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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 中二


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138/166

憂慮しているけど

見つけた。

ひもじそうな痩せた男女の亡者たちが寄り添って

人波を見ながら何かを語り合っている。

気づかれないように近づいていくと

「……あなたに会えてよかった」

「ああ……」

男の亡者はそのまま事切れた。

女の亡者は涙を微かにこぼしながらナイフで首を切って後を追ってしまった。

二人の死骸を眺めながら

これがサンガルシアの言っていた足元を見ろということか?

俺もこの世界で愛する人を見つけて心中しろと?

真剣に考えた後に苦笑する。

「無いな……違う」

少なくとも俺の納得いく最後ではない。

立ちあがり、人波に混ざっていく。

相変わらず、人が人を喰うような陰惨な景色が繰り広げられている。

騙し合いと暴力と金の応酬だ。

ふと、思った。

行けるところまで行ってみれば良いのではないかと。

騙して奪って陥れて徹底的にやってみた最後は、どうせ分かっているが

悪人の仮面をかぶってどこまでいけるかやってみるか。

俺は手近な亡者のナイフを奪い取り

そのナイフを使ってさらに近くの亡者の喉を掻っ捌き

腰の長剣を抜いて、取り巻きたちに囲まれた

肥え太った巨体の亡者へと突っ込んでいく。




同時刻、竜騎国、王城跡の地下。




目の前には帝都の下にあったような

巨大な金属の扉とその横には指が入れられるような穴の開いた出っ張りが

一メートルほどの高さで壁から突き出ていた。

ファルナが静かに右手の人差し指をその中に入れて

「我、この先に進まんと欲す」

とはっきりと発声すると、扉は奥へとゆっくりと開き始めた。

「オクカワさん、お二人とも、

 この先は魔法や特殊能力の類は完全に封印されます」

オクカワ・ユタカは微笑んで

「僕は既に自ら、期限付きで大半の能力を封印しています」

グランディーヌが頷いて


「ハーツちゃんの罠が作動していないから分かってた。

 能力が減衰すれば出ないようになっているみたい」


「あっ……確かに、他のことに精いっぱいで何も考えてなかったけど

 近づいても苦しくない……」

ハーツから唖然とした顔で見られたオクカワ・ユタカは

「グランディーヌさんの時もそうでしたが

 その僕やジンカン君に対して発動する罠は

 発動を止められるシステムの穴が不自然に多すぎる。

 きっと、本来の目的は違うんでしょうね」

グランディーヌは頷いて

「……だと思う。だからこそ私は憂慮しているけれど」

「えっ……?ええっぇ?」

二人を慌てて見回すハーツをオクカワたちは気にする様子もなく

開いていく扉の中へと入って行く。

慌てて二人を追うハーツの背中をファルナが心配そうに見送った。


三人は青白い金属で四方を囲まれた大きな道を

下へと降りていく。

「僕は念力や疑似魔法の類は使えません。

 つまり、グランディーヌさんの触手が主戦力です」

微笑みながら隣を歩く自分を見下ろしてきたオクカワ・ユタカに

「……あなたは身体的な能力も高いのでは?

 果たして私たちが本当に必要か」

「彼がここに居たら、二人で降りるつもりだったのですが」

オクカワ・ユタカは哀し気に眉を寄せる。

「……ああ、複数人の信頼関係が必要な内容なのか」

グランディーヌが理解した顔で頷いて

「えっ?どういうこと?」

首を傾げているハーツに

「オクカワさんは元々内部構造を知っていたっていうこと。

 だから、ここを最後にまわしたんでしょう?」

彼は苦笑いしながら

「世界中の古代遺物を集め周りましたが

 ここと帝都だけは、どうしても困難なのが分かっていたので

 最後にまわしたのですよ」

「帝都の古代遺物は何だったんですか?」

ハーツが何気なく尋ねると、オクカワは微笑んで

「女神の血です。ターズが一滴残らず被りました」

「ターズは殺したのでは?」

オクカワ・ユタカは自分の腹を指さすと

「圧縮した彼の遺体は、僕が呑み込みました」

ハーツが愕然とした顔をする。




同時刻、場所は変わって竜騎国南東の廃棄された砦。

城門の上。



身体が痩せだしたワタナベが無表情で

六連式の小型ミサイルランチャーを肩に背負い

遠くへとぶっ放しては放って消し

そしてまた同じミサイルランチャーを肩に出現させては撃つ

ということを繰り返している横で

血まみれのユウジが鬼気迫る表情で迫りくる

人型や獣型の悪魔たちを

殴りつつ稲妻で焼き殺し続けている。

「かはははははははは!!ゴン!!楽しいな!」

ワタナベはその声には答えずにミサイルランチャーを消すと

二丁のスナイパーライフに持ち替えて

スコープを一切見ずに、月夜に照らされた

荒れ地へ変わった前方から迫りくる

十メートルを超える巨大な人影へと無表情で連射し始めた。

ユウジが巨漢の背中に翼を生やした悪魔を

ヘッドロックしながら稲妻で焼き殺しながら

「それ、当たってんのか!?」

「当たってるよ。気配がでかいから鬼だと思う。

 ヘッドショットして倒してる」

「よっし!その調子だ!まだまだぶっ殺すぞ!」

「……はいはい」

ワタナベは完全に冷めた目で弾の尽きたスナイパーライフルを落として消すと

漆黒の折れ曲がった筒状の兵器を両脇に出した。

そこから、猛烈な勢いで弾丸を上空へと発射し始める。

「たぶん、もう悪魔二万、人間五体は殺してると思うんだけど

 このまま朝まで持つかなぁ……」

「まだ大物が一体も来てないな!ターシアもモウスミルも

 ドハーティーも居ない!」

ボタボタと空中から撃ち落された悪魔たちの死骸が落ちてくる。

「どうせ消耗するのを待ってるんでしょ……」

「最高だな!!今回こそは死んだぞ俺たち!」

ユウジは下から登ってきて

城門に一斉に群がってきた悪魔たちへと突っ込んでいった。

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