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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 中二


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下位悪魔

一時間後


「……うーん」

ベッドで上半身を起こし、熱心に金属の塊を指でいじっている全身包帯だらけのタナベが小さく唸り声を上げる。

部屋の隅で丸椅子に座り抜き身のシルバーソングを同じく座っているハーツに突き付けているヤマモトが目をハーツから逸らさず

「……どうだ?」

「ムキピディアのハーツの項目の内容は少ないし※要出典だらけだ……」

「なっ、なんて書いてあるんだ?」

「……ちょっと待ってね、要出典がないところから言うから……えっとハーツは、ブランアウニス虚無王配下の下位悪魔、序列は七十八万二千五十三位の最下位である……」

「うぅ……」

ハーツは泣きそうになり、ヤマモトが脱力して

「……ほんとに弱いのか……ビビッて損したわ……」

ハーツは完全に凹んで俯いている。タナベは更に

「……ブランアウニス虚無王の地上と逆さの楽土の虚無界の連絡役を務める……リュウ、こいつ、情報色々持ってるかも……」

いきなりハーツは涙目で慌てだし

「いっ、いいいい言えません!!絶対に言えないんです!王様から、そういう呪文を今回の任務の出発の時にかけられています!!」

イライラした顔のヤマモトが

「自白剤とか、あとクソスズナカに操らせたら色々と吐くんじゃないのか?」

さらに慌てだしたハーツは

「だっ、ダメですよ!!マインドコントロールとか拷問とかも絶対だめです!私が廃人になっても、本当に大事なことは何も言えないんです!」

ヤマモトは閃いた顔をして

「サキュエラって検索してくれ。さっき言ってた」

「ああああああ……それは何故かガードされてなくてえええああああああ……」

ハーツは号泣し始めた。

タナベはどことなく心配そうな眼差しをハーツに向けながら白い金属の塊を指先でいじり

「サキュエラって、名前はハーツの項目の中には、どこにもないな……検索にもでない……」

そして不思議そうな顔をヤマモトに向けた。

ハーツはピタッと泣き止んで

「そ、そうか、私ゴミ扱いされてたから友達でも何でもないからまったく関係ないんだ……良かったぁ……」

ヤマモトが呆れた顔で

「安心してんじゃねぇよ……ヒサミチ、良かったら※要出典のところを読んでみてくれ」

「うん。あまり声に出したくないんだけど……」

タナベは少し戸惑った後に

「……異性に対して興味がある。あまりにも同族である悪魔にモテないので最近は人間でもいいかと思いつつある※要出典」

ヤマモトは顔をしかめ、真っ赤になったハーツを見つめた後

「……次」

タナベは頷いて

「……気質としては消極的で怖がりである。リアクションが面白いので悪魔たちの玩具として日々、弄られている※要出典……」

「うううぅ……大体当たってるぅぅ……」

「ひでぇな……」

ヤマモトがつい言葉を漏らすと

「やっ、優しい……」

ハーツがガバッと顔を上げて見つめて

「いや、情報として価値のないお前がひでぇって……意味だよ……お前、悪魔だろ……どうしてこんなにダメなんだよ……」

「……私、まだ十六年しか生きてなくて……先輩方は、その百倍とか……王様はもっと言えないですけど、もっとずっと……」

ハーツの口がいきなり閉まった。

「むぐぐぐ……っはあ!呪文が……王様の呪文が発動して息ができなかった……」

必死に空気を吸い込むハーツにタナベが不思議そうな顔で

「あの、鼻もふさがってたの?違うように見えたけど……」

と尋ねると、ハーツはショックを受けた顔をして

「そっ、そうか……鼻呼吸すれば……こ、今度からはそうしよう!ありがとうございます!」

嬉しそうに頭を下げるハーツにタナベは口を半開きにして固まってしまう。

ヤマモトがため息を吐きながら

「めちゃくちゃ、バカなんだよ。どうすんだこいつ……外で斬り捨てて森の中にでも埋めていくか?旅の邪魔だろ……」

「だっ、だだだだだダメですよ!!私みたいなやつを殺したら、その剣が悪魔の血で錆びますよ!!」

「それ、いま話し造ったろ……」

「そっ、そそそそそんなことはありません!たっ、たたた多分錆びます!いや、きっと!きっと錆びますから!」

クルクルと表情を変えて、嬉しそうになったり号泣したり、凹んだりするハーツをタナベは口を半開きにして、しばらく見つめた後

「お、面白い……」

つい、言ってしまう。

「ヒサミチ……面白くはねぇだろ。ウザいバカ悪魔だぞこいつ……」

呆れた顔のヤマモトがそう言うと

「捕虜として、連れていこう。ユタカさんなら、この子から何か情報を引き出せるかもしれないし」

ハーツはホッとした顔で

「あっ、あの……何でもしますけど、できればエッチな拷問とかしたらダメですからね……あの、その……」

俯いて、耳まで真っ赤にしだした。

ヤマモトが、立ち上がり、呆れた顔で抜き身のシルバーソングを鞘に戻しながら

「……あのなぁ、そういう対象じゃねぇし、そんな余裕はないんだよ。お前も、大人しくしとけよ。……あと、ヒサミチ誘惑したら、ぶっ殺すからな」

「もっ、もももももちろんです……大人しくしときます、あ、あのタナベさん……」

「何ですか?」

白い金属の塊をいじりだしていたタナベが戸惑いながらハーツを見ると

「あ、あの……私が対象外ってことは、お二人はお付き合いしている、ど、同性愛者とか……」

憤怒の表情のヤマモトがシルバーソングを抜いたのでタナベは必死に

「リュウ!!殺したら絶対だめだ!」

ベッドから降りようとして、転げ落ちかける。

それを鞘に大剣を再び収めたヤマモトが素早く支え元の位置へと戻し、さらに椅子にハーツを素早く縛り付けると

「イライラする。ちょっと外の空気吸ってくるわ」

扉を開けて出ていった。

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