第10話 馬鹿
やっとマトモ(?)な戦闘シーンです。
宿の窓辺から柔らかな陽射しが漏れる。閉じているまぶた越しにその光が伝わって来て目が覚める。
「おはよう。」
「颼彌さん、おはようございます。」
2人部屋だったので既に起きていたコレットとそのまま挨拶を交わす。彼女は既に布団を片付け身支度も整えていた。
「おお、早いな。」
「行きたいところがありまして。」
「おお、どこどこ?」
「魔法練習場です。昨日のやり取りを見て、私も魔法を使った戦闘をしてみたくなりました。」
「うーん…。」
コレットが行きたいところならしっかりした所だろうし…
「まあ、行ってみるか。」
ドタドタドタ。コンコンコン。そそっかしい足音とノックの音。
「空間颼彌、コレットのペアはいるか?」
「何か?」
「ナコ便の特配だ、出来るだけ早く決闘場に来いとのこと。」
「はぁ!?」
「なんですって?」
[挑戦状 空間颼彌!俺と決闘しろ!! トウヤ]
「この世界では決闘を申し込まれたら受けなければならない決まりです…。」
「分かった。すぐ行こう。あんな奴二度と喋れなくしてやろう。」
カツアゲしといて失敗したからって果たし状とか…!
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「遅かったな。待ちわびたぞ。」
「そっちの不手際で呼ばれるこっちの身にもなってくれよ。詫びるのは俺にだろ?」
「こぉん…まあいい。ここでお前を倒せばあの件は帳消しになるんだ。お前には痛い目見せられたからな。せいぜい覚悟するんだな。」
決闘場なる場所で数多の観客の前で言うべきことじゃないと思うのだが…。
「コホン、双方準備はよろしいか?」
「時間だ。本気でかかってこい。」
「まだ魔力の制御が完璧じゃないが、全力で倒すよ。」
「それでは、始め!」
「「"我が魔力以て火球を放出せよ!"ーフィラールー」」
「"我が血を代とし、彼の者の術を反転させよ"ーギルグレアー」
「!!?」球威は遥かにこちらの方が勝っていたはずだ。
それが衝突した途端に蒸散した。何故だ?
「黙っている暇なぞ無いぞ!ーフィラールー」
「っ!"我が身を守れ"ークァトンー」
手強い。余所事をする間もなく魔法を打ち込んでくる。
「ーヒオリー ーフィラールー ーストネクルシュー」
まとめて対抗する。
「"我が魔力を以て光の楯を生み出し、我が敵の術を弾いて見せよ"ーメガフリットー」
トウヤは詠唱をあまりしていない。最下級魔法3つくらいならこれで止まるだろう。
俺が生み出した光の楯と石礫、氷弾、火球が衝突し、
--パキィン
楯が割れ火球が飛んできた。
「んなっ!?ーミニフリットー」
魔法の発動には多少時間がかかる。その時間は魔法の威力によって異なるので、咄嗟にサイズの小さい楯を呼び出す…はずが、先程発動したはずのメガフリットと同じくらいの大きさの楯が出現した。
「どうなってんだ!?」
「いいぞ、もっと混乱しろ…。」
トウヤが何か言った気がした。
「そんなに魔力を消費していいのか?もっと節約しないと、枯渇してオレサマにやられっぱになるぜ?ーデプレスー ーグラドー ーアズクレクー」
確かにそうだ。魔法をあの速度で打ってくる相手を前に、魔力の枯渇なんかしたらいいサンドバッグになるだけだ。
戦闘はまだまだ続きます。




