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ニンゲンスレイヤー  作者: 弐屋 中二


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118/166

容疑者

数時間後。

オースタニア首都、ジャンバラード城。

元ブラウニーの屋敷。


うちの応接間に、黒いスーツ姿で髪を黒く染めたオクカワ・ユタカ

正装をして膝の上に刀を置いているドハーティー卿

そして顔をしかめた翼を消しているローブ姿の守護天使ターシア

さらに、緊張した面持ちの司令官代理バラスィ

そして副官のクリスナーまで集まっている。

庭は、オースタニアの警護兵たちで埋まり

トムには一旦家に帰ってもらった。

どうしてこういう状況になっているかアーシィに話すと

ニヤリと笑って

「あ、もう何も言わないでいいわ。

 全部分かってるから。心の中に留め置いていてね。

 この状況は虚無王様の想定内よ。じゃあ、次の作戦といきましょうか」

いきなり作戦が発動して

変装したオクカワ・ユタカが我が家に再訪したのと同時に

高官たちを呼び集めだした。


しばらく黙りこくった時間が続き

アーシィが出したお茶をドハーティーは啜ってから

「……つまり、君は

 ジンカンの殺害にターズ将軍が関与したと疑っているのかね?」

ギラギラした両眼をオクカワに向ける。

彼は微笑みながら軽く頷いて

「彼の最後の痕跡は、この近隣の教会の席で途絶えています。

 残留した魔力の微かな匂いから

 恐らくは魔法で跡形もなく焼死したのではないかと

 僕は睨んでいるのですが……」

俺をチラッと見てくる。

俺は本気で怒った顔をして

「魔法など使えない!人を愚弄するのもいい加減にしろ!」

立ちあがろうとして、アーシィから抑えられて止められる。

ドハーティーは丸眼鏡を右手の人差し指で位置を直しながら

「ふむ……不思議じゃなあ……。

 谷でのジンカンのやり方を見ると、

 焼死するようなミスを犯すかのぉ……」

ターシアを横目で見る。

ターシアは両手を広げて、首を傾げ

「無いわ。あいつは相当に狡猾だった。

 あと、教会の裏手で、これを見つけたんだけど……」

柄しかないナイフを懐から取り出して見せてくる。

ジンカンを刺したニンゲンスレイヤーだ……いつの間に。

オクカワ・ユタカは顔をしかめて、ターシアから受け取ると

「ニンゲンスレイヤーですね。

 ということは彼はこのナイフで刺されて

 それから魔法で燃やし尽くされたことになる」

ターシアがニヤニヤしながら

「だとするならば複数犯よね?

 二人以上、またはもっとか……」

バラスィが緊張した面持ちで

「ターズ将軍含め、わっ、わが軍にそのような作戦遂行命令は出していない。

 恐らくは濡れ衣だ。ジンカンは悪魔たちの刺客によって殺されたのだ」

隣に座るクリスナーも静かに頷く。

「ふーん……」

オクカワ・ユタカはまた俺を見てくる。

俺も呆れた顔を返して

「やってないと言っている。ブラウニーともしばらく会っていない」

オクカワ・ユタカは顔の前で両手を組み合わせると

「だとするならば、次の容疑者は帝都に居るモウスミル大公ですが……。

 直情的な彼女は、"理解"の能力を持つ

 ジンカン君との相性は悪いはず……」

また俺を見てくる。

「……いい加減にしろ。やってないものはやってない」

アーシィが椅子の後ろに立ち、肩を触って抑えてくる。

「嘘か本当かどうか、僕の力であなたの頭の中を見たいものですが

 恐らくは、それをやった瞬間に僕も深い被害を受けるはずです。

 そのくらいの罠を、虚無王が仕込んでないはずがない」

ドハーティーが立ち上がり

「……滞在を伸ばさせていただくよ。

 わしもターズ殿の結婚式に出たくなったわ」

ターシアはやる気なさそうに

「今すぐにあんたを殺したいけど

 この部屋に居る全員でかかっても、それは無理なのが悔しいわ」

そう言って立ち上がり、ドハーティーと雑談しながら応接間を出て行った。

バラスィもクリスナーと立ち上がり

「将軍、監視兵を非武装で数名付けさせてもらう」

「もちろんです。司令官代理」

俺が頭を深く下げると、緊張した面持ちで副官と出て行った。

オクカワ・ユタカはニヤーッと笑みを向けてきて

「では、僕が執事として、仕えさせて頂きます。

 ターズ様、アーシィ様と」

スッとその場から消えた。

アーシィは俺の両肩を「落ち着いて」と言いたいように

ポンポンと叩く。




正午前後、北部の拠点。




焚火を囲んで

ヤマモト、タナベ、オクカワ・ミノリ、ハーツ、グランディーヌ

そしてファルナ王女、さらに少し離れたところにはラーヌィも伏せている。

オクカワ・ミノリが冷静な眼差しを細めて

「……つまり、ファルナ王女は私たちに国の復興を頼みたいと。極秘で」

ファルナが黙って頷く。

「いいわ。私もやりましょう。

 オースタニアでターズに殺されかけた後に

 色々と考えたの。結局、いくら常識を超えた強い力を持っていても

 人々に好かれないと、何もできないってね」

タナベとヤマモトがほぼ同時に頷いた。

ハーツがオドオドと

「あの……私、王宮で出されるような

 美味しいご飯とか食べたいんですけど……」

ファルナ王女はニッコリ笑って

「必ず御馳走します」

「やったー!……あっ、すいません……」

ハーツは呆れた顔をした全員を見て口を必死に抑えた。

代わってグランディーヌが冷静な顔で


「王女様、タナベさんの能力で調べたら

 ワタナベたちが消えて、王城が壊滅して

 名実ともに権力が空白状態になった竜騎国は

 早くも新勢力が四方八方に乱立していて

 戦乱状態になりつつある」


「なっ……そうなんですか……」

ショックを受けた顔のファルナにタナベが冷静な顔で

「ただ、まだ内戦にまではなっていません。

 各勢力が育たないうちに、王女様みんなでイエレンとラーヌィに乗って

 竜騎国を周れば数日で制圧できるとは思います」

「では、申し訳ないのですが、最初の仕事はそれでお願いします」

怯えるハーツ以外の全員が即座に頷いた。

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