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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 中二


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安息の地

竜騎国首都、城内大会議室



ジンカンとワタナベ、そしてスズナカとユウジが円卓にバラバラに座lり、真剣な表情をしていた。

ジンカンは円卓に広げられている世界地図を指さし

「みんな、今の状況は分かっただろ?俺の"理解"の能力によると、二重の大規模波状攻撃が近々起こるはずだ」

ワタナベが怯えた顔でジンカンを見つめる。

彼は他者を落ち着けるように朗らかに笑うと

「ナベちゃん、まだ話は終わってないし、最後まで聞いたら落ち着くと思うよ?」

ワタナベは恐る恐る頷いた。

ジンカンは世界地図の竜騎国のある辺りを指さして

「最初の攻撃は、地上にいる悪魔による総攻撃だ。そして、それは当然休戦協定違反なので悪魔や鬼たち、つまり逆さの楽土から来た生き物たちは、俺たちがその一瞬の破壊的な攻撃をしのぎ切れば逆さの楽土に一斉に帰るから、しっかり対策さえしておけば、問題ない」

ワタナベが不安そうな顔で

「第二波は何なの?」

ジンカンは静かに微笑んでから

「この地上に住む生き物たちからの攻撃だね。現地人たち、主に人間が俺たちを目指し苛烈に攻撃を仕掛けてくる」

「うわぁ……嫌だなぁ」

ワタナベがうな垂れるとジンカンが

「この周辺国で百万単位の大軍団を指揮できる唯一の人間だったオースタニア王国の名将スベンは数日前に死んだ。スベン家の跡継ぎは戦士だし、司令官代理の女も実績も無くて大したことない。武将たちも血の気の多い老人と貴族の跡継ぎばかりだ。そっちは、何百万人で来ようが、屈服させるのは楽勝だろうね」

ワタナベは用心深い顔で

「……第三波はないんだよね?」

ジンカンはニカッと笑って

「あるとしたら、各地のドラゴン軍団の侵攻だろうけど、今のところ、竜騎国で飼われていたドラゴンの生き残り以外、俺たちに興味を示していない。こちらも、野生のドラゴンたちは刺激しないようにはしているし」

「竜騎国の三匹のは、僕がロケットランチャー連発して、残らず撃ち落したよ」

「うん。でも一匹だけ生きていて、北に逃げ延びてるんだ。ただ、もう一回来ようが、ナベちゃんの敵じゃないだろ?」

ワタナベは真面目な顔で頷いた。そしてスズナカを見る。

「こっち見んな、ナベワン」

腕を組んだスズナカは目を合わせずにそう言った。ユウジが大きく息を吐くと、ニヤニヤしながら

「……悪魔や人間どもは、当然、的を絞るよな?俺たち八人の中で誰を狙うんだ?」

ジンカンはニコニコしながら

「ユタカさんは強すぎる。ユウジ君とナベちゃんは実行部隊だから簡単には殺せない。俺は"理解"で事前察知できるし、そもそも名前が売れてない。リュウとタナベ君は二人一緒に居る限り、相当な強敵だ。狙わないだろう。委員長は俺とユタカさんが遠く離れた僻地で保護してる。多くの恨みを派手に買っていて、相手からしたら最も厄介な能力を持っているのは……」

ジンカンは黙ってスズナカを見る。スズナカは顔を歪めて彼を見返し

「……標的になれと」

「ああ、ごめんね。言わせたみたいで。でも、スズナカさんが理解してくれてれば、こっちも作戦を立てやすい」

悪気ない顔のジンカンにスズナカは嫌そうに

「まあ、いいけど。で、あんたの冷酷な作戦内容を言ってみたら?」

ジンカンは微笑みながら頷いた。



ところ変わって、北方の山奥

湯気が隙間から出ている岩場が広がっている雪深い山々に囲まれた盆地



「ああああしゅごいー!!しゅごすぎるううううう!」

近くの雪が積もった大岩に隠れて作業の様子を見つめているハーツが驚嘆の声をあげる。

体長五十メートルのイエロードラゴンの硬く大きな嘴と銀の大剣シルバーソングを両手持ちしてスコップのように地面に刺しているヤマモトが、お互い作業の邪魔にならない安全な距離を取りつつ、瞬く間に足元の雪や岩盤を削り掘っていき、二つの大穴を作り出したかと思うと、さらに掘り進め、地中へと消えていく。

ハーツの隣のグランディーヌがさらにその隣で手元の金属の塊を熱心に見ているタナベに

「……位置は間違いない?」

「うん。あとは二人が源泉にたどり着くだけだね」

タナベがそう言った瞬間にヤマモトが大穴の中から跳躍して出てきた。

「出た!あとはイエレンが穴をくっつけて拡げるだけだ」

巨大なイエロードラゴンは自分の掘った巨大な穴から大きな顔だけ出して、不満そうな表情をヤマモトに向けてくる。

「なっ、何だよ!!競争じゃねぇって言っただろ!みんなでお前のために掘ってるんだぞ!」

ドラゴンは目を細めながら

「貴様らの拠点のためでもあるのだろう?」

と言ってきた。グランディーヌが頷いて

「当たってる。逃亡者である私たちには安息の地が必要。ここなら、無人地帯だし、温泉も出るしで安全」

ヤマモトが驚いた顔で

「そうだったのか!?」

タナベを見つめる。彼は苦笑して

「聞かされてはいないけど、そうかなとは思ってた。スマホで調べたら、北国の国境線からかなり東だし、イエレンさんの苦手なホワイトヴァレーからも遠い。完全な無人地帯だね」

グランディーヌは頷いて

「ここなら、役人から訪ねられたり、税金も取られないし竜騎国やオースタニアからも遠い。雪進船もあるしイエレンも居るから移動は問題ない。イエレンのための温泉掘ったら高台に私たちのための堅固な家を建てて、食料を買い集めに行くだけ」

「グランディーヌちゃん……」

ハーツが感動した顔をする。

「仲間のためを思って計画を立てるのは当然。ハーツちゃんもそうでしょ?」

「う、うん……たまにはね」

「いつも考えとけよ……」

ヤマモトか脱力した後、思いついた顔で

「俺も穴繋げるの手伝うよ!お前身体でかいから、半端な大きさじゃ足りないだろ?」

イエレンの居る大穴へと駆けていった。

タナベが小声で

「ねぇ……僕たちはここで本当に安全なの?」

グランディーヌは難しい顔をしながら

「……ずっとここに居たら危ないかもしれないけど、少なくともしばらくは安全だと思う」

「家を建てないとね」

「それは心配しないで、あなたのその情報装置と私の頭ですぐに設計できる。素材はそこら中の山にあるし、力仕事と材木の整備は、あっちで穴を掘っているヤマモトさんとイエレンに任せればいい」

「助かるよ」

「気にしないでいい。私も虚無王様とあなたの仲間たちがこれから起こすであろう大きな争いには巻き込まれたくない」

二人とハーツは深く頷き合った。

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