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シリウスをさがして…  作者: もちっぱち


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第29話

 紅葉狩り季節、テレビでは北海道の方で赤、黄に色づいた木々たちの様子がドローン撮影で映し出されていた。



 東北の紅葉はまだ先だろう。

少し寒さが強まった頃に綺麗に見える。



列車が走る橋を背景にまだら模様の木々が美しい名所があった。



 花や紅葉などの木々を見に人びとが集まるのはなぜだろう。

何も咲かないところに人は集まらない。閑散としている。


それでも、季節問わず、気分転換には小高い展望台から見えるダムは現実から離れることができる。


 文化祭の準備をしながら、特にトラブルなく学校生活を過ごしていた。


 前よりも遠慮なく、陸斗と紬は一緒にいる時間が長かった。


 昼休みに短時間だったが、忘れず、週2~3回は予定を合わせて図書室の横の進路指導室でなんでもないことを会って話していた。


 学校生徒や先生からとがめられることもなく周りの視線なんて気にしてなかった。


 ごく自然に過ごせるこの空間が好きだった。


 陸斗は大学を選ぶのに難航していた。先生曰く、どこでも通用するだろうと言われていた。


 成績は良かったが、事故の影響で出席日数が足りないため、大学入学共通テストで受けることにした。


 入学願書の準備を少しずつやっていた。


「受験生は大変だね。勉強しながら、小論文の書き方とかやらなきゃないもんね。私も少しずつ勉強しておかないと追いつかないかも。」


陸斗は厚めのファイルを棚に戻した。


「紬も大学受験するの? まだ1年生じゃん。」


「むー…私の頭脳を何だと思ってるの?陸斗先輩の何倍も勉強しないと頭に入らないんだから。良いよね!要領よくテストとか解けちゃうの。その力分けて欲しいくらい。」


「…ふーん。俺は別に高校生活楽しめば良いのにって思っただけだけど。気負いすぎだよ、紬。俺は何回も同じことするのが嫌なだけだよ。単調な作業が嫌いなだけ。」


「それって自慢?…ズルい。はぁ…落ち込む。」



「別に大学なんて行かなくてもいいんじゃない?紬は専門学校でもいいじゃん。デザインするの興味あるって言ってたっしょ。俺は、男だしさ、国家資格取るには大学行かないとダメっしょ。まだ、何の仕事に就くかなんて考えてないけど…。好きなことしたらいいさ。」




 椅子に座っていた紬の頭をポンポンと撫でた。


何だか少しホッとした。



もっと勉強しろと言われるんじゃないかと考えていたからだ。




 途中で転部したが、美術部でデッサンの絵を描いたり、抽象画を描いたり、コンクールに出したりもしたが、部員のメンバーと相性が合わなくて辞めた。



 今は写真部で活動も週1回で緩く現像の仕方など教わっていた。




 何かを表現することにとても興味惹かれていた。




「そういやさ、最近、クローゼットの中整理してたら、父さんと母さんの学生時代のアルバムとか出てきたんだけど、見に来ない? 俺に似てるところあるなとか思ってさ、紬にも見せたくて、母さんはいつも出張でいないんだけど、父さんにも紬のことしっかり紹介というか、話しておきたくて…今日ウチ来れる?」




「お父さんの若い頃? 陸斗先輩に似てるんだ。見てみたいかな。でも、お父さんと何話せばいいの?緊張するよ。」




「大丈夫、適当で、父さん元コックだったし料理作れるから。一緒にご飯食べようよ。今日、五十嵐先生、急用で部活休みになったし、ちょうど良いじゃん。あ、妹にも会って欲しいかな。悠灯って言うんだけどさ。中学生なんだ。」




「何回か見かけたけど、確かに話とかはしてなかったね。良いのかな、突然行っても。」



「うん、大丈夫。ウエルカムだよ。」



 陸斗は嬉しそうにピースをする。




「わかった。家に連絡入れておくよ。んじゃそろそろ昼休み終わるし、放課後だね。」



「そうだな。」



 テーブルに広げた資料をまとめて、ファイルに戻した。



 まだ、午後の授業があるのに、何故か陸斗の心臓は激しく動いた。

 変にドキドキする。



 紬は、陸斗のお父さんと妹の悠灯ちゃんとどんな話をしようか頭の中でモヤモヤ考えた。



 それぞれ階段の踊り場で分かれて元の教室に戻った。


ーーー




放課後、昇降口で先に待っていたのは、紬の方だった。同じクラスの美嘉たちに陸斗の家に行くと言ったらかなり冷やかされて、耳が赤いのが止まらなかった。


別れ際に「お幸せに~」と言われてなおさら、頭から煙が出そうだった。



 平然としていられない。



ワイヤレスイヤホンを耳につけて、好きな曲を聴くが、恋人に想いをはせる歌詞が出ると自分のことのように感情移入してしまう。



 ポケットにスマホを入れて、目をつぶって天を仰ぐ。


 

 頬に指がささる。


「いっ!?」


「ごめん、やりすぎた。」


「痛い!」


「だから、ごめんって。結構、待ってたでしょう?」


「うーん、15分くらいかな。5曲くらい聴けた。靴紐解けてるよ。」


 段差に陸斗の足が見えて、さりげなく、紐を結んだ。


 真上からシャツの隙間から見える鎖骨できらりとネックレスが光った。


 何ヶ月かの記念日に買ってあげたものを今でも大事につけてくれていることに照れた。


「あ、ありがとう。自分で出来るのに…。」


「だよね。ついつい結んでしまった…。」


 悪いことしたかなと紬は結んだ靴紐をあえてほどいた。


「え、解かなくてもいいのにー。」


 と言いながら、自分で結び直した。


「どっち?!」


「んじゃ、行こ。」


 どうでもよくなった陸斗。でも、紬に結んでもらうのは恥ずかしさが大きかった。


「そのネックレス、付けてたんだね。学校でも。すっかり忘れてた。」


 紬は首元を触る。服で隠れてたと思ったのに、一瞬見られたことにドキッとした。


「…うん。外すタイミングが無くて、ずっとつけた。気に入ってるよ。」


「何か嬉しい。買って良かったかな。」


 照れてる顔見て、さらにドキッとする。風が頬をうった。前髪がふわっと動いた。


「家まで一緒に帰るの初めてだよね。自転車あるけど、押していくからゆっくり歩こう。」


 学校から陸斗の家まで徒歩で20分。今まで、紬の家には何度か行ったことのある陸斗。

 自分の家に連れてきたことはなかったのを思い出す。


 思い立ったが、吉日と、部活の休みを利用して、今日は誘ってみた。全然、計画なんて立ててないのに、何だかソワソワする。


 他愛のない話で盛り上がりながら、鉄筋コンクリートで出来た丈夫そうなマンションに着いた。



外にある屋根付きの駐輪場に自転車をとめて、自動ドアがあるで出入り口に行く。

 部屋番号を押して、オートロックの鍵を差して開けた。


 エレベーターに誘導される。


「ここの3階だから。」


「すごい大きいところだね。買い物した時運ぶの大変だね。」


「そう、確かにその通り。荷物運びにいつも父さんに呼ばれるのよ。体力はつくけどね。普段は階段使うから。今日は特別。」


 ピロン。


 音とエレベーターが3階に着いた。

 

「何か緊張する。」


「なんで?このタイミング?」


 笑いが止まらない。笑いながら、陸斗は紬を家の扉を開けて、案内する。


「はい、ここです。どうぞ、お入りください。」


 紳士のように案内された。


「お邪魔します。」


 玄関に入ると、とても綺麗に整頓されていて、入るのが申し訳なくなってしまう。


 扉を閉めて、中に入ると誰もいる気配がなかった。


「あれ、おかしいな。父さんと悠灯どこ行ったんだろう。今日、別に用事なかったはずだけど…。」


そう言いながら、リビングにあるテーブルの上のメモ紙に目を通した。


『陸斗へ 

 おかえり。

 突然で申し訳ないんだけど、上司に呼ばれて東京の本社に行くことになりました。時間かかりそうなので、母さんの同じホテルで1泊する予定です。悠灯は友達とパジャマパーティーするって言ってたから明日まで帰らないそうです。夕ご飯と朝ご飯は作りおきしておいたものを冷蔵庫に入れておいたから食べてて。ごめんね。よろしく。父 さとしより。』


「うわ、マジか。なんで、今日なんだよ。…しかも、1人で食べきれない量だし…器も2つ?」


「ん?どうしたの? うわあ、凄い美味しそう。」


 大皿にミートソースのパスタとオムライスが2つの皿にドンとサラダつきで乗っていた。


 スイーツは透明なガラスコップにショートケーキのようなイチゴたっぷりに生クリームが乗ったパフェが入っていた。


「オシャレだね。」


「うん。そうだね。父さん作ってたみたい。ごめん、何か話するって言ってたのに出張で東京行ったみたい。悠灯も何故か友達とパジャマパーティーとか行ってるみたい。」


「…へぇ、そうなの?楽しそうだね。パジャマパーティ。今日、金曜日で明日学校もお休みだもんね。」

 

 紬はそこまで気にしてないようだった。逆に2人と何を話したら良いかわからないため、少しホッとした。


「まーいっか。2人でご飯食べちゃお。まだ食べるには時間早いから、言ってたアルバム見ちゃう?」


「うん。」


「ちょっと待ってね。」


 陸斗は荷物も持って行きつつ、自分の部屋の散らかり具合を確認した。


 ふとベッドの棚上を見ると茶色い紙袋にリボンをつけたものが置いてあった。




 付箋に『陸斗へ』と書いた文字が。

 

 父さとしの筆跡によく似ている。



 プレゼントかと思って中をのぞくと、お年頃の男子たるもの持っておかないといけないものが入っていた。




お猿のように顔を火が吹く勢いで赤くなった。



 もしかして、今日のことバレてるのかと自分の部屋に監視カメラや盗聴器がないか確認したが、特に見つからなかった。




(そんな、下心丸出しで今日誘ったわけじゃないのに…何かそっちの流れになる感じなのか。無理っしょ。心の準備してないわ!)



 陸斗の中の天使と悪魔の戦いが始まりそうだった。



 顔を横に振って、気持ちを切り替えて、部屋を片付けに集中する。



クローゼットにしまってあったアルバムを部屋の小さなテーブルに置いた。


 さっきの茶色の紙袋は自分の勉強机の引き出しの方へ閉まった。



「ごめん、こっち来て良いよ。部屋少し散らかっているけど良いかな。」



 ドアごしにリビングのソファに座っていた紬を手招きして呼んだ。


 部屋の中に入ると思ったより小綺麗に片付いていて、男子と部屋だとは思えなかった。


 ところどころ、インテリアに凝ってるのか小さなサボテンがあったり、可愛い恐竜のフィギュアが飾られていた。


「ほら、コレコレ。父さんと母さんの写真なんだけどさ、紬にも見えなくない?」


 父のさとしと母の紗栄が隣に並んで写ってる写真はまるで陸斗と紬が隣同士にいるみたいにシンクロしていた。


 ちょうど写っていた時期は高校生の時にお花見で撮った写真のようだったふざけて鼻に花びらを乗せているのもある。


 とても楽しそうな瞬間だった。



「ねぇ、陸斗先輩。私の顔、お母さんに似てるから声かけてくれたの?」


アルバムをパラパラと見ながら聞く。


「…んー、どうだったかな。」

 

 本当は図星なのにそうじゃないふりをする。恥ずかしすぎた。


 紬は部屋を見回すと、ベッドの棚付近にいろんな写真立てが並べられていることに気づいた。


 そこには陸斗自身の幼い頃の写真が所狭しと並んでいる。



「先輩の部屋にはたくさん写真あるんですね。」


ベッドにそっと乗っかって、写真立ての陸斗の可愛い写真をマジマジと見た。まだあどけない幼少期の頃は、目がぱっちりしていて、女の子に間違えられそうなくらい可愛いアングルに写っている。


 どんどん見ていくと奥の方に手を伸ばそうとした瞬間、陸斗は



「あ、それは、見ないでほしい!」


 慌てて見て欲しくない写真を取ろうした途端に陸斗の腕が伸びた先には……?!


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