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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 中二


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北方の国の大都市

ところ変わって、ほぼ同時刻。


北方の国の大都市。

毛皮のフード付きコートを着たヤマモトとタナベ、そしてハーツが肉の並んだ商店で買い物をしている。

「やっぱりお肉多めですよね!旅は珍味と共に!」

嬉しそうなハーツにヤマモトが顔を顰め

「……おい、予算ってもんがあんだよ。大体、ユタカさんたちまだ見つからないし、もう残金が少ない」

タナベが軽くため息を吐いて

「……ヌーグルで居場所を検索しても"この検索結果は、権利者の申し立てにより削除されました"ってばかりでるんだよ……」

「そうなんですー?」

尋ねようとするハーツを遮りながら、ヤマモトが

「ユタカさんなら、何ができても不思議じゃねぇわ」

納得した顔で頷いて、そして財布の中を見て

「あ、ダメだ……この調子だと、明後日の食事で金なくなる」

タナベも慌てて、自分の手持ちの財布を開け

「ハーツさんに任せてたら、やたら、いい宿にしちゃったもんな……」

ヤマモトとタナベに恨みがましくジッと見つめられたハーツは焦った顔で

「い、いいいいやいやいや、わ、私は未来の恋人タナベさんの傷だらけのお身体がし、しし心配で……。ふかふかのベッドのありそうなお宿を選んだだけというか……」

タナベが顔を赤くしてヤマモトが呆れた顔で

「こいつ、とんでもない貧乏神だわ」

「か、神だなんてそんな……」

何故か照れているハーツを二人は諦めた顔で見つめ

「で、何か、この近辺で稼げそうな話はないのか?」

「検索したら、この街には大きな狩猟ギルドがあるね。サイトには、ハンター絶賛募集中って大文字であるよ」

「しゃあない、働くか……」

「えっ……」

何故かハーツが残念そうな顔をしてくる。

「いや、金がもうないんだから働くしかないだろ……」

「えええぇえ……せっかく、皆からバカにされる下級悪魔の労働から逃れられたと思ったら、今度は人間の労働ですかぁ……楽しい旅だったのにぃ……」

「……どうせ、殆ど役に立たないんだからついてくるだけだろうがよ……」

「で、でもぉ……」

ヤマモトとタナベは素早く肉を買うと戸惑うハーツを置いて、店を出ていった。

「まっ、まってくださぁぁぁいい……」

慌てて、ハーツもついて行く。


雪の降りだした、石やレンガで造られた北方の都市を三人は歩いていく。

夕暮れ時である。

「ああ……お二人は強いんだから悪い金持ちとかから奪ったらいいのにぃ……」

最後尾でブツブツ言うハーツにタナベは真剣な顔で

「……僕たちは、それをして間違ったんだよ。良かれと思ってこの世界の人たちの国を奪って沢山、人も殺した。だから、もうそういうことはしない」

「ああ、もう沢山だ。委員長も俺たちも酷い目に遭った。だから、これからはまともに人の助けになりたい」

「うーん……良い心がけですけどぉ」

ハーツはまだ不満そうである。


粉雪の振る雪国の街の一角に三階建ての広い石造りの建物があり大剣や弓を背負った屈強な男女が出入りしている。

「うぅ……仕事の匂いがしてきたぁ……」

「いや、お前、居るだけだから……」

「でもぉ……もうできれば、ずっと働きたくないですぅ」

タナベがハーツの肩をポンポンと叩いて

「迷ってる時間がもったないよ。僕たちについてきて」

ニコッと笑うと、ハーツは頬を染めて

「はい……未来の彼氏様……」

ヤマモトは顔をゆがめ

「……ヒサミチ、そいつ悪魔だってことを忘れるんじゃないぞ」

タナベは聞こえないふりをしてハーツの手を握り、建物の中へと入って行った。

石壁に囲まれた広いロビーには三十人ほどの屈強な男女が屯して椅子に座ったり立ち話をしながら、それぞれ情報交換をしている。

入ってきたヤマモトたちを見もせずに話に夢中のようだ。

三人は奥のカウンターへと進んで行き、顔に斜めの切り傷がついている筋肉質な受付中年女性に向き合うと

「俺ら三人、ハンターになりたいんですけど」

ヤマモトがそう言うと一斉に話していた全員がチラッとヤマモト達を見て、また何事もなかったかのように話し出した。

ヤマモト達は、一瞬驚いた顔をしたがすぐに平静を取り戻しハーツだけが涙目で、震えながら辺りを見回している。

受付の女性は、三人を眺めて

「はい、あんたSS物理ハンター。これ、色んな所で有効だから、無くさないように」

ヤマモトにポーンッと金色に輝く薄い金属のカードを投げ渡す。

そしてタナベをジッと見ながら

「あんたは、SS特殊支援ハンターだね。そこの兄ちゃんとバディを組んで一人で狩りにはいかないように」

銀色に輝くカードをタナベに投げ渡すと、さらにハーツをジッと見つめ

「……どっちがいい?」

といきなり両手に二枚のカードを出して尋ねてくる。

右手には虹色に光り輝くカードを左手には錆びた金属に「Z」と雑に刻まれたカードのようなゴミを持っていた。


ハーツは虹色のカードの方に吸い寄せられるように顔を近づけて

「うわあああああ……綺麗ですねー。これ売ったら、幾らになりますか?」

タナベが申し訳なさそうに

「すいません……この子、世間知らずで……」

受付の女性は微笑んで

「いや、私の勘が狂ったのはこの子が初めてだ。何か、あるね」

ハーツは女性の顔を怪訝そうに見つめ

「うーん……私の王さ……じゃなくて私の後ろ盾のボスの影を見てませんかー?私は、見ての通りダメダメなんですけど……」

「……あんたの人脈までは分からないけど、あんた自身が、どちらにも振れるように、見える」

ハーツは、ゴミの方を手に取ると

「あの、私もう働きたくないんです!だから、そっちの綺麗なのは要りません!こっちなら、絶対に誰にも呼ばれないでしょ?」

いきなり頬を膨らませてプイッと横を向いてしまった。



二十分後



三人はギルド受付の女性から一挙に大金が稼げる超高難度任務を言い渡され、街の近くの雪山を登っていた。

粉雪は止まったが、足元には朝から降っていたらしい数センチの固い雪が積もっていて、さらに、そろそろ日が暮れる。

「うー……寒い……あの、私だけ帰っても?」

「いまさらお前だけ帰ったら、途中で迷って凍死するぞ……。ヒサミチまだか?」

タナベは金属の塊を指でいじりながら

「そろそろ、異形の住む洞穴に近づいてる。今夜は晴れた月夜だから雪に反射して、もし外で戦ったとしても視界は悪くないはずだよ。……できるだけ、雪のない洞穴内で仕留めたいけど」

「どっ、どんな化け物が居るんでしたっけ?」

タナベは、胸ポケットから折り畳まれた紙を出し、広げて見ながら

「えっと……少女の姿をしているけど近づくと、汚らしく変形する異形のモンスターらしいよ」

「……そっ、それは、私は……隠れていますね……」

ハーツは顔を青くして言ってくる。


さらに三人がしばらく歩くと開けた岩場に高さ二メートルほどの洞穴がパックリと穴を開けていた。

「うぅぅ……怖いです……」

ハーツは近くの大岩の陰に隠れる。

ヤマモトは銀の大剣シルバーソングを抜き、タナベは金属の塊を取り出して何かを調べ始める。

「……やっぱりこの中に、潜んでいるやつは検索に出ないや。五日前の事件だから、記事は沢山出るけど最初にやられたAランクハンターの通報を受け、追加派遣されたSランクハンターが七人も大怪我を負っているな……」

「まあ、俺たちにかかれば余裕だろ」

ヤマモトは、意気揚々と銀の大剣を構えながら洞穴の中へと入って行く。

タナベも金属の塊から光を出し、ヤマモトの行く先を照らしながらその中へと進んでいく。

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