第5話 施設
戦闘はもうちょっと待ってくださいね
「「ほえー…。」」
2人してポカンとする。
「なんだこのデカさは!!」
知識都市ナレグロット、その中枢である國立図書館の入口の下で思わず叫ぶ。
「颼彌さん、通行の邪魔になってます。」
俺よりワンテンポ早く正気に戻ったコレットが言う。
「ああ、中へ入ろう。」
門番に冒険者カードを見せて、中へ入る。
だだっ広いロビーの奥に、受付があり、受付の右横に螺旋階段とスロープが続いている。
受付でもカードを見せ、螺旋階段を登る。通常の建物の2F分ほどの段を登ると、次のフロアに出た。そこには見慣れた図書館の光景があった。
「ええっと、2Fだから、小規模特集型図書フロア…。」
「小規模…。」
「え?このくらいならカラヤダの町にもありますよ?」
「世界が違えば常識が違う。当たり前か…。」
このフロアだけで元の世界の図書館1つに相当する大きさだ。それが小規模と来たものだから絶句するのも無理はない。
「それは置いといて何Fまであるんだ?」
「えーと、31?」
「…。」
「颼彌さんのいた世界では当たり前ではなかったんですか?」
「あって4Fくらいじゃないかな、これくらいのが。」
「なるほどー。」
「それで魔法関連の本はどこにあるんだ?」
「案内板を見てみましょう。」
そう言って歩くコレットの後を追う。ちなみに中に入ってからの声は全てひそひそ声である。当たり前だよね。
「えーっと案内板案内板っと、あった。」
「どれどれ、うん、読めん。」
「えっ…あっ。」
白障石を取り出すコレット。こちらに手渡す。その際何故か多数の視線を感じたが気のせいにして案内板を見る。
「えーとなになにー?料理、絵画、音楽…。このフロアじゃなさそうだな。」
「次のフロアに行きましょうか。」
入ってきた場所と対角線上にある螺旋階段を登る。正確には半円階段とでも言うべきだろうか。この建物の外見は螺旋階段が巨樹に取り付けられた様な見た目なのだが、中はフロア毎に半円状の階段が付いているだけの様だ。
「さて、このフロアはどうでしょうか。」
案内板によるとこのフロアにあるジャンルは、雑学全般、らしい。生活雑学、学校雑学、家庭雑学、…と細分化されている。次のフロアに行こうかと思ったら、コレットが早足である棚に向かって歩いていってしまった。
2-110-1837#82 魔法雑学
追いついた先にはこんな表記の棚。あの案内板をあれだけの短時間で全部見たのかぁ…。
無言で何冊か取り出すコレット。
「どうするんだ?」
「…。」
声には出さずにある場所を指さす。
↠声量制限区画:1↞
俺はジェスチャーで紙とペンの様なものを出させた。
[『声量制限区画:1』って喋っちゃダメなのか?]
[いえ、そんなに厳しくはありません。ですが颼彌さんは魔力が多くかつ制御の方法を知らないので喋らない方が賢明かと。]
なるほど。少し傷付くが納得だ。
誘発等の可能性を減らしておこう、という事らしい。
[それはさておき、せっかくめぼしい本が見つかった訳ですし、読みませんか?]
ほら、戦闘技術知らなきゃ戦えないでしょ