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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 中二


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158/166

話しがある

華やかな服装に着替える。

俺は青を中心とした寒色系でまとめられた

職人のツナギのような少し緩めのシルエットの服だ。

ネールは原色をぶちまけたような鮮やかなピエロのようなブカブカの服装である。

ソーラにも当然のように服が用意されていて

緋色の艶やかな貴族のドレスだった。

「わあぁ……地上で生きてた時以来かも」

嬉しそうなソーラにネールが微笑みながら

「で、マロタベラよ。大会に優勝することが

 下の界への切符となるわけじゃな?」

ネールの頭の上に乗った黒猫は頷いて

「そうだにゃー。というか優勝しなくても三位以内に入れば

 この世界での色んな望みは叶うにゃー。

 誰かが三位以内に入って、

 この全員が下の界へと行く許可とればいいにゃ」

ネールは腕を組んでニヤリとしながら

「つまり、それだけ大会参加者が多いんじゃな」

「そうだにゃ。だから面倒なんだにゃ。

 我々は貰った服しかないにゃ。

 つまり、客観的な評価を纏っているに過ぎないにゃ。

 けれど、美的センスというのは主観的な目線が面白味を生むにゃ。

 ということで、一日の間に自分に合った服を探しに行くにゃ」

「そうらしいが、兄さんいいかの?」

ネールが派手な顔で笑いながら見てくる。

「問題ない。下の界へと行けるならどんな方法でも構わない」

俺が頷くと、ソーラが飛びあがって

「わーい!お洒落して街歩きだー!何十年ぶりだろ!」

俺の手を引いて、再び大通りへと連れて行く。




ところ変わって、封印された迷宮の閉鎖空間内。



オーロラが夜空一面を覆い

氷が張った地表の上でハーツがしゃがんで

「うー……寒い」

とガタガタ震えている。

エンヴィーヌが仕方なさそうに

「クーナンから吸った魔力を使って火を焚く」

五十センチほどの宙にクルクルと回る大きなボールほどの火球を出現させた。

ハーツは近寄ろうとして熱かったらしく少し離れて暖を取りだした。

まったく動じていない触手に繋がれて地表の上に立つクーナンに

グランディーヌが

「熱くはないの?」

といつもの冷静な顔で尋ねると

「ふっ、栄光のハーピー族は寒さなど跳ねのける」

得意げにニヤリと笑ってきた。

「まあ、年中全裸で過ごしているようなものだから

 寒さに強いのも当たり前か」

グランディーヌがそう言って顔を逸らすと

クーナンは本気で怒った顔で

「お、おい!裸ではない!高貴なる体毛で私は覆われている!

 年中裸で過ごす蛮族のような言い草は止めてもらいたいが!」

詰め寄ってきた。

「でも毛も体の一部なのは確か。

 つまりあなたは全裸で過ごしているのと同じ」

「くっ……違うぞ!

 体毛のある無しは我らにとって深い意味を持つのだ!」

「まあ、異文化として尊重はしてあげる」

「まっ、待て!ド田舎の蛮族みたいな目で見るな!

 我ら栄光のハーピー族こそが、この世界の中心であり……」

突如、辺りの氷の地表が揺れて

遠くで、角の生えた巨大なクジラが氷から飛び出てきた。

ドーンッ……と地鳴りをさせながら地表の上に着地した

体長五十メートルはありそうなクジラはすぐに動かなくなる。

グランディーヌがそれを見て

宙で回転している火球を触手の吸盤で吸い取ると

「終わったみたい。予想より一時間ほど早かった」

「たっ、倒したの?」

驚いた顔のハーツにグランディーヌは首を横に振り

「いや、屈服させたという方が近いと思う」

と言った。



場所は変わって竜騎国のタナベたちが宿泊している屋敷地下室内。



石造りの壁や天井に囲まれた広い頑丈そうな室内で

「くそおおおおお!!放せえええええ!」

紫色に輝く太い鎖を全身に巻き付けられたエンヴィーヌが

芋虫のように床でモゾモゾと動いて、叫んでいる。

それを近くで椅子に座って

本を読もうとしているオクカワ・ミノリはウンザリした顔で見下ろして

「叫んでも無駄だって。ここは地下だし

 私の封印魔法の最上級のものを七つかけてある上に

 その鎖は魔力を染み込ませた上級魔導士用の刑罰用のものだから

 絶対に解けることはないわ」

エンヴィーヌは悔しげな顔で

「なっ、ならば、せめて!せめて!

 わらわを今すぐに殺せ!」

「逆さの楽土に戻ったら、また復讐しに来るでしょ?

 ちょっと考えたらわかんないかなー。

 あなた、有数の強さの大悪魔なんでしょ?」

「くそおおおおおおお!!ファルナバルうううううう!!

 ブランアウニスうううう!!許さぬぞおおおおお!!」

また激しく吠えだしたエンヴィーヌにオクカワ・ミノリが

イライラした顔を向けていると

扉が開いて、タナベとヤマモトが入ってくる。

「あ、やっぱり催眠が解けてたね」

「ヒサミチほんとお前最高だわ。二重の罠になってるのまで

 見破ってたもんな!」

嬉しそうなヤマモトからバンバンと背中を叩かれて

タナベは苦笑いしながら

「……いや、リュウ。たまたまだよ。

 それに僕は、エンヴィーヌに話があるんだ」

オクカワ・ミノリは本を閉じて立ち上がると

「代わってくれるの?私が居なくても封印魔法は解けないけど」

苛立った顔で言う。

「いや、委員長もここに居て欲しい」

タナベはそう真剣な顔で言った。

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