表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/166

めちゃくちゃ不快な話

ところ変わって、真夜中の竜騎国首都城内の一室。


制服姿のスズナカが

帰還してきたワタナベとユウジ

そして、洗脳された竜騎国王女のファルナと共に

食堂でテーブルを囲んで食べながら

「うちの同じくらいの歳の親戚にさー。

 やっばい陰キャがいたんだよねー」

ニコニコしながらワタナベたち転移者に

話し始める。

ファルナの口に切り分けた肉をフォークで刺して

持って行っていたワタナベが

「それ、面白くなるの?」

嫌そうな顔で尋ねる。

ユウジもつまらなそうに

「……身動きとれんし、その話もつまらなそうだ。

 また似たような化け物どもが出たら

 今度はお前が一人で行ってくれ」

スズナカは笑いながら

「嫌でーす」

速攻で断りつつ

「その陰キャは、一見、陽キャの振りしてるんだけど

 ちょっと話聞いたら、やっばいストーカーなのね」

「……いや、もういいよ。

 そういう暗い話は」

心底嫌そうな顔のワタナベを無視して

スズナカはお茶を飲みながら

「でもさースズナカ本家の一人娘だったから

 親戚で集まったときは、みんな苦笑いしてスルーしててさー。

 あ、うちは分家かつわりと貧乏なんだけど

 その家は、超金持ちだった。紡績?とかで

 成功した家で。うちのダメ親父も結構、生活費支援されてて」

「……つまんねぇぞ。

 さっさと、そのヤバいやつの話しろ」

「あ、興味でちゃったー?」

スズナカは嬉しそうに、サラダを口に入れて

咀嚼して飲み込むと

「まあ、私も親戚一同集まった飲み会とかは

 同年代がそいつしかいなくて

 その陰キャと話すしかないから

 友達のふりして色々と、やっばいストーキングネタを仕入れては

 友達との笑い話のネタにしてたのね。

 ほら、そいつ遠くのド田舎に住んでるからばれないし」

「性格、超悪いなぁ……」

ワタナベが目を細めて、口を歪めて

不快な表情を作る。

「ナベワン、こいつがゲスなのは幼稚園からだ。

 今更、気にしてやるな」

ユウジがニヤニヤしながらスズナカを見る。

「ナベワンってもうやめてほしいなぁ。

 タナベ君が、ナベツーでしょ?」

スズナカが見下した顔で

「あんたたちも、陰キャコンビでしょ!

 文句言うなってー」

「……続き話しててよ。

 僕はファルナちゃんの顔だけ見てるから」

ワタナベは完全にそっぽを向いてしまった。

スズナカはそれをニヤニヤと嬉しそうに眺めながら

「その陰キャさー。そいつの地元の高校に入ったら

 冴えない陰キャどもを集めて、

 いきなり自分の立ち上げた部活の部長になりやがったのよ。

 それを私に語る様子がまた、楽しそうでさー。ムカつかない?

 何、ストーカーがリア充目指してんのって感じで」

ユウジが理解した顔で

「ああ、お前は高校入った後に彼氏と別れたり

 家のことも色々とあったもんな。

 僻むなよ。ダセェぞ」

スズナカはユウジを思いっきり睨みつけてから


「……まあ、いいわ。

 で、その部長になった陰キャから教わったんだけど

 "身動きとれないなら、他人を大いに使えばいい"ってね」


ユウジがいきなり爆笑し始めた。

「それ言うために、めちゃくちゃ不快な話してたのか。

 つくづくお前バカだな!!あははははは!!

 一言で済むだろ!あはははは!」

「バカっぷりには、あんたとリュウジには適わないわ」

スズナカはユウジに見下した視線を送って

「とにかくー賢い私は、思ったんわけですよ。

 オースタニアに千人規模で、私が操った暗殺者を

 送り込めば、ちょっとは暇つぶしができるんじゃないかって」

ユウジは鼻で哂いながら

「……くだらねぇ。もう全員死んでるだろ」

「ふふふ。ちょうど五百人ずつに分けて

 総司令のスベンと代理王の暗殺を命じたから

 誰かが、奇跡的に達成してるかもよー?」

ワタナベが仕方なさそうに

スズナカの方を向いて

「……委員長が、ここに来るのを待ったほうがいいよ。

 タナベ君たちも死んでるって噂は聞かないし

 そのうち、ここで全員集合してから

 またオースタニアを取り返しに行けばいいでしょ?

 六人そろえば、楽勝だよ」

ユウジがニヤニヤ笑いながら

「なあ、ナベワン。たかが高校サッカーでも

 レベルの違いって言うのはキリがないんだよ。

 地元のちょっとうまいやつレベルから

 神のようなボールさばきのユース代表まで居る。

 そのユース代表の中でも、十代のうちに日本代表になるやつと

 数年後一般企業の会社員してるやつまで、

 大きな実力や運の格差がある」

ワタナベが黙って聞いていると

「……その基準で言えば、俺らは

 この世界全体でどの程度何だろうな。

 ユース代表くらいか?いやー?

 俺はそうは思わない。せいぜい、県大会優勝程度だろうな。

 あまり、調子に乗ってると……」

ニヤニヤしながら黙ったユウジに

ワタナベが固唾をのみながら

「この間の化け物よりもっとヤバいやつが出てくると……」

スズナカが鼻で哂いながら

「邪魔者は全員殺せばいいのよ。ユウジは死にたいだけでしょ。

 圧倒的な暴力に呑み込まれてね。無理無理。

 私たちの強さを小さく見積もりすぎ」

「あははは!そうかもしれないな」

「ゆ、ユウジ君、脅かさないでよぉ……」

ワタナベはホッとした顔で、またファルナの口に

食べ物を持って行った。



その一時間後。

オースタニア城、ジャンバラード城内。



「代理王様!!マーリーン様はご無事かあああっ!!!!!!」

傷だらけの愛用の鎧が血まみれのスベンが

纏わりつくように次々に襲い掛かってくる

竜騎国からの老若男女の暗殺者を

自らの刃と、十名ほどの屈強な護衛たちの協力で

次々に抹殺しながら

衛兵たちが首を掻っ切られて、

死に絶えている城内最上階の長い通路を

玉座の間へと全速力で駆けて行っていた。

彼と護衛たちが、蹴破るように

城内最上階の代理王の寝室を開けると

室内は血の海だった。

スベンは力なく、刃を落とし

その場に崩れ落ちる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ