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52.異性の体 2

 


 真っ直ぐに射貫く様に見てくる先生と一瞬目があっていたたまれなくてまた視線をずらす。


「ほら、どうぞ?」


 掴まれたまま、先生の胸を指先でなぞる。

 硬くて、広い、男の人の胸。

 トクトクと耳に自分の心音が聴こえ始めた。


「ニーナは触ったあと、どうしました?」

「え······と、自分のと触って比べたら随分違うなって」

「そう。じゃ、今度は私が触ります」


 服の上からゆっくりと、アロイス先生の長くて綺麗な手が私の胸に触れる。鍵穴のネックレスがシャランと揺れた。


 両手で、ゆっくりと優しく触れて、それからそれぞれの指が別の生き物みたいに蠢きだして、ゆっくりと味わう様に触れられる。


 自分で触っても何ともなかったのに。


 アロイス先生の手が私の胸に触れていると思うと、胸の奥がキュンとして、何だか切なくて、少しずつ呼吸が浅くなって、堪らず自分の指を齧った。


「なんて顔してるんですか」


 そんなこと言われてもわからない。

 呼吸音に甘い吐息が混じり、目から涙が出そうだ。


「····は·····アロイス先生······っ」


 小さく先生の名を呼ぶと、先生の端正な顔が近付いてきて私の唇を塞いだ。


 ちゅ、ちゅっ、と二人の水音が部屋中に響いて、手が先生を求めて、先生の肩に腕をまわした。


 先生の舌が私の口を蹂躙する。唇の端から混ざり合った唾液がつうっと落ちる。


 舌と舌が絡まって、求めあうように触れあって、切なくて、心が戦慄いた。


 前にした時とは少し違う。

 今、確かに私の心は悦んでいる。

 触れられて嬉しいと

 求められて幸せだと

 他の誰でもない

 彼が私を欲してる事実にどうしようもなく喜びを感じた。


「好きです、ニーナ」

「あ······っ先生······っ」

「大好きなんです」


 先生の唇が気がつくと首筋に移っていて、ゆっくりと耳元までキスされる。先生の吐息が耳にかかって、背筋が震えた。


「どうしよう······」


 肩で呼吸を繰り返し呟く。


「何がですか」


 先生も呼吸が荒い。


「アロイス先生とのキスが嬉しいの」


 独り言のように吐き出すと、直ぐに先生が唇を求めてきた。


 何度も、何度も角度を変えて触れあって、やっと先生の唇が離れる。


「そうやって煽ることを言う」

「煽ったわけじゃ······」


 ヘニャリと体が溶けて腰が抜けてしまった私を先生は抱き締めた。



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