51.異性の体
翌週からテストが始まったが、思っていた以上にテストはよく出来た。実技は全てが平均点より高かったし、魔法薬学は71点と私にしては上々の出来映えだった。
テストが終わる週末には、先生のおうちに遊びにいく約束をしていたので、土曜日の朝、いつもの住宅街で黄金のドアの鍵を開け開いた。でも、いつも玄関口で迎えてくれるはずの先生の姿が見えなかった。
「先生?お邪魔しますよ」
返答がないので勝手に中にはいり、キョロキョロと部屋を見渡す。先生にしては、部屋が雑然としていた。いつもはきっちりと片付けられているリビングダイニングには、着ていた服がそのまま置かれ、テーブルには何本か空のワインとグラスが転がっていた。
寝室を覗くと、上半身の黒シャツが完全にはだけた状態でアロイス先生が寝ていた。
「わーお、先生セクシー♡」
全世界の女性が虜にされそうなフェロモンを放ち眠る先生を見ていたら、なんだかドキドキしてきて、いたずらしてみたい衝動に駆られる。
コートを脱いで、そっとベッドの端に座り、はだけた胸元をつついてみた。
いつもは服越しに抱き締められていたから気づかなかったけど、はだけた胸を触っていたら先生って男の人なんだなと思った。私の体と余りにも違う。鎖骨もしっかりしているし、喉仏が出ていてしっかりした造りをしている。自分の胸は、柔らかいけど、先生は硬い。触りながら比べる。
興味津々な私は、先生のシャツを脱がしにかかった。先生は死んだように眠ってて私が腕を上げたり曲げたりしてるのに全く起きる気配が無い。
うん。起きない先生が悪い。
腕を触ると硬い筋肉がついていた。私は自分のぷよぷよの二の腕を触りながら、男の人って腕が硬いんだなと思った。
あ、先生ったらズボン脱がないまま寝ちゃってる。服着たまま寝ちゃうなんて、案外子供だなあ。
私は先生への親切心からズボンを下ろし始める。ちゃんと着替えさせないと。下ろしている最中になんか引っ掛かって下りなくなった。
「もー。何が引っ掛かってるの?」
一生懸命引っ掛かりを触ってたら、先生がなんか動き始めた。
「ん?何······ニーナ······?·········?」
「あ、おはようございますアロイス先生」
「········何してるんですか?」
「先生のズボンがなんか引っ掛かって脱がせられないんです」
「········なんで脱がせてるんですか」
「先生ったら服着たまま寝ちゃってるからお着替えさせようと思って」
「······どこ触ってるんですか」
「え?だから、なんか引っ掛かって········」
「わああああああ!!!!」
先生は私の手を払い、ベッドの端っこまで後退り勢い余って落ちた。
「先生?」
首を傾げて先生の不可思議な態度を見ていたら「シャワーを!浴びてきますから!!」と瞬く間に部屋から消えた。
・・・・・・・・・・
「アロイス先生、冬にどうして冷水浴びたんですか?」
先生は風呂あがりにも関わらずくしゃみをした。私は先生に温かい紅茶を入れてあげた。
「朝から水遊びですか?意外と子供なんですから先生ってば」
「ニーナは酷い」
私は拗ねるアロイス先生の髪をタオルで丁寧に拭いてあげた。タオルを外した瞬間に先生は風魔法で一瞬で髪を乾かすと、私の腕を掴んだ。
「悪い子ですね、ニーナは」
ソファに座っていた先生に引かれてそのまま、先生の上に向かい合いながら座る。
「服を脱がせてどうしたかったのですか?」
「あ、ズボンはお着替えのために脱がせようと思ったんですけど、上はあんまり先生がセクシーだったから」
「だったから?」
「わ、私の体と違うな、と、思って」
「思って?」
アロイス先生の紫の宝石みたいな瞳が揺らめいた。
「シャツがはだけてたから、その、私と違って硬いんだなって」
何だかだんだん恥ずかしくなってきた。自分でやったくせに。先生は私の目から全く視線を外さない。
照れて私のほうが先に視線を外した。
「触ってみました?」
「ちょっと」
ぐっと掴んだ手を、胸元まで上げられる。反対の手でシャツのボタンを開けた。
「どうぞ?」
アロイス先生が軽く首を傾げた。




