48.魔法薬学特別授業 1
翌日、週明けの最初の闇魔法の授業の時間、いつもは私が先に教室にいる筈なのに、ドアを開けたら先生が教壇に立っていた。見たことある人物と一緒に。
「······ユーリ?」
「ニーナ!!」
ユーリは入り口にいる私に飛びつこうとして、ガッと襟首をアロイス先生に掴まれた。
「勝手に飛びつかないでください」
「別にいいだろ?僕はニーナの特別講師なんだから」
「授業は闇魔法の時間です。よって権限は私にあります」
「なんの話をしてるんですか?」
どうして学校の闇魔法の授業に、ユーリがアロイス先生と並んでいるのか全くわからない。ユーリは最後に見た、輝く銀髪と鍛えた体躯の長身の姿だった。
私と目が合うなりアロイス先生の眉尻が申し訳なさそうに下がった。
「すみません、ニーナ。魔法薬学の教師に朝、材料を一部譲ってもらえるよう頼んだら夕方こいつと一緒に材料が届いたんです」
「ニーナ!ホントに会いたかったよ!元気だった?僕ね、ずっと君のこと考えてたんだよ?」
「まって、まって!なんだかよくわからない!!」
一度落ち着くため、三人で私の机を囲んで椅子に座って話す。机の上に手を置いたら、がしっとユーリに手を掴まれ、それを離そうとアロイス先生の手が動いた。
埒が明かないので、とりあえず右手はアロイス先生に、左手はユーリに掴まれたまま話をする。
「えーと、ユーリは何故ここにいるの?」
「魔法薬学の教師から研究所に余ってる素材を分けてくれって連絡があったんだよ。何に使うのって聞いたらアロイス・クラウスヴェイクから生徒の練習用に頼まれたって言うからさ、絶対ニーナが使うんだと思って僕が直々に持ってきたんだ」
「ユーリは研究所の人だったの?魔法薬に携わってるの?」
理解も状況も追いついていない私にアロイス先生が口を挟んだ。
「ニーナ、こいつはこんなだけど魔法薬学の権威なんだ。王立魔法団研究所薬学研究室の室長をしている」
「えっ······?!なんかすごい肩書······さすがに学生っていうのは嘘だと思ったけど、植物園のアルバイトさんとかだと思ってたのに」
「植物園には毎日出入りしてるから」
ニコッと笑ってユーリは手を握った。
「で、その偉い室長さんが、なんで学校にわざわざ来るの?」
「君に会いたかったからだよ、ニーナ。コーネインのバカを使って学校の状況は逐一報告してもらってたけどなかなか接点が掴めなかったんだ。今回、正式に魔法薬学の教師からの要請を受けたから、『魔法薬学の知識が必要ならその生徒に特別講師を致します』って言って僕がきた。なんでも聞いてね?」
話を聞いていたアロイス先生が舌打ちをした。
「コーネイン······あのゴミ虫、よりによってこんな奴に情報流すなんて······」
「お前のせいだよアロイス・クラウスヴェイク。あいつの顔面に変な呪いかけただろ。病院に行ったのに治らないって、僕のとこに泣きながら来たぞ。薬をくれって」
「ああ、バカが考えそうなことだ」
「薬じゃなくて、解呪しろバカって言ったらまた泣き出してさ。学内の情報と引き換えに解呪してやった。あんなことも出来ないのに、なんであいつ魔法団にいるんだ?」
「採用面接官の女性を口説いていたのではないのですか?あいつは、承諾もなしにニーナの魔力を盗んだクズですから」
「ニーナそんなことされたの?僕だってまだ貰ってないのに!!」
「あなたもニーナを蔦でぐるぐる巻きにしてましたけどね」
なんだか良くわからないのはそのままだけど、ユーリは私に魔法薬学を教えてくれるらしい。
「とりあえず、こいつがいる以上家では調合できませんからここで勉強しますよニーナ」
「はい!アロイス先生」
「ニーナ、僕も『ユーリ先生』って言ってみて?」
「はい!ユーリ先生」
「······これはこれでぐっと来るなぁ」
こうして3人での魔法薬学の特訓が始まった。




