10.昼休み
いつもの授業の合間の昼休み、その日も私は一人で購買から買ったパンを片手に勉強していた。
周りのクラスメイト達は友達同士で昼ご飯を食べたり、学食にいったりと学生らしい昼食をとる中、私は常に一人でテキストとノートのにらめっこ昼食を日々繰り返していた。
「何あれ、1人で可哀想」
クスクスと笑う女子生徒を尻目に私は勉強を続けた。友達と最後にごはんを食べたのは、田舎の中等学校が最後だ。懐かしい気持ちはあるが、今はそれより勉強に打ち込みたい。卒業まであと2年弱。私に残された時間は少ないのだ。
一息ついて、残りのパンを口に押し込むと他の生徒の話が聞こえた。
「光魔法のコーネイン先生デートに誘ってみようかな」
「コーネイン先生って頼まれれば、誰でもデート行ってくれるらしいよ」
「先生って特定の彼女いないって言ってた」
おおぅ。すごいことを聞いてしまった。
コーネイン先生、随分と遊び人なんだな。
「まぁ、魔法使いの結婚て難しいからね。適当に遊んでるのかも」
「何で難しいの?」
「保持してる魔力が高いと、属性とか性質の合わない相手とは反発しちゃうらしいよ」
「へー、じゃ恋人同士になっても魔力の相性悪ければ絶対別れちゃうの?」
「そうらしいよ。そもそも、相性の悪い相手と触れたりすると、肌がピリピリしたりやたら嫌悪感を感じるって親戚の魔法使いが言ってたから」
「そういえば、コーネイン先生いつも真っ白な手袋してるよね」
「闇魔法のクラウスヴェイク先生もだよ。あっちは真っ黒な手袋に、伊達眼鏡までしてるんだからよっぽど周囲の魔力と合わないのね」
伊達眼鏡?クラウスヴェイク先生って伊達眼鏡だったの?あんなに眼鏡の似合う人いないと思ってたのに。私は先生の縁なしの細い眼鏡を思い出した。
でも、ステファニーさんのお店に行った時は眼鏡も手袋もはずしてた。きっと彼女は先生が心を許せる数少ない人にちがいない。もしかしたら、年はかなり離れているが、ステファニーさんに恋をしている可能性だってある。恋に年の差なんて関係ないと言うし。したこと無いけど。
私は一人でクラウスヴェイク先生の恋路が実るように祈った。
「光魔法の授業終わるの5時半だから、とりあえずディナーに誘ってみるよ」
女子生徒の一言で、私の動きが止まる。
5時半······?光魔法って5時半には終わっているの?
私は闇魔法の授業を毎回7時までやっていた。光魔法と闇魔法は特殊だから、時間配分も特殊なんだと勝手に思ってたけど、違うの?ということは、特殊なのはクラウスヴェイク先生の時間配分だけってことか。
私は、学年で一番授業時間を設けていたことに驚き、思わずお喋りをしていた女子学生の方を見ると彼女達と目が合い、クスクスと笑われた。
「まさか自分がコーネイン先生と相性が合うとか勘違いしてないわよね?青空バカ」
青空、というのはきっと私の空色の髪色にかけたのだな。きっと雲一つ無い、悩みの無いバカと言いたいのだろう。
「別に。私光魔法の授業すらとってませんから」
私はパン袋と飲み物を片付けるため、さっさとその場を後にした。