第11話 呪文
決闘シーンの続きです。
「おいおい、逃げてばっかかよ。」
「攻撃しろー。」
観客が騒ぐ中、鈍化、重力、地震の魔法を掻い潜りながら考える。最初の魔法の蒸散、こちらの楯魔法の破壊、そして巨大化。詠唱が、ほとんどないのもおかしい。いや、正確には…
「ーミニフリットー」
快音。原因は氷柱の衝突。詠唱しないなら、
「なぜそんなに魔法に威力があるんだ?」
「代替詠唱も知らないのか。興ざめだ。そんなので俺に挑むなよ。」
いや、挑んできたのお前だし…。
「"我が身に依りて…」
「そうか!!」
特殊呪文!!
「"我が魔力を以て彼の者の術の我が身に掛けしを打ち払え"ーフィークヒールー」
途端に躯を駆け巡る痛みに苛まれる。なぜだ。
「うっ!?」
「ふっ」
トウヤが詠唱を辞めて嗤う。
「教えてやろう。俺が掛けたのは反転呪文。お前の呪文は1部が必ず反転される。」
なるほど。ぐっ…。
「"蝕め"ー輝鎚ー」
痛みが引いていく。
「なっ!?自傷呪文とか聞いた事ねえ!?」
「当然だ。俺が創ったからな。もしもに備えててよかったぜ。」
「魔法を創る…だと…?異世界から来てすぐのお前が!魔法を使いこなす!だと!?そんなことあってたまるか!!」
「まだ使いこなせてはねえよ。」
「知るか!!"我が身と力を捧ぐ。〈死刻者〉ドルシャよ、我が敵に死を与えよ!!"ーグレムル・ベノムー」
禁呪だ。高速猛毒特大魔法攻撃。
「颼彌さん、禁呪です!!避けてください!!」
「あれ、猛毒の…。」
「おい、あれはやべえだろ…。」
観客がざわめく。大丈夫だ。奴の言う事が本当なら、この攻撃は潰せる。
干渉の呪文。
「"カンヌラ ラ ルプト エル ウルラ"ーラウルター」
まるで死神のように襲い来る闇が、途端に見る影もなくなる。
バタッ
術を放ったトウヤが、逆に倒れる。
「勝負あり!勝者空間颼彌!!」
審判が宣言し、高位魔導師と思しき者達が駆け寄る。
禁呪を詠唱したのだから、当然と言えば当然だ。
"我が身と力を捧ぐ"なんて、間違っても詠唱してはいけない。
いつの間にか来ていたセージが、涙を流しながら治癒魔法を使っている高位魔導師的存在(まだそうと決まった訳では無い)と話をしている。
俺は無言でその場を立ち去り、決闘場の外でコレットと合流した。
はい。みんな大好き禁呪様の登場シーンでした。干渉呪文は相手の魔力の放出を阻害するものです。禁呪には魔力を放出し続けるタイプのものが存在するので、そこを突くことで死神の攻撃を止めた感じです。
より詳しく説明が欲しい方は感想等に書いてください。「分からんわボケ」