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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 中二


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148/166

重罪人コンビ


金属壁に囲まれた通路をオクカワ・ユタカたちは進んでいく。

クーナンはブツブツ言いながら触手に足を繋がれて

低い天井に当たらないように先頭を飛ぶ。

「これ、まだ続くんですか?」

ハーツが心配そうに尋ねると、オクカワ・ユタカは頷いて

「背負いましょうか?」

「えっと……いいんですか?」

と言いながら即座に近づいたハーツを背負ったオクカワは

「僕は体力的にはまったく問題ありません。

 グランディーヌさんもそうでしょう?」

グランディーヌは頷くと

「何も消耗していない。むしろクーナンから

 ちょっとずつ魔力を吸ってる。予備として」

クーナンが驚いた顔で振り返り

「おっ、おい!勝手に魔力を吸うな!

 なんか出てきたら……あっ……」

遠くから何かが転がってくる音がする。

それが通路をふさぐような棘付きの巨大な鉄球だと気づいた時には

グランディーヌが前に出て

「任せて」

と言いながら、前方に両手を翳し

「詠唱省略、ファイアボム」

と呟いて、こちらへと転がってくる鉄球へと

三発の火球を放った。

それらと衝突して爆発した鉄球は瞬く間に消し炭になり

着地して羽根で体を覆っていたクーナンが目を丸くする。

「火属性の……上級魔法を同時に三発も……」

「クーナンから吸った力を使った、サンキュウ。

 これからもよろしく」

グランディーヌはポンポンとクーナンの肩を叩いた。

「いやまて……相当吸ってるぞ……あんな魔法、私使えないんだが」

グランディーヌは首を横に振り

「魔力のロスが多いだけ、微かな魔力でも

 あれくらいのものは撃てる」

「お、お前……何者だ……」

グランディーヌはニヤリと笑い

クーナンに先を急ぐように手で促した。




ところ変わって、同時刻、斜陽界。




真っ青な翼を背中に出現させたネールが

ソーラを抱え、そして俺の腕を掴んで

あっさりと、紅葉の高い山脈の頂上を飛び越えていく。

そしてさらに、しばらく高速で飛ぶと、渦状にねじ曲がった丘陵の中心部に

漆黒の穴が見えてきた。

「あれが"渦"じゃ。下の階層に通じておる。

 ただリスクがあるんじゃわ」

ネールは若々しい派手な顔と声で年寄りのような口調で

そう言いながら、穴の近くに着地した。

「うー……寒かった」

「嬢ちゃんすまんな。それにしてもあんた、飛んだことないじゃろ?」

「私は元々羽根がないんだよっ。くしゅんっ」

ソーラはくしゃみをして、恥ずかしそうに横を向く。

ネールは機嫌良さそうに俺の方を見て

「リスクというのは、落ちすぎる危険があるってことじゃ。

 虚無界までは行けんが、その一階層上の暗黒界に堕ちてしまう危険はある」

「ああ……ドゥミネーのやつか……暗闇で塗りたくられた世界」

ネールは頷いて

「わしも、行ったことは無いが間違いなくいきなり飛び込むのは危険じゃ」

 兄さんは、多分ガイドが下の世界で待っとるんじゃろ?

 それと合流した方が良い」

「よくわかるな」

「そのエネルギーは尋常ではない。

 恐らくは虚無王の関係者が逆さの楽土を下っとると見た。

 わしはそういう例を何度も見ておる」

「当たってるよ。下の階層に居るのはサンガルシアだ。元堕天使の」

ソーラが口を開けて俺を見てくる。

「あっ、あれがガイドなの!?逆さの楽土全世界をフリーパスで行き来する

 大悪魔サンガルシアー!?」

ネールは苦笑いしながら

「あやつは、ナイスガイじゃよ。

 元天使の部分が多分に残っとる」

そう言うと腕を組み、少し考えた後に

「兄さんのガイドがサンガルシアならば

 律儀なやつは、必ず下の界に連れて行こうとするはずじゃ。

 つまり、我々が兄さんと一時的に融合すればよい」

「融合?」

「うむ。身体をくっつけるのじゃ。このようにな」

ネールは俺の背中にぴったりくっついて

そしてズブズブとめり込んできた。

「うっわ……気持ちわる……」

ソーラが思わず言ってしまうと

「嬢ちゃんもわしと融合するのじゃ。中途半端だと

 引きはがされるかもしれんから、わしの腹に背中をくっつけい」

「こ、こう……?」

俺と背中半分が融合したネールの腹にソーラが背中をくっつけると

「うわわわわ……あれっ……痛くはない……な」

「よろしい。兄さん渦の中心に飛び込んでくれ」

「いいんだな?」

「ああ、サンガルシアを信じよう」

俺は三人分の身体か融合して重くなった体重で穴まで歩いて

そして一気に飛び込んだ。

同時に真っ青な光が全身を包み込む。

「一応、浮遊魔法をかけておいた。

 落下の速度が遅くなれば、サンガルシアも見つけやすいじゃろ」

「だっ、大丈夫なの?」

「嬢ちゃん、意志を持って存在するということは

 賭けの連続なんじゃよ。嬢ちゃんも斜陽界所属を今、この瞬間に捨てた。

 そして斜陽界の悪魔から追われる身じゃ」

「いっ、言わないでよぉ……」

「追われるのか?」

初耳だ。ソーラはそんなことを言ってなかった。

「うん……これでお尋ね者だね……」

「かっかっか、細かいことを気にするでない。

 追放者でさらに大悪魔であるわしに小悪魔のそなたが名前を付けたんじゃぞ?

 その時点で、逆さの楽土の法を何十と破っておるわ」

「ね、ネール!?」

「そのくらいの方が面白かろ?我らはもはや重罪人コンビよ」

「おっさぁぁぁん……とんでもない奴、仲間にしちゃったみたいだよー……」

ソーラの泣きごとが暗闇に響いた。


しばらく漂っていると

遥か遠くから真っ赤な光が飛んで近づいてくる。

「やっぱり律儀じゃなあ。どれ、久しぶりに挨拶するか」

ネールがそう言った直後に、俺たちの近くに飛んできたサンガルシアは

「……ターズ、お前、やっぱりおもろいなぁ」

ニヤニヤし始める。

一応、紹介しておこうと

「小さいのがソーラ・ドハーティーで

 俺の背中の悪魔が……」

「知っとるわ。綺羅綺羅界とかいうふざけきった世界を創って

 クソ女神に中指立ててたグェイナル王様やろ?まだ生きとったんかいワレ!」

俺の背中でネールが笑いながら

「今はもうその汚れた名は捨て、ネールという。

 さっさと、下の階層に連れて行かんかい。

 我々はもはや、この兄さん、いやターズさんの従者じゃ」

「えっ……私、従者になったつもりは……あっ、どっちでもいいです。

 すいません……殴らないで……」

「サンガルシア、睨むでない。

 この子もわしと同じくターズさんの従者じゃぞ。

 嬢ちゃん、こやつは弱いものを殴る趣味はない。安心せい」

サンガルシアに背中に回られたので何が起こっているのか見えない。

「……まぁ、ええわ」

サンガルシアはため息を吐くと、俺の腕を

燃えていない方の手でガシッと掴んで

暗闇の中を飛びだした。

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