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大サルガ砂漠

ヤマモトとタナベが唾液を浴びるのと

ほぼ同時刻、竜騎国、最北端の要塞にて



ハチの巣になっている

青い鎧を着た女兵たちが死骸の山を築いている大広間の奥で

汚いフードを深くかぶり、杖を翳し

彼らの周囲に青い障壁を張っている黒魔術師と

身の丈の二倍ほどの槍を構えた

小柄で青い髪、そして青い鎧を纏った少女が

近くで二人を眺めている

三人に敵意を向けている。

「うーファルナちゃんかわいいんだよなぁ。

 あの、絶対に僕らに屈しないぞという眼差し

 十三歳なのに、この国の王だという知性と人格

 完璧なんだよなぁ……」

迷彩服の小太りの少年が両手に持ったマシンガンを下に向けながら

うっとりと二人を眺める。

その隣の、制服姿の金髪の少女は

小型のロケットランチャーを構えながら

「ワタナベさーん……もうよくねっすか?

 私、そろそろ休みたいんだけどー」

小太りの少年が慌てて、脱力した少女を止めて

「まっ、まってよぉおおお……ファルナちゃんだけは

 ダメだって……僕の嫁にするんだから!」

その隣の立てたスナイパーライフルを杖代わりにして

寄りかかっている青年が

「……ここまで一時間弱かよ……雑魚ばっかりで

 ほんとつまんねぇな」

呆れた顔で、障壁に守られた二人を見つめると

ファルナと呼ばれた青髪の少女は彼をキッと睨みつけ

「……わらわは!!スイー、アカマル、イエレンの恨みを

 生涯忘れはせぬぞ!!」

涙目で、三人の方へと槍を構えた。

小太りの少年はブルッとそのまなざしに震えると

「いい……いいよ!その瞳をずっと見ていたいけど!

 でも……なんか……」

チラッと怒気が雰囲気から漏れ出している

金髪の少女の方を見つめる。

「……確かに、私はそろそろ限界だわー。

 じゃ、予定通りやるから、サイトウ吸っちゃって」

隣の青年は頷くと、ロケットランチャーを足元に置いた少女に

スナイパーライフルを渡し



「吸収……物理防御障壁……」



そう言いながら右手を翳した。

すると二人を覆っている魔法の障壁が瞬く間に

その右手の中へと吸い込まれていく。


愕然としている黒魔術師の頭に

金髪の少女が正確にスナイパーライフルを打ち込んで

破れかぶれで三人に突撃してきた青鎧の少女を

青年があっさりと羽交い絞めにした。

「くっ……殺せえええええええ!」

手足をジタバタしながら、そう叫んだ少女に

金髪の少女が近寄って、額に右手を当てると

軽く舌打ちをしてから

「汝、ファルナ・オグナリスは今から

 ワタナベ・ゴンタロウの嫁となるー。

 生涯、付き添ってささえよー」

やる気なく、そう唱えた。

少女は一筋の涙を流すと、ガクリとうな垂れて気絶する。


時は流れ

ターズたちが、王都を再奪取した翌日。


ジャンバラード城から馬で出立した俺は

ブラウニーとともに小型の砂漕ぎ船に乗り

大サルガ砂漠を南へと走っていた。

オースタニアから三十五年間出たことのなかった俺は

砂漕ぎ船のことは今まで知っていたが

今日まで実際に一度も、目にしたことはなかった。

小さな漁船ほどの帆が貼ってある船の下部に

魔法で動く鍵付きの車輪八輪と、後部に砂を取り込んで

猛烈に噴出して推進力にする噴射口がついていて

それらが、砂の海の上、この船を疾走させている。

機嫌よさげに、舵を左右に取るブラウニーが

後部に立っていて、俺は前方で

アップダウンの激しい砂の海を眺め

何か居たら、報告する係だ。


いきなり、一キロほど遠方に、砂煙が立って

全長数十メートルはありそうな、巨大な虫が

アーチを描くように、砂から出て砂に戻っていった。

「サンドワーム!!前方一キロ!左斜め前消失!」

一応、教えられた通り、前を向いたまま叫ぶと

後方のブラウニーが

「……見えている。ありがとう」

落ち着いた声で言う。

サンドワームが出たら、発見次第叫ぶのが

砂漕ぎ船に乗るものたちのルールだそうだ。

客でも船員でも関係ないらしい。

「……私の計算ではそろそろだがな……準備をしていてくれないか?」

俺は頷いて、荷物の中から怪しく紫色に鈍く輝く

両手持ちの大鎌を取り出した。

「チャンスは一回だ……だが、失敗する確率が高い。

 失敗しても焦られなくていい。

 次の手は言った通りに……」

「ああ、心得てるよ……だが、できれば初手で終わらせたいもんだ」

俺は大鎌を両手持ちして、両足を開いて踏ん張り

砂漕ぎ船の先頭に立った。

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