表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 丑二


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/183

心のない人間

さらに現在

地震が続いている廃城屋上



十秒かからずバリアを破った四体の巨大な人型の火柱は両手を頭上に掲げたユウジへと覆いかぶさるように襲い掛かっていく。

「吸収!!炎!!うおおおおおおおおおおお!!」

そう叫んだユウジの全身を瞬く間に呑み込むと、廃城全体を覆いつくすように、火柱は燃え盛る炎へと変容してあらゆる割れた窓や、あらゆる石壁の隙間から内部へと猛烈な勢いで入り込んでいく。


二階の廊下の窓を割って流れ込んできた炎が、両手に水が詰まっている二丁の透明な銃を持って待機していたワタナベにも瞬く間に迫り襲い掛かろうとするが、彼は冷静な顔で

炎に向けて、透明な銃から猛烈な勢いで水流を噴き出させた。

勢いを減らした炎は逃げ散るように、ワタナベとは逆方向へと伝っていく。

彼は静かに背後の金属の扉が開いていた室内へと下がりパタリとその扉を閉めた。


城内の廊下を伝い、一階へと炎は壁や床を焼きながら駆け巡っていく。

そして、一階のホールの床を焼き焦がしながら滲み込むように次々に下へと染み込んで入って行った。


地下室でジンカンは次第に紫色の発光が力を失いつつある魔法陣の上で両眼を閉じて跪いていた。

「……五、四……」

カウントダウンしてきたジンカンの頭上の天井が真っ黒に焦げてきて炎がまるで水滴のように彼の周囲に垂れてくる。

「……二、一……」

ジンカンは両眼を開けて

「ゼロ……!!勝った!!」

と顔を歪めて、いきなり立ち上がった。

同時に床一面を覆って落ちてきていた炎は一斉にスッと消えた。



同時刻

北方の盆地

ヤマモトたち逃亡者パーティーの拠点



「ううう、来るんでしょ?もう?」

湯気が出ている真っ黒で平らな岩場に心細げなハーツが、ショートパンツにシャツの薄着で一人立っていて、ヤマモトたちは数メートル離れて立っている。

さらに距離を取って、巨体のイエレンも岩場の上に寝そべりその様子を見守っているようだ。

グランディーヌがコートの中から十本ほどの

紫の吸盤のついた太い触手をうねらして出しながら

「ヤマモトさん、抜いて。タナベさん、五メートル下がって」

ヤマモトはシルバーソングを鞘から抜いて両手持ちする。

タナベは右手に持った金属の塊をチラチラ見ながら後ろ歩きで下がった。


次の瞬間には、ハーツの周りに漆黒の霧が包み込みそして、その霧の中から大量の骨だけの腕が出てきてハーツをどこかへと連れ去ろうとする。グランディーヌは

「いま!!やって!!ヤマモトさん!」

そう叫ぶのと同時に、十何本もの触手を一気にハーツに伸ばし彼女の身体を包み込み、こちらへと引き寄せ始めた。

霧の中から伸びる無数の骨がそうはさせまいとハーツの身体をそこら中から引っ張り始める。

「いっいたたたた!!」

異形の引っ張り合いにハーツが悲鳴を上げ

ヤマモトがその様子を見ながら

「歌え!!シルバーソング!!邪なるものを祓え!!」

シルバーソングを縦に体に引き付けて構え、低い声で叫んだ。

一瞬にして、辺りに真っ白な光が広がって

「ゴブッ……ゲボァ……」

グランディーヌの触手と背後の骨の手の両方から囚われているハーツが鼻水と吐しゃ物を吐き出しだす。

「消えろ!!邪なるものたちよ!」

ヤマモトが今度は強く願ったようにハーツに向け叫ぶと、ハーツの口から微かに血が垂れ始めて白眼を剥き始めた。

そして、ハーツを包む黒い霧と骨の腕は真っ黒な砂となり、辺りに飛び散り、消滅していく。

その場に倒れた薄着のハーツを即座にタナベが駆け寄って抱え上げると、近くの岩場に張られたテントへと素早く連れて行った。

ヤマモトはシルバーソングを背中の鞘へとカチャリと音をさせ収め、その場で倒れそうになり、何とか右足を出し跪いた。

「クソッ……やっぱりキツイな」

グランディーヌはシュルシュルと触手を自らのコートへと収めながら

「……ありがとう。あなたのお陰で私のお友達と離れなくて済んだ」

コートの中からタオルを差し出した。

ヤマモトはその場に胡坐をかいて座り込むと

疲労困憊した表情で、タオルを受け取り、黙って汗だくの額を拭きだした。

グランディーヌもその場に座り込み

「ハーツちゃんが弱すぎるから連れ去る力も弱くて運良く成功した。シルバーソングの破魔の力も弱すぎるハーツちゃんには、殆ど作用しないから」

ヤマモトは大きく息を吐き

「今、ハーツ以外の悪魔は、世界中に存在していないのか?その協定違反とかで?」

「そうだと思う。帝国に居る王様の使い魔も一時的に操っている人間の影武者に後を任せ、逆さの楽土に戻っているはず」

「……竜騎国のアキノリたち無事かな……」

グランディーヌは冷静な顔で

「良くて、ジンカン以外の三人中二人ってとこだと思う。もちろん、ジンカンは死なない。狡猾だから。仲間を犠牲にしてでもあらゆる手を使って生き残ってるはず」

「……お前も、そんなこと言うのかぁ?アキノリ、ほんといい奴だぞ?」

グランディーヌはニコリと笑って

「心のない人間は親愛の情じゃなくて自らの利益で付き合い方を変えるの。ヤマモトさんは強い人間だから争うより、味方にしようと判断するはず」

「……そうかな。ヒサミチもアキノリに似たようなこと言ってたけど……」

グランディーヌはまた微笑みながら口を閉じた。



同時刻

廃城内地下室



「やっ、やっぱり俺の能力は完璧だ。全てのものを"理解"し読み解く力。これ以上のものはない。ユタカさんですら、俺の力の前にいつかひれ伏すだろう……」

興奮した表情のジンカンが突如「ふーっ」とため息を吐くと、冷静な顔となり

「……追撃で魔法による地震で地盤を崩したことによる、この廃城を巻き込んでの山崩れだろう?見え透いてるんだよ」

そう呟き、揺れが激しくなった地下室から駆け出ていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ