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シリウスをさがして…  作者: もちっぱち
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第37話

 いつの間にか、うつ伏せで眠っていた。こんなに神経を使ったのは久しぶりだった。体が重い。


 本気で恋愛するのも、高校生の時以来。カーテンを開けると嫌と思うほど、太陽が眩しかった。

 今だけは照らして欲しくない。



大学に入って数年間は、来るもの拒ずで受け入れて来たけど、ボロが出るようになって、離れていく人ばかりだった。


本気じゃないって途中でバレる。


やれるだけやって終わりでしょうと頬を叩かれて終了する。


そんなつもり全然ないのに、深層心理はそうだったのかもしれない。



愛がない、気持ちが入ってない。





寝癖を妖気が立つようにピンとなっていた。



「洸、いつまで寝てんの?ほら、ご飯食べて行きなさいよ。」



 母の花鈴は、口だけはうるさくなった。


 家事も得意じゃないのに、自分の身だしなみばかり気にする人。



 父の裕樹は相変わらず、仕事しながら、家事全般担当している。要領がいいんだろうな。



 母ができないから。一度は頑張って努力して挑戦していたが、途中で諦めている。


早く家を出て、1人暮らししたいと常々感じている。


 まだ、独り立ちするには予算が足りない。バイトは辞められない。



 クローゼットから服を取り、青系のジーズンズとベージュのワッフルシャツをはおり、上にはグレーパーカーを着た。


 深月は母と一緒で身なりをすごく気にして、ご飯は適当に済ましている。



「お兄! 寝癖しっかり治していきなよ。妖怪退治の主人公になっているよ!」


 深月を見ていると妹ということもあってかすごく幼く感じる。


 本当に紬と同い年なのかと疑う。


「今日、ご飯、いらねぇ。」


「え、お腹空いてないの?」


 寝癖を適当にスプレーをかけて、とかす。

 あまり直ってないが、面倒になった。無造作ヘアにとワックスを手のひらに練り込んで、ワシャワシャした。


 あるシンガーみたいに前髪を斜めに流した。


 自分の顔をあまり見たくない。

 自信をなくす。


 陸斗と何が違う。身長?顔?体型?

 鏡に聞いてもわからない。

 

 他人のものが欲しくなる。


 隣の芝生は青く感じる。


 陸斗のものだから、気になるのかもしれない。


 今まで一度も気にしたことはなかった。


  


 「行って来ます。」


 ぺたんこのバックを肩にかけて、家を出た。



 「行ってらっしゃい!」


 3人は揃って遠くから声をかける。

 この年になってこのお見送りに恥ずかしさが出る。



 いつも、大学に行くのは125ccのバイクに乗って行っていた。ヘルメットをかぶって、跨った。


 車は、仕事で父の裕樹が使うため、普段は土日だけ借りて使っていた。共用していた。


 バイクは自分専用だった。



 何かの鳴き声のようにバイクの音があたりに響き渡った。







ーーー 




駐車場にバイクを置いて、校舎に向かう。


今日の講義は 英語と環境科学の2コマで終了時間は14時30分までと考えると早く帰りたいと思ってしまう。



 空きコマの時間が長くてどう時間をつぶすかが悩みどころだった。


 同じ講義を受ける友人ならば、話も合うが、すれ違いだと1人で時間をつぶすことの方が多い。


 図書室で本を読んだり、外や大学内をを散歩して歩数を増やしたり、1人暮らししている友達の家に遊びに行くこともしばしばあった。



「洸、今日はどこで過ごす? まだ時間あるだろ?」



「ミッチー、朝食べてないからコンビニ行ってもいい?」



「え?もうごはん? 今まだ8時半だよ。」


「良いから、付き合えって。」


 #斉藤光彦__さいとうみつひこ__#は、洸と同じで大学2年だった。隣の山形から引っ越して1人暮らししている。時々アパートに遊びに行ったりしてた。


 学食まで繋がる廊下を歩いていると向こうから、サークルの先輩兼元彼女が通り過ぎようとする。


「あ…。」


「久しぶりです。」


「洸くん、元気そうね。変わりない?」


「ええ、まぁ。遊衣先輩も元気そうっすね。」


「相変わらず、抜けてるのね。寝癖、また直し忘れてるよ。」


 彼女とは気持ちのすれ違いが多かった。

 嫌いで別れた訳じゃない。

 自然消滅だった。


 連絡を取らなくなってそれっきりだった。


 大学でも滅多に合わなかった。


 洸が、サークルから脱退したためだ。



「今日は寝坊してたから…。それじゃぁ。」



「また連絡するから、返事ちょうだいね。」



「はい。」


 

 その場限りの返事をした。

 連絡する気も起きなかった。

 気力がない。

 また、避けられるんじゃないかと不安になる。


 遊衣先輩の気持ちがわからない。


 会話せずとも居心地が良かったはずなのに、あんなに近くまで一緒にいて、温もりを感じていたはずだった。


 何もライバルや障害になるものが無かった。でも、それは好きという愛では無かったのかもしれない。


 一緒にいるだけではうまくいかないこともある。


 恋愛に何が正しくて何が間違っているかわからない。


 ただ、ボタンの掛け違いのようにお互いに合わなかったところがあるんだろう。


 彼女はおしゃべりな方ではなかったが、会う会わないの電話や会話の回数、連絡の取り方、デートの回数、体の相性、仕草や想い、何が良く無かったなんて、振り返っても分からない。


 でも、洸が、今はっきり言えることは、好きな人は違うということだ。


 妥協して、彼女を作りたくない。


 傷つきたくない。


 傷つくなら、当たって砕けてから、次に進みたい。



「洸、ほら、行くぞ。」


「ああ、ごめん。」



「あの先輩とは別れたばかりだったんじゃないの?」



「そうなんだけどさ。大人な対応しておかないとさ。」




「ふーん。薄情だね。そんな態度取るならスルーした方よくない?曖昧な感じ、洸、勘違いされるぞ?」




「え、俺ってそうなのかな。かわいそうって思って、そんな態度取れない。だから、女にモテないのかな…。落ち込むわ。」




 頭をモシャモシャにかきむしった。


 光彦はコンビニに入ると、適当に商品を物色する。



 洸はおもむろに、好きな具材の鮭とツナマヨのおにぎり2個カゴに入れて、お菓子コーナーにぶらさがっているグミを、選んで会計をした。




 光彦はいたが、1人で食べる朝ごはん何だか味気なかった。


 



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