5.先生への挑戦
闇魔法の勉強を始めて2ヶ月が経過した。
最初の頃、毎回「早く辞めてください」と言われていた私だったが、しぶとく毎回課題をこなし続けるうちに、先生は辞めろとは言わなくなった。
しかし、いつも私をバカ、カス、ゴミ、間抜け等々の人間以下の名前で呼んでいたので、最近は先生は私の名を知らないのではないかと疑った。
「はい、じゃ今から闇魔法を具現化し、実際にコントロールしてみてください、そこの田舎者」
「ニーナです、先生。私、ニーナ・フランテールって言うんです。田舎出身ではありますが、『田舎者』という名前ではありません」
私が珍しく反論すると、先生は少し驚いた表情をしながら腰に手を当てた。
「フン、私に反抗するなんて100年早いですよ。名前で呼んで欲しくば、きちんと結果を示しなさい」
眼鏡の奥から私を見下した様子で見ながら、彼は笑った。
これにはちょっとカチンときた。
だって、個人の名前で相手を呼ぶというのは、社会生活の中で当たり前のことであり、一般常識だ。
人を下等な者扱いして、酷いあだ名で呼ぶなんて本来やっていいことじゃない。しかも教鞭をとり子供の模範となるべき大人が、人を差別するなんて社会人として間違っている。
「何をしたら、ちゃんと名前で呼んでくださいますか」
私は挑むように先生を見つめ、手にはぐっと力が入れた。
「次の授業の時、テストをします。範囲は二年生になってから学んだ実技全てと、1年で学んだ講義の口頭陳述です。私の質問にきちんと答えられ、実技もちゃんと出来たら、貴女の名前を呼んで差し上げますよ」
ニッコリと麗しの笑みでこちらを見る先生に私は猛烈に腹が立った。
こうなったらやってやる。目にものを見せてくるわ、この鬼教師!!