11.新たなごはんへの誘い
今日の闇魔法の授業は召喚術だった。小さなウサギに似た闇の生物を召喚し、対価を与え仕事をしてもらい、元の世界に還ってもらう。私が召喚した魔物は、本当に下等生物なので召喚したところであんまり役に立たないのだが、私にとっては大変な実技であった。
「貧血起きていませんか」
先生が上から少し心配そうに見てきた。
「大丈夫です」
私が与えた対価は水に薄めた血一滴だけ。このくらいの下等生物であればワインでも代用可能だ。血の取り方も一緒に学ぶ必要があるため、今回は血を使った。
「大きな魔物であれば、家畜の血を大量に用意したりもします。知的な魔物となると更に準備は大変です」
「なるほど」
「いいですか。召喚術は基本的に自分を対価に使う交渉です。絶対に私のいないところでは使用しないこと」
「わかりました」
「貴女には、卒業後も勝手に使用させたくないので私以外の前での召喚術を未来永劫禁じます」
「そ······そんなにですか」
「授業でなければこんなもの教えたくもありません」
「そうなんですか」
召喚が無事に終わると、何だか少し不貞腐れている先生と召喚に使った道具を片付け始めた。
血も使ったので窓も開けて換気し、血の病気にならないように丁寧に消毒をしていたが、ベストを着てシャツを腕まくりして血の処理をするクラウスヴェイク先生は何だかやたらセクシーであった。
「さあ、ごはんの時間です。行きますよ」
先生は何だか妙に乗り気で外に出た。やはり今日も寮とは反対方向に行く。
「えっと、ステファニーさんのお店ですか?」
「今日は私の家で私の作ったものを食べて頂きます」
「せ······先生のおうち?!」
私なんかが先生のお宅の敷居を跨いで良いのだろうか。
「仕込みは済ませてますから大丈夫です」
なんと、事前準備までしてもらっていたようだ。
「私が行っても大丈夫でしょうか。先生の家でトラップとかに引っ掛かったら助けてくださいますか」
「私の家はダンジョンではないので、トラップはありませんよ」
足取り軽やかな先生のシャツの腕のところを掴むと先生は微笑み、2人で先生の家に向かった。




