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取るべき行動

サンガルシアが戻ってくると

ブラウニーは少女に手を翳すのを止め

今度は、サンガルシアが買ってきた布の服を少女に

俺が着せてやる。

全裸の女に服を着せるのは

肉体の無いお前がやるのが筋やろ。

とは彼の言葉である。

着せ終わると、そのまま床に寝かせて

俺とサンガルシアは少し離れた。


ブラウニーが寝ている少女に

「起きたまえ」

と小さく呟くと、少女はパチッと両目を開けて

そして真っ青な顔と涙目でブルブル震えだした。

頭から上だけ動かして

周囲を見回すが、身体から下は

一切動かせないようだ。

「……くっ……」

ブラウニーは継ぎはぎだらけの顔を微笑ませて

「……こちらの誠意を見せたい。

 我々の手の内を君に晒す。

 それに、君が我々を付け狙わなければ

 君を無事にドハーティー卿の元へと送り届けよう」

「……」

少女はブラウニーをキッと睨みつけた。

ブラウニーは微笑みを崩さずに


「では、手の内を開示しよう。

 我々は敵ではない。

 スズナカ・サキのマインドコントロールから

 この帝都を救いたいのだ。

 そして、幽閉されているある皇族を救い出すために

 帝都深奥まで降りていく。

 彼の名前は、言わなくともわかるだろう?」


「……」

少女は答えない。

腕を組んだサンガルシアが

「で、どうするんや。

 俺らはそんなに待つ気はないで?」

少女は震えをピタッと止めると

「……もし、私がまた付け狙おうとするなら?」

サンガルシアはニヤニヤ笑いながら

長身で少女に近づいて行って

見下ろすと

「……どうするべきでしょうねぇ」

とブラウニーを見つめる。

継ぎはぎの顔をブラウニーは真顔にして

「……どうしても邪魔をするというならば

 丁重に君を封印して、ドハーティー卿に送り返す。

 殺しはしない。障碍や傷を負わす気もない。

 我々は不必要な人間を一人も殺す気はない」

「……必要な人間は殺したのか?」

少女の鋭い瞳でブラウニーは見上げられると

静かに頷いた。

そして俺を手招きすると

「道中死んだのは何人だったかね?」

尋ねてくる。

「バックリー城で十七人だな。帝都に入ってからは

 まだ一人も死んでない」

少女は急に真っ赤に燃えるような瞳になり

「貴様らは!!人の命をなんだと思っているのか!?」

部屋中に響くような絶叫を上げてきた。


俺たち三人は一切、何の心にも響かなかった。

サンガルシアは冷たい顔で

「……ねぇちゃん、謝罪がまだ済んでないなぁ。

 ここに居るダークスケルトンの

 皮と肉と内臓、全部焼いたんやぞ?

 まずは謝るのが、筋やないんか?」

少女は燃えるような瞳で

俺たちを睨みつけて、口は閉じたままだ。

サンガルシアは怒るどころか

嬉しそうな顔で

「……お前、心底カスやったんなぁ。

 自分の気持ちと倫理観以外はどうでもいいんやろ?

 さっっっいっこうの大悪魔になれるで?

 どや、いっぺん死んで、俺の弟子にならんか?」

「ならない!!」

少女はまた部屋中が響くような叫び声をあげた。

そして右手の指がピクピクと微かに動き始めた。

ブラウニーは苦笑いしすると

「怒っているふりで、解呪か。

 君は中々の技巧者だが、経験が圧倒的に足りない。

 相手の力量、そして話している内容

 さらには自分の欲望を鑑みて

 冷静に今、取るべき行動を考えるべきだ」

軽く転がっている少女に手を翳す。

すると彼女は白眼を剥き

口から白い泡を吹きだした。

サンガルシアは呆れ顔で

「……王様、封印してませんけど

 もしかして、ついてこさせるんですか?」

「ああ、気が変わった。

 彼女が我々の追跡を続けるのならば、教育しよう。

 ドハーティー卿の元に戻り

 態勢を立て直す冷静さを

 取り戻せるのならば、それでもよい」

サンガルシアは俺に灰色のローブのようなものを

瞬時に着せて、そして頭にすっぽり入る

灰色の頭巾を被らせる。

「ほら、ターズ、行くぞ」

どうやら、少女は放っておいて出発らしい。

「二時間くらいは稼げるだろう。

 その間に、計画を少しでも遂行しよう」

「あーあ、頭の悪いメスガキのせいで

 数か月前から足がつかないように用意してた

 事務所放棄っすかー」

「殺さないのか?」

俺が頭巾の中から尋ねると

「ああ、楽しみを増やした。

 きっちりと立てすぎた計画を少し緩ませる。

 その方が結果的に成果が多いこともあるのでね」

ブラウニーもそう言いながら

継ぎはぎの頭にすっぽりと頭巾を被った。

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