしてたの。それでも、信じていた人に裏切られて…。今度こそは、もう、そう言うことないからお願い。」



必死に袖を握って引きとめようとする。

そっとその手を離す。



「いや、俺はもう裏切られているから。ごめんなさい。」



 振り切って、洸はドアを開けてすぐに閉めた。ドアの前でため息をついた。



 遊衣はもうダメだと悟ったため、その場に泣き崩れた。


 尚更、付き合っていた彼氏と別れたばかりだったため、傷心しきっていた。





遊衣に振られた時、それ以上に傷ついていたのは洸の方だった。

 



 大学に入ってすぐに加入したサークルで出会った#伊東遊衣__いとうゆい__#。


 かわいいなという第一印象で出会ってすぐに意気投合して交際を申し込んだ。


本気で付き合ったのは彼女だったかもし れない。


 高校の時にも付き合っていた彼女はいたが、ほぼ遊んでいた。別れてもいいって思っていた。



思い入れが強かったはずだった。


半同棲して、交際して1年で、突然好きな人ができたと別れ話になった。


 本気で想っていた。



 でも、相手が違う人がいいなら洸は諦めた。



  ほぼ毎日一緒にいたのに、自分じゃない誰かが選ばれたと思うとショックでたまらなかった。


 

 そして1年も経たないうちにこのありさま。


 

 自分は別れの寂しさを埋める都合の良い彼氏じゃない。




ちょうど、美嘉からのラインもあった。




過去とはおさらばしたい。



履いていたスニーカーの靴紐を結び直した。


遊衣のアパートを後ろを振り返らずに立ち去った。




ーーー



一人で過ごすことが多くなった紬は昼休みにワイヤレスイヤホンを耳に取り付けた。周りとの接点を遮断しようとした。


 だが、それは見事に崩れ落ちる。



「紬ちゃん!! 今日こそは屋上に行くよ!」


 美嘉が机の前に立ちはばかり、つけたばかりのイヤホンを外された。


きっと陸斗と付き合うことになったんだと自慢されるのではないかと想像し、不機嫌そうに無言で拒否しようとした。




「陸斗先輩、紬ちゃん連れてこないと私が怒られるんだから!本当に来てよ。」



 言ってることが理解できない。


 自分が行かないことでなぜ美嘉が怒られるのか。

 


「やめてよ。美嘉ちゃん、陸斗先輩と私の前でイチャつく気でしょ!?隆介くんと別れたばかりで、自慢するのはやめてほしい。」



「??? 紬ちゃん、何言ってるの?なんで私が陸斗先輩とイチャつかなきゃいけないのよ。むしろ、紬ちゃんと陸斗先輩の方がイチャつかないでって思うんですけど…。って、私が隆介の別れたこと他の友達には言ってないんだから言わないでよ~。」



「え、美嘉。隆介と別れてたの?」


 その話を教室内で聞いていた美由紀が言う。


「あー、確かにこの間、陸斗先輩に紹介されたって話してたのって別れたからなんだね。」


 瑞季も話し出す。



「そ、そうなんだ。実はそう言う感じになって…黙っててごめんね。」



「それは別に良いけど、紬ちゃんに勘違いさせたんじゃない?美嘉、発言には気をつけなよ。」



「うん。ごめんね、紬ちゃん。陸斗先輩の話出したから、付き合ってるとか思ったのかな。そもそも、私が付き合うわけないでしょう。思いっきり振られたんだから。勘違いしすぎだよ。」



「……そうなんだ。」


しばらく誰とも接点を取っていなかった紬は真実を知って,安心した。


会話をすることで知ることがたくさんある。


 妄想で膨らんでいたネガティブな気持ちが一瞬にして、晴れ渡った。




心のシャッターを,少しずつ開けた。




紬は美香の後について屋上に向かった。

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