表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

とある父親のはかりごと





「お前の娘は何処だ。」


 

後ろは崖であとがない。

丘の上の私の屋敷は燃え盛っている。


何もかもが燃え尽きるのだろう。

妻の遺した思い出とともに。


私は剣を構えながら自嘲めいた笑みを浮かべた。


「兄上は昔から謀の類いが得意でいらっしゃいましたね。

ですが思いもよりませんでした。こんな事をなさるとは。」

「…フローレンスよ、私たちは兄弟だ。

私だってこんな事したくはなかった。


けれど仕方がないだろう。兄である私を差し置いて、お前のようなボンクラでも当主の座につけてしまったのだ。


スペンサー家固有の()()を持って生まれてきた者が当主になるという、

馬鹿馬鹿しい暗黙の了解があるせいで…。」


 キンッ!!

 

「…ッ!」

「…お前とお前の娘さえ居なくなればスペンサー家の正当な後継者は、私ただ一人。


お前たちの死で周囲は私を怪しむだろうが、証拠を残すようなヘマはしていない。国王陛下も認めて下さるだろう。


そしていづれ皆気がつくのだ。祝福の有無などくだらないと。


私こそが真に、当主に相応しいと。」



フローレンスは背後の崖下をのぞいた。


「…やはり、兄上の謀のとおりになりそうですね。」


昨晩の雨のおかげで川の水傘は多いように見えるが、流石にこの高さから落ちては生きてはいられないだろう。

 

兄上は訝しげに私を睨んでいた。


「娘の侍女の実家を訪ねてみて下さい。

そこで娘の遺体を預かってもらっています。」




「…今何と言った。」




「…娘は既に亡くなっていると言ったのです。


追ってから逃げている最中、怪我を負って、病にかかり、あっさりと……」


 カキンッ!!


私の剣が弾き飛ばされて崖の下へ落ちていく。




私はにっこり微笑んで、

何の躊躇いもなく崖を飛び降りた。


「…待てっ!!!」

 




 ザパンッ!!!!





祝福の有無なんてくだらない。

そんなもの、無ければ無いで世の中うまく回っていく。


そこだけは共感できるよ、兄上。




祝福の有無は生まれてきてすぐに分かる。

体の何処かに痣のような印があれば、それが祝福持ちの証である。


娘にも祝福の印があった。

瞳の中に。


誰も気がついていないようだったから、私はあえて誰にも言わなかった。


 




―ソフィア…


その(祝福)、上手く使うんだよ。












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ