日常1
いつまでも二人で抱き合っていても仕方がないので
「そろそろ起きて朝ごはんでも食べませんか?」
「私はずっとこのままがいいですが、そうですねお腹も空きましたしご飯にしましょう。
台所お借りしますね?」
そう言い彼女は台所へ行った。
「あのー、冷蔵庫に何も入ってないんですけど、、」
「出前かコンビニどっちがいい?」
「ダメです!栄養が偏ってしまいますので今からスーパーへ行きましょう!!」
「しょうがない行きますか!」
「はい!!」
「詩音さんは何か食べたいものはありますか?」
「んー、オムライス」
「ふふっ、可愛い」
そう言って彼女は腕を組んでくる。
やめてくれ、周囲からの嫉妬の眼差しが痛い。
「あのー、その、当たっているので離れてくれませんか?」
「あててるんですよ」
と妖しく笑う。
うん、ダメだ。
全力で叫びたい。
惚れてまうやろぉぉおお。
帰ってきて彼女の手料理を堪能した俺は二人でこれからどうするかを話し合った。
まず、会社では仮の間は
二人が付き合っている事を内緒にすること。
これは俺が説得した。
彼女からはこの条件を飲む代わりに
名前で呼び合う事を約束させられた。
あとは何かあればその都度約束事を決める事にした。
帰る際に連絡先を交換した。
美玲は俺の最寄駅から一駅離れたところに住んでいるそうだ。
美玲を駅に送り届けると早速連絡がきた。
『今家に着きました。今日はありがとう。また明日ね』
『こちらこそありがとう。また明日』
次の日からは特にいつも通りの日々で朝起きて会社へ出勤して終電間近に帰ってきての繰り返しだ。
会社で美玲の姿をよく見かけるようになったぐらいだろうか。
毎日おはようとおやすみの連絡はとりあってはいるが会えてはいない。
ある日の帰りの電車で隣に美玲が座る。
肩に頭をあずけてきて小さな声で
「今日詩音さんの家にお邪魔させていただきます。ダメですか?」
やめてくれそんな上目遣いで言われたら断れないよ。
結局、時間も遅かったので適当にご飯を済ませて自宅に帰ってきた。
「お風呂、一緒に入りますか?」
ななななにを言ってるんだこの人は
また俺をからかって楽しんでやがるな
その喧嘩かってやろうじゃないか!!
「はい、もちろん別々で」
うん、ヘタレとか思うなよ?
でも堂々とスマした顔で言ってやったぞ。
「顔、真っ赤ですよ?」
くーやーしーいー
「じゃあ、お先にどうぞ」
「お言葉に甘えて先にお風呂いただきますね」
ダメだ、シャワーの音が生々しくてソワソワする。
こういう時どういう顔で待ってたらいいんですか。
誰か教えてください。切実に。
そうこうしているうちに、
美玲がシャワーから上がってきた。
「お風呂いただきました。次どうぞ」
「あぁ」
彼女が入ったお風呂・・・
ダメだ彼女と関わってからどんどん俺のキャラがおかしくなっている。
そこで初めて火照った彼女の顔を観てドクンと心臓が跳ねる。
とにかく色気がすごい。
「どうかしましたか?」
おっといけない見すぎた。
「いや、あまりに綺麗だったから」
おいー!!俺は何を口走ってるんだー!!
彼女の顔が見れないよ。
俺、絶対顔真っ赤だよ
チラッと彼女の方を見てみると耳まで真っ赤で目をパチパチしている彼女。
俺に見られていると感じると
「もう我慢できません!!」
と彼女が胸に飛び込んできた。
最初は戸惑っていたが自然に彼女の腰に手を回す。
「ずっと我慢していたんですよ?せめて顔だけでも見たくて会社で詩音さんが居そうなとこに行ったりしていたんですよ?」
いつから俺はこんなにチョロくなったんだ。
ドキドキが止まんねー。
そして何だろうこの安心感。
「と、とりあえず落ち着いて?」
彼女をなだめて落ち着かせると
「すいません、少し取り乱してしまいました。ドライヤーかりますね。」
ドライヤーを終えた彼女は、
綺麗なさらさらの長い黒髪で俺の大きめのジャージをきてドライヤーを終えた彼女はやはり神々しさすら思い出させるほどの美人だ。
二人で座ってテレビを観ていたが睡魔には勝てず寝る事に。
予備の布団を敷き別々に布団に入る。
ささやかな美玲からの抵抗はあったが、
なんとか別々で寝る事を説得した。
部屋を真っ暗にして、布団に入るとすぐにウトウトとし始める。
「もう寝ましたか?」
と顔の横で聞こえたような気がしたが睡魔が限界だった為、そこからの意識はない。
朝、柔らかくていい匂いの抱き枕のような感覚に違和感を覚えて目を開けると、
数センチ前には綺麗な彼女の顔が。
なんでこんなに安心感するんだろうな。
別に女性経験がないわけではないが、
味わった事のない安心感の正体を
彼女の顔をジッと見ながら考えてみる。
すると彼女も目を覚まして
微笑みながら
「おはよう」と言う。
あー、俺はこの人のことが好きなんだ。
この安心感をずっとそばで感じたい。
素直にそう思った。
ずっと眺めていたせいか不思議そうな顔で彼女が俺の顔を覗いてくる。
どれくらい見つめ合ったまま抱き合っていただろう。
意識すれば恥ずかしくなってきて、
「なんで俺の布団に美玲が?」
「昨日、詩音さんの寝顔を見ようと近くで見ていて気がついたら寝てしまってて」
フニャっと笑いながら彼女は言う。
あー、これは重症化するのは時間の問題かも。