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この農業高校は何がしたい?  作者: 皐月
1章 春の息吹 大衆の声
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プロローグ 「カオス! 合格発表!」

 私の名前は天河(あまのかわの)ウズメ15歳。 ここ日を向く月の国、宇賀夜(うがや)皇国の首都、華烏(けう)の都の郊外である沢原区の小さな一軒家に住んでいる。 両親共に同人作家で、母が人狼で父が人間だ。


 そんな私のチャームポイントは人狼ならではの耳と尻尾。 そして母譲りのふわふわとした肩まである長く、藍色の髪。

 それ以外はそこら辺にいる人間の女の子と変わりはない。

 

 今日は首を長くして待っていた憧れの学校法人徳田塾付属若命(わかめ)(かみ)(えい)(きょ)農業高校の合格発表。 

 この校名の由来は近所のライバル校である偏差値80の私立穂柞(ほく)(はら)高校の理事長がハゲのため、それを馬鹿にするため高校の校長が理事長にお願いし、近所の研究所で海産植物を研究していた元博士を高校の教師になって貰い、それでワカメを食べさせたら髪の毛が生えるのかを調べ、証明されたからこの校名になったみたい。 理由はかなり最低でくだらないけど私はここに行きたかったのだ。 


 その理由は一言で表すと単純に生物が好きだから。


 では、この高校は具体的にどんなことをするのかというと。 まず実業高校の為それぞれ専門の学科に分かれているの。

 学科は園芸科、生物工学科と食品化学科、造園科の4つ。 ちなみに私は生物工学科を受けた。  


 それぞれの学科の説明だけど園芸科は主に花壇の整備、農業、そして花装飾を主に行い、生物工学科は発酵食品の制作、微生物の研究と生物倫理を学び、造園科はその名の通り、作図と造園を行う。 食品化学科は食の研究を行い、食品の成分を調べたり、栄養素について研究を行ったりする。 その中で食品を実際に作ったりするの。


 あ! そろそろ朝ごはん食べないと合格発表の時間に間に合わない!

 

 私はお母さんと一緒に百貨店に行って買ってきた。 ピンク色の可愛い丈の短い袴と布が黄色の幾何学的な模様が書いてある衣を着こなし、最後に足袋を履いて、三畳の小さな部屋から居間に向かった。 言っても襖を開けた先だけど。


 襖を開けた先にいたのは台所で朝食を作っている私と同じ髪が藍色で、目が細く、白い衣に紫色の袴を穿いている……私のお母さんだ。

 お母さんは料理に夢中で気づいていないようだった。

 「お母さんおはよう」

 「あら、おはよう。 今日は待ちに待った日ね?」

 お母さんは私が楽しみなのを知っているのか顔は耳をぴくぴくと動かしどうかとコンタクトを取った。 私はお母さんと同じ動作をして答えた。

 「———」

 そして居間のちゃぶ台には一人の作務衣を着こなしている男が座布団に座って紙に絵を描いていた。 が、私に気づき一旦手を止めてこちらに顔を向けた。


 「……おはよう」

 「——あっ、おはよう」

 とても渋い声であいさつした武道家みたいな男性……私の父だ。

 父は一見顔に傷があって、髪の毛は茶色の長髪で体は全体的に大きいためよく友人から軍人さん? と間違えられる。


 けど実際の父は鬼軍曹並みの迫力に似合わないほどとても優しい。 そうだ、お父さんにこの衣装を自慢しよーと。

 「ねぇ、お父さん。 この服どうかな?」

 私はお父さんの眼も前に立ちをくるりんと一回転する。


 「あ」

 お父さんは目を背けた。 ダサかったのかな?

 「ちょっとお父さんなんで目をそらす——」

 「お前、尻尾。 尻尾を袴の間にある獣人用袴の尻尾を通す所から出していないからその…見えてるぞ? 多分」

 「え、きゃーー!!」

私はすぐに袴を抑えた。

 「お父さんのエッチ!!」

 「あらウズメ。 今日も話変わらず可愛いの穿いてるわね」

 「お母さんも見ないでぇー!!」

 私は自分の部屋に駆け込んだ。



  

 「まぁ……、とても似合ってるよ。 やっぱり服装はお母さんに聞くのが一番だな! はっはっは! 」

何だろう、少し気まずい。 まぁ、さっきのは夢、うん。 

 「ありがとう。 そうだお父さん、前から話していたけど合格したら——」

 「もちろん知ってるよ、前から行きたがってた日巫女(ひみこ)大社(おおやしろ)だろ? 予定はお母さんと話し合ってるから大丈夫だよ。 日にちとかが決まればまた教えるよ」

 「やったーー!!」


 私はあのことをすっかり忘れて嬉しさのあまりその場でピョンピョンと飛び跳ねた。

 「こらウズメ暴れないの。 ほら、朝ごはん出来たから食べましょう」

 お母さんは地元でとれた野菜と炊き立てのご飯、最後にみそ汁を私と父の前においてくれた。 お父さんは原稿が汚れないようにと作業場に移した。

 「いただきまーす!」


 私は母が作ってくれたご飯を残さずしっかりと食べた。 母の料理は小中学校時代薄味だとクラスメイトからバカにされてきたけど私はどちらかというと薄味が一番ちょうどいい。 

 「味薄いから醤油いれよ」

 お母さん!?

 お母さん今普通に薄いて言ったよね!?

 「そうか? 俺はそうでもないが……」


 と、言いながらおかずに醤油をかける。



 「お父さん? 何で醤油をかけてるのかな?」

 本当にこの家は色々とおかしい。 

私はご飯を素早く口に書き込み、隣に座って食べているお母さんにごちそうさまと言った後、自分の部屋に戻り、忘れ物が無いか確認した。


 「・・・・受験票よし、水筒よし、携帯電話よし。 ばっちり!」

 私は忘れ物が無いことを確認してそれらを手提げバッグに詰めて家の玄関前に向かった。 その時母と私が家を出るのに気づき、食事を中断して私を送りに来た。 母は私のカバンを見た後壁に掛かってる時計を見ながら。

 「さてと、合格発表は9時からだから間に合うわね」 

お母さんはこちらを向いて申し訳ない顔をこちらに向けた。

 「ごめんねウズメ。 本当は早く原稿書きあげたかったんだけどね」

 「いいのお母さん。 私もわがまま言って忙しい中旅行お願いしたんだから。 でも入学式は絶対一緒に来てね?」

 「本当にごめんね」

 母は私に謝った後、玄関にかけてある傘を私に渡した。

 「今日は一日中雨だから気を付けるのよ」

 「はーい!!」

 「気を付けてなー」

 私はお母さんと居間で作業に入ろうとしている父に手を振って行ってきーすと返して、駅に向かった。 


 高校までの道はまず初めに最寄りの近所ノ電鉄沢原駅の由良線の電車に乗り、5駅目の天下原駅に着いたら豊麗(ほうれい)線に乗り換えて、そこから一駅の治国(ちこく)駅で降り、そこから高校まで徒歩だ。 合格発表の会場は運動場前に掲示される。


 登校時間は約30分ちょっとだからあまり苦痛でないが。 この日は雨で電車とかが混雑しているからとてもめんどくさい、私は普通の人と違って尻尾があるからとても迷惑になる。 まぁ猫の姿をした人もいるぐらいだからいいけどこの辺りでは見かけないからなぁ。


 それに合格発表ということで可愛い丈の短い袴と衣。 そして伝統的な真ん中に穴が開いた円形状の模様がたくさん描かれている布を身に着け。 そして足袋と草履を履いているからだ。 この服はまだ新品で、高校に入学したらこれで登下校したかったから買ったのに今日に限って雨の影響で衣装も濡れ、電車内は加湿と過密でもぁとしているから服も汗でべちゃついてきた。

 

 「はぁ、もう最悪」 


 ————まもなく、東栄に到着します。 お降りのお客様は後に続いてお降りください。

 乗ってる人は大体東栄に降りたため、また人がたくさん乗って混雑する前に席に座りましょう。

 そう思って私は嫌らしい人と思われないように遠くの空いている席に座ったーーー。

 「きゃっ!!」


 だれ!?


 私は今誰かに尻尾を触られた感触がした。 ……気持ち悪い。

 「あの」

 私は一回後ろを向き一つ文句を言おうと振り向いた先に。


 私の顔ぐらいの大きさの紫色の眼をしたタコがいた。 タコと言ってもタコっぽいのは触手があるだけで触手はたったの5本だけだ。

 多分このタコが私のお尻を触ったのだろう。

 タコは迷惑そうな顔をしながら私を見上げた。

 「あの、ボク座ってるんですけど……」

 「ご・・・ごめんなさい」

 タコは子供みたいに目が大きく、声は女の子と違いが分からない中性的な子だった。 私は申し訳ない気持ちになって謝り、別の席に座ろうとしたが。


 —————まもなく出発しまーす。

 「え!?」

 私は辺りを見渡すともう空いている席が無くなっていた。

 「・・・・・・あ」

 私は啞然としたがこの時はこの時。 諦めて降りる駅までたっとこう。 


 立ってても暇だからのんびり外でも見渡しとこ。

 「あの、良かったら座る?」

 目の前のタコはそう私に聞こえる声で言ってきた。 いや、私は別に大丈夫ですと言おうとしたがその前にあっちが私を半強制的に座らせてきた。 触手がお尻と胸、脇、脚に当たった・・・・・・普通に痴漢で訴えれるんだけど別に悪意があったわけではなさそうだから別にいいか。

 私は彼に座らされた後、彼は宙に浮きながら私をじっと見つめた。

 「・・・・・・君、どこの高校の子?」

 「私ですか?」

 「うん」

 「まだ高校生じゃないです」

 「なるほど・・・・・・じゃ、高校の合格発表?」

 「…まぁ……はい」



 彼はそうなんだーと言って私の膝に乗って頭を胸にくっつけてきた・・・・・・訴えよっかな?

 「ふーん、じゃ、予想だけど若命神栄虚高校志望の子でしょ?」

 「・・・・・・えっと・・・はい」

 「やっぱり!」

 彼はそういって私の胸に抱き着いた・・・・・・。

 ———は、恥ずかしい。

 それに今着てるの湿気でべちゃついてるからタコの呼吸が私の胸に直接あたってるように感じるからなおさらだ。


 ——き、気持ち悪いよーー。


 乗客の人見てるでしょ絶対。 だって目の前の男の人こっちをじっと見てるよ? 隣の人だってちらちらこちらを見ながら困ってるじゃない・・・・・・。


 あ、駅員さんがいた。 あの。

 こっちが呼ぼうとするとそそくさに逃げて行った。 マジか、乗客が今現在進行形で被害受けてるのに逃げるんか。


 もう無心になろうと諦めたぐらいになった時。

 「あの、大丈夫ですか?」

 銀髪赤目の女の人が目の前に来た。 女の人は年齢は見た感じ私より二つ年上のように見え、髪の毛はポニーテールにしてまとめ、服は白の衣を身にまとい、灰色の女袴を穿いている。 

 その女の人は私の胸にうずくまってるタコの頭を掴み、無理やり引きはがし、タコをゴミクズの眼差しを向けた。


 「ねぇ、何してんの?」

 「ぶっ!? チカ!?」

 タコとこの女の人は知り合いらしく、チカと言われた女の人はじっとタコを見ていた。

 タコはもじもじしながら何故痴漢してしまったのかの説明をした。

 

 タコが言うにはに私は姪っ子と同い年みたいで、うっかり同じ感覚でやってしまったらしい。 何してんのよ本当に。

 そのあとチカさんがものすごい剣幕で怒って・・・・・・電車内だよ? 普通電車内であんなに大声で怒る? って突っ込みたくなるようなことを二駅ぐらいやって、気づけばタコが泣き始めて周りの乗客はもう無心になったりとーーー色々とカオスでした。


 あの後この子がなきじゃくりながら謝った。 

 --まぁ、この子の顔を見れば本当に悪気はなかったみたいだし・・・・・・許そうかな? これが本当に悪意がある人ならこんな堂々とするはずもないからね?。

 私は大丈夫ですと言ってタコの頭を優しくなでると一瞬顔が明るくなった。 可愛い!!


 このあとチカさんはタコをみてため息をついた後、申し訳ない顔で私の方を向いた。

 「あの、これは到底許されない行為なのは分かるけど・・・・・多分彼も悪気はなかったはずーーー」

 「いえ、もう別に気にしてませんのでいいですよ」

 チカさんは本当にすいませんと頭を何度も下げたが別に電車内でしなくてもよかったんじゃない!? 乗客の人めっちゃ見てるよ!?



 ———次は天下原です。

 あっ降りないと!?


 「では、私はちょっと用事があるので……」

 「用事?」

  チカさんがそういうとタコが私のことを説明した。 いや、個人情報漏らさないでくれます?

 「そう。 なら私たちも高校に用事があるので一緒に行きませんか?」

 チカさんはそういって笑顔で私の手を握った。


 えーとどうしようかな? ……まぁいいか。

 「はい、喜んで!!」

 私は笑顔で答えて高校に向かった。


 そのあと電車の中でいろいろ話していたらあっという間に治国駅に到着した。

 「んんんーーー!!」

 タコは駅から出た後、体を伸ばしていた。 と言っても触手だけど。 そのあとタコはチカさんの頭の上に乗っかった。 

 「今更だけど君の名前は?」

 「あ、そういえば聞いていませんでしたね」

 タコの指摘にチカさんも気になったのかこちらを見つめる。 


 「えっと、私の名前は天河ウズメと言います」

 「ウズメ……可愛い名前ね」

 チカさんはそういうと私の頭を撫でた。

 ちょっと照れ臭い。


 あの後私とチカさん、タコはのんびりと話しながら歩いていた。 どうやら二人は高校の先生らしく、今日は合格発表の司会を務めるらしい。 そしてどんな授業やら実習の説明をしてくれたが……。


 私、まだ、合格してない。


 治国駅から高校までの道のりには外食店が多く、そしてゲームセンターとコンビニが乱立している。 そしてバス停とタクシー乗り場もあってアクセスはとても便利だ。 この辺りは都であるケウより離れてるのにこんなに栄えてるのは歴史のある若命神栄虚高校のおかげだろう。 現に地元の人たちからはかなり真面目と評価されている。 


 「まぁ、この高校偏差値30もないのにみんな真面目なんだよな~~」

 タコが気になることを言ったが真実だ。 イコール私は普通のみんなと違い頭が壊滅的に悪い。 チカさんはそんなことないよーと言うが顔がこわばってる。

 「まぁ、言ってみんな入学式のとき髪の毛ピンクにリーゼントで来てるけどね」

 「あなた……それは言っちゃだめよ? それを言ったらみんなバイクでヒャッハー! て叫んでるじゃない。 在校生が」


 いや、それほんと!?


 「あの、今のは」

 「実話」

 「あ、あ~~」

 チカさんとタコが真顔で答えた。

 何だろう、聞いてはいけないことを聞いてしまった気がする。 今更だけど学校紹介で見学したときみんな綺麗な身だしなみで髪型普通だった気がー。 もし本当にそうならなじめるか心配になってきた。

 

  そんなノリで会話を続けてたらようやく高校に到着した。


 「あれ? 掲示板は?」

 私はチカさんたちと会場に言ったが、誰もいない。 そういうとタコがあ! と叫んだ。

 「ごめん、ホームページに変更のお知らせを載せてるの言い忘れた!!」

 「え?」

 私はタコの言ったことが本当か確認するために、試しに携帯電話でネットを開いて学校のホームページ見てみた・・・・・・そこには。

 「若命神栄虚高校合格発表のお知らせ。 本日は雨の影響で当初の予定でしたグラウンド前に張り出す板に書かれてる受験番号が雨で流れて番号が消えてしまったので。 会場を体育館に変更し、9時より舞台の背景にプロジェクターを映し出しますのでお間違えの無いよう……よ・ろ・ぴ・く♡ 追記今日の晩御飯はお寿司でした。 校長チトセ 」


 私は携帯に映し出されてるを時間を見て、8時55分を過ぎているのを確認した。 この学校はとても広く体育館までかなり時間がかかる。 私は雨の中傘から手を放し、その場にぺたんと倒れた。 その時タコが私の頭を叩いてこういった。

 「大丈夫、皆だれ一人来てないから。 むしろ君が一番」

 マジかぁ。


 「まぁ、こんな高校だから対策もしてるよ。 はい、ネットで公開」

 タコはチカさんから携帯を借りてそのサイトを開いた。 いや、なんで用意してるのよていうかそんなページあった? 

タコはそんなことお構いなしに話を続けた。


「今から29年前、誰も来なくてピンチだったけど、その時のプログラムに精通している情報処理のつい最近まで海草食べたら毛が生えると勘違いしていた先生が大急ぎで特設ページを開いて対応した時からこの伝統を続けてるんだよ~。 そして君は29年ぶりにきちんと合格発表の会場に来た生徒だよ!」

 タコは笑いながら頭をかいてるが笑い事じゃないでしょ。 その時チカさんがタコから携帯を返してもらい私の前にしゃがんでにっこりとこちらを向いた。

 「ウズメちゃんの受験番号は?」

 「……4565です」

 「よかったじゃない、合格よ」

 

 やった、合格だ・・・・・・複雑な気分だけど。 

 タコはまぁまぁと言って私の手を握った。

 「合格おめでとう。 それと謝ることがあるんだ」

 「何?」

 チカは立ち上がってタコに先に行ってるねと伝えた後、校舎に向かった。


 「本当は掲示板で見れたんだけど調子に乗って筆で数字描いたら雨で流れました……てへ」

 タコは申し訳ない気持ちがあるのかと疑いたくなる顔でこちらを見ていた。

 「それに言っても来ないの想定内だから体育館には何も用意してないしね」

 ふざけるな。

 「それと!」

 タコは勢いよく飛びあがった。

 

 「ボクの名前はチトセ! この高校の校長!」

 「校長……先生」

 私はあっけに取られてると目の前に降りて手を握ってくれた。

 「これからは我がワカメ食ったら髪生えるは嘘高校の生徒として誇りをもって過ごしてね」

 「……はい!!」


 ————校長先生……校長先生……理事長が休憩中に袴を覗こうとしたことについての説教をするみたいなので今すぐ理事長室に来てください。

 え、校長先生?

 「お、おおおおと呼び出されたね」

  ……セクハラ校長はそういうと私から離れて。

 「君の学校生活はこれからだ!! 思う存分楽しんでね!!」

 ……訂正。 やっぱりこの校長気持ち悪い。


 私は校長先生の言葉を聞いて立ち上がり。


 「この高校本当に行ってよかったのかなぁ?」

 私は純粋にこう思った。




*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * 


 ウズメが帰った後、毎晩定番になってきた若命神栄虚高校に騒がしいOB連中が侵入した。 彼らは男子生徒一人、女子生徒二人でどちらも髪型はピンク色のリーゼントで顔はバリバリ不良みたいないかつい顔をしている。 この高校には制服はないのだが彼らは独自の制服? として男子は紫色の袴と青色の衣を着て、女子生徒は色は男子と同じミニ袴に衣を着るのだが、不良OBにかかわらず全世界の風紀委員も絶賛するかのようにきっちりと着こなし、バイクに乗ってやってきた。 


 「ヒャッハー!! 入学式だぜぇ!! 新入生ども元気かーーーー!!」

 男子生徒は目に紫色のメイクを付け、女子生徒は全体的に厚化粧でやってきた。 共通するのはみんなクラッカーを持ってきたところ。


 「まーた貴方たち?」

 そんな彼らが来ることを想定していたのかチカが呆れた顔で歩いてきた。

 「あ、理事長こんばんは! 新入生たちが楽しい学校生活になるよう便覧と部活紹介、最後にお祝いのケーキを買ってきました!!」

 この連中のボスが笑顔でケーキの入った箱を出す。


 チカは右手頬を乗せながらため息をついた。

 「入学式は2週間後よ」

 「あ、すんません間違えました。 よかったらこのケーキ校長先生とどうぞ」

 そういって男子生徒はチカにケーキを渡した。 チカはありがとうと言って彼らを正門前まで見送る。

 「今度は間違えないようにね?」

 「はい! 30回目の正直でもう大丈夫です!!」

 「本当かな~?」

 彼らはチカにご迷惑をお掛けしましたーと言った後帰っていった。 若命神栄虚高校は色々と伝説を残した高校だがこれは今に始まったものではない。

 

 

 


 



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