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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 中二


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18/166

大サルガ砂漠

ヤマモトとタナベが唾液を浴びるのとほぼ同時刻

竜騎国最北端の要塞



ハチの巣になっている青鎧を着た女兵たちが死骸の山と血の海を築いている大広間の奥、汚いフードを深くかぶり、杖を翳し彼らの周囲に青い障壁を張っている黒魔術師と身の丈の二倍ほどの槍を構えた小柄で青い髪、そして青鎧を纏った少女が近くで眺めている三人に敵意を向けている。

「うー。ファルナちゃんかわいいんだよなぁ。あの、絶対に僕らに屈しないんだから!という眼差し、十三歳なのにこの国の王だという知性と人格、完璧なんだよなぁ……」

迷彩服の小太りの青年が両手に持ったマシンガンを下に向けながらうっとりと二人を眺める。

その隣の、制服姿で金髪の女子は小型のロケットランチャーを構えながら

「ワタナベさーん……もうよくねっすか?私、そろそろ休みたいんだけどー」

小太りの青年が慌てて、脱力した女子に

「まっ、まってよぉおおお……ファルナちゃんだけはダメだって……僕の嫁にするんだから!」

その隣で立てたスナイパーライフルを杖代わりにしてダルそうに寄りかかっている体格の良い青年が

「……ここまでたった一時間弱かよ……雑魚ばかりでほんとつまんねぇな」

呆れた顔で、障壁に守られた二人を見つめるとファルナと呼ばれた青髪の少女は彼をキッと睨みつけ

「……わらわは!!スイー、アカマル、イエレンの恨みを生涯忘れはせぬぞ!!」

涙目で、三人の方へと槍を構えた。

小太りの少年はブルッとその眼差しに震え

「いい……いいよ!その瞳をずっと見ていたいけど!でも……なんか……」

チラッと怒気が明らかに漏れ出している金髪の少女の方を見つめる。

「……確かに、私はそろそろ限界だわー。じゃ、予定通りやるから、さっさと吸っちゃって」

隣の青年は頷くと、ロケットランチャーを足元に置いた少女にスナイパーライフルを渡し

「吸収……物理防御障壁……」

そう言いながら、王女達に向け右手を翳した。すると、二人を覆っている魔法の障壁が瞬く間にその右手の中へと吸い込まれていく。

愕然としている黒魔術師の頭に金髪の少女が正確にスナイパーライフルを打ち込んで破れかぶれで三人に突撃してきた青鎧の少女を体格の良い青年があっさりと羽交い絞めにした。

「くっ……殺せえええええええ!」

手足をジタバタしながら、そう叫んだ少女に金髪の女子が近寄って額に右手を当てると、彼女は軽く舌打ちをしてから

「汝、ファルナ・オグナリスは今からワタナベ・ゴンタロウの嫁となるー。生涯、付き添ってささえよー」

やる気なく棒読みで、そう唱えた。

少女は一筋の涙を流すと、ガクリとうな垂れて気絶した。



時は多少流れ、ターズたちが、王都を再奪取した翌日。



ジャンバラード城から馬で出立した俺は

ブラウニーとともに小型の砂漕ぎ船に乗り、大サルガ砂漠を南へと走っていた。

オースタニアから三十五年間出たことのなかった俺は砂漕ぎ船のことは今日までに実際一度も、目にしたことはなかった。

小さな漁船ほどの帆が貼ってある船の下部に

魔法で動く鈎付きの車輪八輪と、後部に砂を取り込んで猛烈に噴出して推進力にする噴射口がついており、それらが砂の海の上、この船を疾走させている。


機嫌よく舵を左右に取るブラウニーが後部に立ち、俺は船前方に座りアップダウンの激しい砂の海を眺め、何か居たり障害物など見かけたら報告する係だ。


突如一キロほど遠方に砂煙が立つと、全長数十メートルはありそうな巨大な虫がアーチを描くように砂から出て、また砂へと戻っていった。

「サンドワーム!!前方一キロ!左斜め前消失!」

一応、教えられた通り、前を向いたまま叫ぶと後方のブラウニーが

「……見えている。ありがとう」

落ち着いた声で返してくる。

サンドワームが出たら、誰でも発見次第叫ぶのが砂漕ぎ船に乗る者たちの絶対のルールだそうだ。

客でも船員でも関係ないらしい。

「……私の計算ではそろそろだがな……準備をしていてくれないか?」

俺は頷いて、荷物の中から怪しく紫色に鈍く輝く両手持ちの大鎌を取り出した。

「チャンスは一回だ……だが、失敗する確率が高い。失敗しても焦られなくていい。次の手は言った通りに……」

「ああ、心得てるよ……だが、できれば初手で終わらせたいもんだ」

俺は立ち上がると大鎌を両手持ちして、両足を開いて踏ん張り砂漕ぎ船の先頭に立った。

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