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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 中二


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暇つぶし

ところ変わって、真夜中の竜騎国首都城内の一室


制服姿のスズナカが、帰還してきたワタナベとユウジそして、洗脳された竜騎国王女のファルナと共に食堂でテーブルを囲んで食べる合間に口を開く

「うちの同じくらいの歳の親戚にさー。やっばい陰キャがいたんだよねー」

ニコニコしながらワタナベたち他の転移者たちに話し始める。

ファルナの開いた口に切り分けた肉をフォークで刺して持って行っていたワタナベが

「それ、面白くなるの?」

嫌そうな顔で尋ねる。ユウジもつまらなそうに

「……身動きとれんし、その話もつまらなそうだ。また似たような化け物どもが出たら、今度はお前が一人で行ってくれ」

スズナカは笑いながら

「嫌でーす」

速攻で断りつつ

「その陰キャは、一見、陽キャの振りしてるんだけどちょっと話聞いたら、やっばいストーカーなのね」

「……いや、もういいよ。そういう暗い話は」

心底嫌そうな顔のワタナベを無視してスズナカはお茶を飲みながら

「でもさー。我がスズナカ一族、本家の一人娘だったから、親戚で集まったときは、みんな苦笑いしてスルーしててさー。あ、うちは分家かつ、わりと貧乏なんだけどその家は、超金持ちだった。紡績?とかで成功した家で。うちのダメ親父も結構、生活費支援されてて」

「……つまんねぇぞ。さっさと、そのヤバいやつの話しろ」

ユウジが本気で不快な顔で文句を言う。

「あ、興味出ちゃったー?」

スズナカは嬉しそうに、サラダを口に入れて咀嚼してから飲み込むと

「まあ、私も親戚一同集まった飲み会とかは同年代がそいつしかいなくて、その陰キャと話すしかないから友達のふりして色々と、やっばいストーキングネタを仕入れては友達との笑い話のネタにしてたのね。ほら、そいつ遠くのド田舎に住んでるからばれないし」

「性格、超悪いなぁ……」

ワタナベが目を細めて、口を歪めて不快な表情を作る。

「ナベワン、こいつがゲスなのは幼稚園からだ。今更、気にしてやるな」

ユウジがニヤニヤしながらスズナカを見る。

「ナベワンってもうやめてほしいなぁ。タナベ君が、ナベツーでしょ?」

スズナカが見下した顔で

「あんたたちも、陰キャコンビでしょ!文句言うなってー」

「……続き話しててよ。僕はファルナちゃんの顔だけ見てるから」

気分を害したらしいワタナベは完全にそっぽを向いてしまった。

スズナカはそれをニヤニヤと嬉しそうに眺めながら

「その陰キャさー。そいつの地元の高校に入ったら冴えない他の陰キャどもを集めて、いきなり自分の立ち上げた部活の部長になりやがったのよ。それを私に語る様子がまた、楽しそうでさー。ムカつかない?何、ストーカーがリア充目指してんのって感じで」

ユウジが理解した顔で

「ああ、お前は高校入った後に彼氏と別れたり家のことも色々とあったもんな。僻むなよ。サキちゃーん」

スズナカはユウジを思いっきり睨みつけてから

「……まあ、いいわ。で、その部長になった陰キャから教わったんだけど"身動きとれないなら、他人を大いに使えばいい"ってね」

ユウジがいきなり爆笑し始めた。

「それ言うために、めちゃくちゃ不快な話してたのか。つくづくお前バカだな!!あははははは!!一言で済むだろ!あはははは!」

「バカっぷりには、あんたとリュウジには適わないわ」

スズナカはユウジに見下した視線を送って

「とにかくー。賢い私は、思ったわけですよ。オースタニアに千人規模で、私が操った暗殺者を送り込めばちょっとは暇つぶしができるんじゃないかって」

ユウジは鼻で哂いながら

「……くだらねぇ。もう全員死んでるだろ」

「ふふふ。ちょうど五百人ずつに分けて、総司令のスベンと代理王の暗殺を命じたから誰かが、奇跡的に達成してるかもよー?」

ワタナベが仕方なさそうにスズナカの方を向いて

「……委員長が、ここに来るのを待ったほうがいいよ。タナベ君たちも死んでるって噂は聞かないしそのうち、ここで全員集合してからまたオースタニアを取り返しに行けばいいでしょ?六人そろえば、楽勝だよ」

ユウジがニヤニヤ笑いながら

「なあ、ナベワン。たかが高校サッカーでもレベルの違いって言うのはキリがないんだよ。地元のちょっと上手いやつレベルから、神のようなプレイングのユース代表まで居る。そのユース代表の中でも、十代のうちに日本代表になるやつと数年後一般企業の会社員してるやつまで、大きな実力や運の格差がある」

ワタナベが黙って聞いていると

「……その基準で言えば、俺らはこの世界全体でどの程度何だろうな。ユース代表くらいか?いやー?俺はそうは思わない。せいぜい、県大会優勝程度だろうな。あまり、調子に乗ってると……」

ニヤニヤしながら黙ったユウジにワタナベが固唾をのみながら

「この間の化け物よりもっとヤバいやつが出てくると……」

スズナカが鼻で哂いながら

「邪魔者は全員殺せばいいのよ。ユウジは死にたいだけでしょ。圧倒的な暴力に呑み込まれてね。無理無理。私たちの強さを小さく見積もりすぎ」

「あははは!そうかもしれないな」

「ゆ、ユウジ君、脅かさないでよぉ……」

ワタナベはホッとした顔で、またファルナの口に食べ物を持っていく。



その一時間後。オースタニア城、ジャンバラード城内



「代理王様!!マーリーン様はご無事か!!!!!!」

傷だらけの愛用の鎧が血まみれのスベンが

纏わりつくように次々に襲い掛かってくる老若男女の暗殺者を自らの刃と、十名ほどの屈強な護衛たちの協力で次々に抹殺しながら、オースタニアの衛兵たちが首を掻っ切られて大量に死に絶えている城内最上階の長い通路を玉座の間へと全速力で駆けて行った。

彼と護衛たちが、蹴破るように城内最上階の代理王の寝室を開けると室内は血の海だった。

スベンは力なく刃を落とし、その場に崩れ落ちる。

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