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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 丑二


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生産と接続

逆さの塔、最下層の世界



俺とブラウニーは海の上を再び走り最初の島へと戻っていた。

そして、砂浜で大陸の方角を見つめる。

近くに俺が背負ってきた金属人形は降ろして寝かせている。

この人形が帝国皇太子とかいう酷い冗談を聞いた後、俺は何となく喋るのが億劫になり、ブラウニーと口を聞いていない。

彼は継ぎはぎの顔を微笑ませながら

「……サンガルシアを待っている」

こちらを見ずに行った。

「ああ、だろうな」

「そして、少し、私は考えているのだ。どれを先に解決すれば良いかと」

「……他にやることがあるのか?」

「ああ、たった数時間であのドハーティー卿からの刺客の少女が逆さの塔を降り、この世界にたどり着いた。そろそろ、我々を見つけるころだ」

「……入ってこられたのか。もしかして、あの子は普通に降りてきたのか?」

ブラウニーは静かに頷いた。その余裕のある態度で理解した。

「……相当に消耗しているんじゃないのか?」

「ああ、五体満足なのが不思議なくらいだ。君も、分かっていると思うがサンガルシアが居なければ、我々もあの堕天使たちと、死力を尽くして戦いつつ、下のフロアへの道を探さねばならなかったのだよ」

「……ショートカットもしたからな」

「そう言うことだ。彼女はすでに魔力が尽きている。どうしようか?弄ぼうか?」

実に楽し気なブラウニーに

「……いや、それなりに戦ってやってくれ。侵入者である俺たちを、健気にも追ってきてるんだ。優しくしてやれ」

ブラウニーはいきなり笑い出し

「友よ。その気宇が素晴らしいな。どうしても新たな憎しみの火種は造らぬか」

「……クソガキたち以外と、命を取り合う気はない。帝国に来てみて分かったが、どこの国の国民もただの愚かで健気な、人間だ」

ブラウニーは笑いを収めて頷いた。少し気が晴れたので

「なあ、あの金属人形は、本当は何なんだ?」

尋ねると、ブラウニーは

「……私は、君に嘘は吐かない。皇太子だよ。マグリア帝国の皇位継承者だ」

「……ただの人形だぞ?」

俺は横に寝かせている人形を見つめる。

「どう説明したらいいのか……君に分かりやすく、かみ砕いて言うと……」

ブラウニーは両眼を瞑って涼し気に考えてから、ふと思いついた顔で

「帝国は人が支配していない」

と微笑みながら俺を見てくる。

「……どういうことだ?」

そんな話、一度も聞いたことが無い。

「君は、帝国の皇帝が人前に姿を現したという話を一度でも聞いたことがあるか?」

「いや、無いな。ただ、俺は世間知らずの鍛冶師だったからな」

国が一度、滅ぼされるまで良い武器を造ることだけを考え生きてきた。

「……視察をしたことも歴史上一度もないのだよ。帝都の深奥に潜んで、帝国を生涯見守るのがマグリア帝国皇帝の務めだ」

黙って聞いていると

「……帝国の皇帝は"生産"される。皇太子も同じく次世代に向け"生産"されるのだよ。彼らは……中央のシステム……いや、巨大機械に金属のチューブで接続されないと動けない。今は、動力源が無いので思考も、行動も一切できないのだ」

「……」

理解が追いつかないので黙っていると

「帝都を支配しようとしたジンカンたちは帝国の高級閣僚たちを操り、そして、皇帝を"電源"から抜いてバラバラに解体した。さらに、この皇太子をここまで連れてきたのだ」

「……そうなのか」

聞くしかない。

「……スズナカの操心術は、機械には通じない。なので、ジンカンと、オクカワ・ユタカはもしもの時のためにここに、皇太子を封印することにした。彼らは、あっさりとここまでたどり着き、そしてあの山小屋に皇太子を寝かせたのだ」

「あの、少女は何なんだ?大天使とか言っていたが」

「それは、別の勢力の後付けの思惑だ。ジンカンたちの策略ではないので気にしないで良い。サンガルシアが善処している最中だね」

「……そうか、殺気が後方から迫ってるな」

島外の相当遠くのようだが、確かに鋭い殺気を感じる。

「君も感じるか。彼女から見つけられたようだ。どうだ?相手してみないか?」

「……そうしよう」

俺は静かに頷く。

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