46.青い屋根の家
陽が少し昇り始めた。私達は先生の魔法で山を降り、麓の街に行った。
「何だか可愛らしい街ですね」
お伽噺に出てくるようなファンシーな建物が軒を連ねている。
「ステファニーさんのお店みたい」
「そうですね。ここは私達クラウスヴェイク家の一族が住んでいた街です」
「えっ?!」
まさかの先生の故郷だったなんて。
先生と私は道を歩きながら話し続けた。
「一族と言っても、最後は私の家とステファニーさんのお家の二世帯だけになっちゃいましたけど」
「先生の氏は母方の?」
「そうですね。父もステファニーさんの旦那さんも入婿ですよ」
「ステファニーさん、旦那さんいたんですね。今は別々に暮らしているんですか」
「だいぶ前に亡くなりました」
店が建ち並ぶエリアを抜け、少し小高い丘の方へ向かう。
丘の上には二階建ての白い木造で、屋根が青いお家が建っていた。
「私のかつての家です」
家の脇に、崩れかけた木のブランコがあった。家は青いドアを木の板で封鎖しており、ペンキは剥がれ、所々木材が落ちていた。
「幸せでした。母もかつて魔法使いでしたが、魔法士の父と相性が良くて、仲睦まじかったと思います」
流れるような黒髪が風で揺れた。先生は表情を変えず淡々と話す。
「二人が亡くなったのは事故でした。山の一部が崩落し遊んでいた子供か巻き込まれ、二人で助けにいったんです。そのまま、二人も巻き込まれました」
繋いだ手の力がほんの少し強くなった。
「誰が悪いわけでもない。あの二人は自分達のやるべきことをやって亡くなっただけ」
「アロイス先生······」
先生のシャツをきゅっと掴むと同じ強さで握り返してくれた。
「すみません。たまに感傷的になるだけです。大丈夫ですよ」
ニコッと微笑んだ先生は、いつもの先生だった。
「いつか、貴方と家族になれたら······」
「私も先生とこんな家に住みたい」
先生が少し目を開いて私を見た。
「春にはネモフィラを丘一面に咲かせるの。私は他にも色んなお花を植えたいな。きっと素敵よ。ステファニーさんも一緒に暮らせたら、お料理も得意になりそうだな」
「ニーナは私の心が読めるんですか?」
「今のは私の願望です」
「ふふ·······それは以心伝心ですかね」
「子供がいたら楽しい!先生に似た紫の目の子。いっぱいいたら嬉しいな」
「こ······子供って······ニーナは、その、子供の作り方······わかって聞いてますか?」
「知ってるわよ!満月の夜に、好きな人と手を繋いでキスをして『子供をください』って願うのよ!そうすると、赤ちゃんはお母さんのお腹に宿るのよ?」
「ニーナ······それは誰に聞いたのですか」
「お母さんが教えてくれたの。ふふん、私だって色々知ってるんだから」
「あぁ·······それは······どう、教えていきましょうか、先は長いですね」
私達は手を繋いだまま、顔を寄せあって笑った。いつか咲くネモフィラと家族の笑顔を夢見ながら。




