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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 中二


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煉獄に住まう子供たち

冷たい石造りの通路に等間隔で設置されたランプの灯が揺れている。

窓は一切ない。

ボロボロのローブを纏ったブラウニーの痩せた背中についていくと彼は、黒ずんだ両開きの木造の扉の前で停まり、それを枯れ木のような両手で押し開けた。


比較的広い室内には円卓を囲んで、七人のブラウニーと似たようなボロボロのローブをフードまで目深に被った者たちが等間隔で座っていた。

俺たちが入ると、背後の扉は勝手に閉まっていく。

「すまないが、私の背後に立っていて欲しい」

空いている椅子にブラウニーは座り、フードを目深に被った。

俺は言われたとおりに、その背後に両手を前で組んで立った。


こちらから見て、最奥のフードを被った最も大柄な男が

「……では、始めようか」

低く異様な深みのある声で言い

「マグリア帝国に現れた"煉獄に住まう子供たち"は預言書の通り、西のオースタニア王国を破壊しつくし、そして、現在その北部のライグバーン竜騎国を、高速乱射可能な銃、数丁と、広範囲に殺傷能力のある爆薬を放てる大筒兵器で滅ぼしつつある」

ブラウニーを含め、ほぼ全員が無言だが、深く憂慮した雰囲気が部屋中を包み込む。

こちらから見て右手の小柄のローブの女が

「……私の手のものが硝石を供給しておりますが今後、どうすべきか皆様のご判断を願います」

ブラウニーがすぐに

「……続けるべきだ。彼らから、出来る限り遺体を手に入れねばならぬ」

「……了解いたしました」

左手の手前に座る太った男が

「……予言書では、煉獄の子供たちの一人が南部大陸にて、ウランとプルトリウムを掘りあて大変な被害を被るような兵器を造るとのことですが……」

左手に座る背の高い女が

「……私の配下を何体か南部の鉱山へと派遣いたします、どれほどの時が稼げるかは分かりませんが」

ブラウニーがそこで手を挙げて

「どうぞ。ブラウニー公」

奥に居る大柄な男が彼を指すと

「私は煉獄に住まう子供たちをこの二十日間つぶさに観察してきました。彼らの性格、目的、そして性的趣向などです」

全員が黙ってブラウニーを見つめている。

「……結論としては、彼らはこの世界にとって害悪です。預言書の通りならば、彼らの住む煉獄には我らが想像がつかぬような悪魔たちが闊歩していて、彼らは、そこに住む年端も行かぬような子供に過ぎぬのでしょうが、大人の居ない世界に来た彼らはタガが完全に外れてしまっているように思えます」

全員が軽く何度も頷いた。

「そこで、私はこのターズを蘇ら……」

ブラウニーがそこまで言いかけたところで

背後の閉まっていた扉が勢いよく開けられた。


「あーここかあ。ヒサミチここだよな?」


銀色に光り輝く大剣を片手で持ち、真っ黒な制服のようなものを着た赤毛を逆立てた体格の良い青年が隣にいる小柄な少年に話しかける。

同じ制服を着た小柄で、黒髪の斜めに切った前髪で片目を半分隠した陰気な少年は、ボソボソと手に持っている小さな白い金属の塊を見ながら

「ああ……ヌーグルマップではここだ。ちゃんと書いてある"黒魔術師たちの地下秘密会議所"って」

「はぁ、異世界でネット使えるとか、お前、最高の能力を手に入れたよ。俺もそっちのが良かったわ。じゃ、さっさと片付けるから、適当に隠れといて」

小柄な男が扉の向こうへと隠れるのと同時にブラウニーが立ち上がると円卓に座っていた他全員の姿が消えた。

赤毛の男は大きく舌打ちして

「チッ。あとは立体映像だったか。ミノリには、一網打尽にするって言っちゃったんだよなぁ」

苛立ちながら、銀の大剣を床にガンガンと叩きつける。

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