6.先生との対決
次のテストに向けて私は徹底的に勉強し、隙あらば闇魔法を発動していた。
他の属性の勉強中にすら闇魔法のイメトレをしていたので、途中水魔法と闇魔法が混在した汚水を精製してしまったが、今は闇魔法に集中しようと一人黙々と頑張っていた。
テスト前日は徹夜した。空き教室が使えるギリギリまで実技の練習を行い、寮に戻ってからはテキストとノートに囓りつき、ひたすら一問一答を繰り返した。
当日、他の授業は少しフラフラしたけど、闇魔法の授業時間が近づくにつれて少しずつ気分が高揚し、私は決意を胸に移動のために廊下をずんずんと進んだ。
教室にたどり着いて「失礼します」と言って入室したのは授業10分前だったが、今日は先生はまだ来ていなかった。
私は席に座り、呼吸を整えクラウスヴェイク先生を待った。
直後、ギィと扉を開けて入室してきた先生はやたらニヤニヤしてこう言った。
「おや、今日は珍しく早いのですね。さて、前回の発言のとおり、今日はテストをします。実技の合間に質問をしていきますから、答えてください。あんまり時間がかかる様なら、魔法の発動に支障をきたしますから、減点と見なします」
「わかりました」
私は挑む様に先生を見ながら、指示された場所へ移動し魔法の発動準備に備えた。
「では、まずは初歩の的当てから」
私は手を翳し、正確に的を狙い闇魔法を打った。
「闇魔法の一番の特徴は?」
「周囲にある全ての暗闇から力を貰えます。天候が悪くても使用者の体力が減少していても、精神力が保てていれば発動可能です」
集中しながら早口で捲し立てると、先生も顔を引き締め声を出した。
「次!闇魔法を正確に具現化しなさい」
闇魔法で丁寧に球体を作り上げながら私は自分に言い聞かせた。大丈夫、ちゃんと出来てる。頑張れ私!
「闇魔法の著名人3名とその功績を述べなさい!」
先生は実技と口頭質問を交互に指示してきた。少しずつスピードも上がり、私もかなり集中しながらこなしていく。
だんだんと体力が減っていくのがわかった。でも闇魔法は精神力でカバーがきく唯一の魔法だ。集中力を切らさないよう、私は必死に食らいつきながら次々に魔法を発動していく。
「そこまで」
先生の言葉で、魔法の発動を止めた。
その瞬間、一気に疲れが足にきて私はその場にへたりこんだ。
「········思ってたより、努力したようですね」
はあはあと息を切らしながら、先生を見上げると、前回の授業の際にあった嘲りが、彼の瞳から無くなっているのがわかった。
「いいでしょう。今日から貴女はきちんと名前で呼んで差し上げましょう、ニーナ」
結果を見せろと言われ意地になったけど、彼が私を名で呼ぶと言うことは、私の勉強を彼が認めたと言うことだ。私の努力が認められた瞬間だった。
「嬉しいです。クラウスヴェイク先生」
一気に緊張感が抜けて、ヘニャリと笑った。