第1話 転移
なんとなく思いつきと憧れで元学生が作ったものです。諸々性格の都合上、変なところとかあると思うので、ご指摘等あれば発言していただけると嬉しいです。文量は多いと思うので、適当に興味があれば、程度で読んで頂ければ幸いです。
死ぬ夢を見た。車に轢かれて死ぬ夢を見た。
いまどき使われているのが珍しいであろう目覚まし時計のベルが鳴る。
(もう朝か)
支度をする。朝食を食べる。
(だるいな)
玄関を出る。またいつも通りの1日が始まる。
アスファルトの地面にコツコツと音を響かせながら足を前に出す。何でもないことだ。ただ歩いている。目的地である学校まで、ただ無心で歩く。下を向いて。
学校に着く。教室で分かりきったくだらない授業を受ける。帰る。そんないつも通りの1日を過ごす。
…筈だった。
ギャリギャルガリゴリ
(なんか知らんが煩いな)
ガラガラグリゴリ
(一体何なんだ)
ボロボロバキッ
流石に前を向く。
途端に硬直して動けなくなる。
付近の家の外壁を削りながら、物凄い勢いでこちらへ白い車が突っ込んでくる。
次の瞬間、もう意識は無くなっていた。
パチッ
「ぅう…」
「×◯△#□ #*&○◆■♢!」
「おあっ!?」
ゴチン
「って~」
起き上がった瞬間、こちらを覗き込んでいた少女とおでこをぶつけ合う。
まさかこんなお約束が現実世界で起こるなんて…
(それはそうと、この少女は一体?)
「ここは?今はいつで、あなたは?」
困ったことに、携帯も腕時計もどこかへ消えている…
「?」
「だから、ここはどこ?今はいつで?あんた一体誰なんだ?」
俺は土地勘と物覚えはいいので、1度行ったことのある場所なら覚えられるはずなのだが、見覚えの無い街、かつ知らない相手を見たら聞かざるを得ない。
「…」
目の前の女子は口の前で手をパタパタと動かし、首をかしげて見せた。
(もしかして、日本語が通用しないのか?)
スウッ「Can you tell me what time is it? Where’s here?And what’s your name?」
「???」
うぅむ、困った。この2カ国語以外は話せないのだが…
考えに耽っていると、ふいに少女がどこかへと走り去った。
「おいおい、警察でも呼んでくるんじゃないだろうな…」
少しして、真ん中に白い石のついた首輪のようなものを持った例の少女と、それに連れられてやって来たらしい、婆さんが戻ってきた。
「儂の言葉は判るかの?」
「あ、ああ判る。がまた何故急に言葉が伝わるんだ?その娘には伝わらなかったぞ??」
「この子が持つ腕輪のせいじゃ。埋め込まれた石は白瘴石と言うてな。力を読み取り、分析する能力を持っておる。」
(力を読み取り、分析する能力、か…)
「つまりここは魔法があるって事か?」
(言葉に力というのは呪いあるいは魔法と相場が決まっている。でなければそれについて知る必要があるしな…)
「その通りじゃ。召喚されし者であるおぬしは魔法を見たことはないだろうて。」
「召喚されし者?」
「異世界イドニアから喚び出された者の総称じゃ。」
「魔法を使う方法を教えよう。コレット」
「はいお婆様」
少女は腰にかけたポーチから植物を取り出した。
「この植物に何か言葉をかけてみて下さいませ。」
「何でもいいのか?」
「はい。」
(何なんだ?)「あー」
植物はクエスチョンマークのようにその形を変えた。
「おわっ!?」
婆さんが言う。「次は枯れろと思いながら言うてみぃ。」
(なんか知らんが)
(枯れろ)「あー」
植物はみるみる萎れていった。
「コレット!!手を離しな。」
「っ!!はいお婆様。」
手を離し、こぼれ落ちた植物…否その残骸を受け止めた大地は100m四方ほど砂漠化した。
「な、なんだこれ!?」
「おぬしの魔法じゃ、いや正確には魔力の顕現じゃ。」
「しっかり魔法にするには使い手それぞれの詠唱を必要とする。」
「一体…。」
「おぬしの召喚された理由は、単刀直入に言うと、魔王討伐じゃ」
「はぁ…いや、はぁ!?」
「花に対しての魔力の解放が地面にまで響いたのはおぬしの魔力の大きさと調節の下手さからじゃの。まあその内慣れるわい。」
「いやその内って!!」
「さて、そろそろ互いに自己紹介をせねばな、儂はシェファ•トルリエ•キィア、ただのばばあさね。シェファとでも呼んどくれ。」
「お婆様!!その言い方は如何なものかと。私はコレット、そこにおわすシェファの孫にございます。」
(おわす??)
「あ、俺の名前は空間颼彌、えっとこっちの世界にあるか分からないが、学校という施設に通っていた。」
「自己紹介も済んだし、そろそろ本題と行くかね。」
シェファの話だと、この世界には元々魔物たちが生息しているのだという。町中でも外でも、人間と共に仲良く暮らしてたんだそうな。ところが近年、魔物の中から魔王とその配下を名乗るものが現れ、魔物が凶暴化しているのだそうだ。人間はそのものたちを討伐しに出たが、返り討ちにあい、この世界の者では太刀打ちできないと悟り、呪術に長けたこのサース村に何度も召喚の儀をさせているとのことだ。
「何度もってことは他にもいるのか。」
「様々おるよ。ダンジョンに潜り続ける者、街や村などを護る者、逃げ帰りこっそり暮らす者など。」
「向こうに帰った奴はいないのか?」
「今のところはの。魔王のせいで帰れんようじゃ。」
「なんだよそれ…。」
「まあとにかく魔王を討伐して欲しいのじゃ。よろしく頼む。」
「と言われてもまだ全然戦えねえぞ?」
「じゃからまず知識都市ナレグロットへ行かれよ。」
「知識都市ナレグロット?」
「あすこの高塔のところじゃ。」
「知識と生活、戦闘の術を得ることが出来よう。」
「分かった、とにかく行ってみる。それじゃあ。」
「待たれよ。コレット。」
「はい。」
「この子をついて行かせる。生活と分析は保障しよう。」
こうして俺の冒険は幕を開けた。
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