表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 中二


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/166

理解させるには

ほぼ同時刻

北方の国の北東部の雪原



「ああああ……高い……高すぎる」

ハーツが、広大な雪原を進んでいく雪進船の上でへこたれてグランディーヌに情けない顔で抱き着いた。

四人が見上げた先には視界左右に雪を深く被った真っ白な大山脈が広がっていた。

「間違いない、依頼書の目的地はあれだね。山頂まで五時間ってとこかな」

タナベが金属の塊を指でいじりながら言い、ヤマモトが笑いながら

「俺がお前を背負って、グランディーヌがハーツを背負えば、一時間半だろ」

「ええええええええ……私、待ってますよぉ」

グランディーヌは首を横に振り

「ハーツちゃんも来た方が良い。たぶんこの辺り、熊とか住んでる。大きな野生動物だよ。熊が怒ったらハーツちゃんじゃ勝てない」

「なんと!くうぅぅう……」

ハーツは真っ青になって、うな垂れた。


三十分後


四人は山脈麓の斜面の雪道を進んでいた。

シルバーソングを背負ったヤマモトにタナベは肩車されていた。

分厚いコートのフードを目深にかぶったハーツは、グランディーヌのコートの裾から

ウネウネと伸びる数本の紫の触手でその頭上に持ち上げられている。

グランディーヌの膨らんだコートの下からは

さらに太く長い五本の触手が伸びていて

深い雪道を、難なくかきわけて登っていく。

タナベがその様子を見下ろしながら

「人間の部分を半分にすることもできるんだね」

グランディーヌはそっけなく頷いて

「あらゆる状況に対応しないとダメって王様には言われてた。だから、半人間状態とかも自在にできるようにしてる」

「そっか。すごいなぁ……」

ヤマモトがふと思い出したようにザクザクと雪道を登りながら

「……なんで、逃げてきたんだ?」

尋ねるとグランディーヌは少し黙った後に

「……人間の生活に憧れてた。王様が書物を沢山くれて人間の生活を教えてくれた」

その頭上で触手に持ち上げられているハーツが

「……虚無界は、悪魔と鬼と亡者しか居ないからねぇ……あとケルベロスとか怖い生き物……」

残念そうにため息を吐く。


さらに三十分ほど四人は、次第に険しくなっていく中腹の山道を登り続ける。

そして洞穴を見つけ、その中へと入り休憩をとることにした。

グランディーヌがコートの中からバスケットケースを出し全員にサンドイッチを手渡す。感心した顔のハーツが

「温かい……便利だねぇ、すごいなぁ」

「うん。触手でケースを包んで保温くらいは簡単にできる」

ヤマモトは真面目な顔でそれを食べながら

「復習しとこうか、ヒサミチが調べたイエロードラゴンの情報を」

タナベは金属の塊を凝視しながら

「えっと……イエレンっていう竜騎国のファルナ王女直属の大型ドラゴンで体長は五十メートル。ワタナベ君のロケットランチャーによる砲撃で首都周辺の渓谷に落下したのちに蘇生。夜間に竜騎国を脱出。今は、この山の山頂付近の巨大な温泉で身体を休めている……」

「ううぅう……ドラゴンって地上で一番強い生き物なんですよね……」

グランディーヌが首を横に振って

「もう違うよ。たぶん、今地上で一番強いのはオクカワ・ユタカ。そしてドラゴンを砲撃で落とした者も、ドラゴンより強いことになる……ヤマモトさんも本気出せば、ドラゴンと同じくらい強いと思う」

ヤマモトは苦笑いしながら

「そういうのはいいって。それよりも、戦わないでいい作戦はあるんだろ?最低限、この国から、退いてくれたら報奨金ゲットできるし、そろそろ教えてくれよ」

グランディーヌは真顔で

「話し合って出ていって貰うように頼む。後ちゃんと、あなたたちはワタナベたちの仲間だって言う。嘘ついちゃダメ。隠し事しちゃダメだよ」

「……それがダメなら?」

「力で脅す。私とヤマモトさんが本気で戦えば何とか勝てると思う。すぐに逃げてくれたら上出来」

「分かった。まずはドラゴンに誰かが交渉しないといけないけど、それは僕がやればいいかな?」

タナベが真剣な顔で尋ねると、グランディーヌは静かにサンドイッチを幸せそうに頬張っているハーツを見た。

「……?えっ、私がえっ?」

状況が呑み込めていないハーツはしばらく噎せた後

「……ドラゴンと私が?」

「うん。立場的に中立だし、悪魔であるあなたと魔法生物である私を受け入れてくれたタナベさんたちのことを理解させるには、あなたが説明するのが一番」

「……」

ハーツは真っ青な顔で皆を見回した。

残りの三人は真剣な表情でハーツを見つめ返す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ