<最終話>今日はエンディングの日ですが、ヒロインは相変わらずのぼっちです。
今日はいよいよエンディングの卒業式。
卒業プロムでは自分の瞳の色をイメージした髪飾りとドレスを着るのが主流。
姉妹がいる場合は相手の瞳の色をイメージしたもの。
私の場合は碧眼なので、水色のドレスにした。
マナー的な意味で、卒業生はビビッドカラーを下級生はパステルカラーを着ることが多い。
自分や姉妹の瞳の色にもよるけど。
ヒロインちゃんはブラウン系の瞳なのでベージュとブラウンのグラデーションのドレスを着ていた。
やっぱり誰も攻略しなかったんだなぁと思った。
それでも一応壁の花としてヒロインちゃんが踊りに誘われないか見張った。
でも、ヒロインちゃんも普通に壁の花だった。
うーん。やっぱりヒロインちゃんも私と同じノンケのぼっちなんじゃないかな?
卒業プロムではチョコレートやガレットなどの焼き菓子がつまめるようになっている。
攻略対象じゃない先輩方も男装の麗人として踊っているので眼福だった。
いろんなものを美味しく頂いて楽しい一日だった。
そして私の悪役令嬢としての最後の幕が下りたのだった。
***
私はいま、卒業式のために着物と袴、そして茶濃なブーツというハイカラな格好をしている。
基本的に流行りや工夫を凝らしたデザインは卒業生用ということになっているので、下級生は流行しすぎてもはや定番となった矢絣模様の着物に海老茶色の袴が多い。私もそのうちの一人。
卒業生とわかる一番のポイントは髪型。
攻略対象者はもちろん、他の卒業生も大きなリボンや水引きで作った花などを髪につけている。
下級生は髪飾りを使わないのがマナーだ。
妹がこの髪飾りを姉の髪の色をしたリボンを使って作るのが最近の流行りのようだ。
ところどころにそうなんだろうなーという風景をみる。
今日が姉妹にとっての最後の日になるのだから。
卒業式の式典が始まり、そして終わった。
在校生でつくる花道を通り、卒業生は旅立っていった。
(本当に私の悪役令嬢生活も終わったのね。)
記憶を取り戻してから、悪役令嬢としてして華々しく散ることだけを楽しみに生きてきたのにこれからそうしたものかなぁ。
ぼんやり思いながら、卒業生が出ていき、在校生も戻っていった校庭で一人で佇む。
桜の花が舞い散ってとても綺麗だ。
「あの・・・」
そういってかけられた声に振り向く。
そこにはヒロインこと一条 薫子がいた。
「なっ、なにかしら?!」
突然の接触に戸惑いつつも、悪役令嬢感を精一杯だしてみた。
「あの、いつも助けてくれてありがとうございます。よかったらこれをもらっていただけませんか?」
そういって渡されたのは茶色のリボンで結ばれた紙袋だ。
「遅くなったんですけど、いつものお礼にお菓子を焼いてきたんです。甘いものがお好きな様子だったから・・・。」
そういって渡された紙袋からは甘くて良い香りがする。これは私がバナナマフィンやオレンジマドレーヌの香りでは?!果実と焼菓子の組み合わせって最高だよね!!
でも、本当にもらっていいのだろうか?
私が迷っているとヒロインちゃんが私の手に紙袋を渡してきたので受け取る形になった。
「い、いつものお礼ってなんのことかしら?」
とりあえず聞いてみる。私、結局なんにも悪役令嬢らしいことできてないし。
「えっと、体調崩したときや落し物を見つけてくれたとき、他にも男の人に絡まれて困っているときに先生に声かけてくれたのって鏡宮さんだってききました。ほかにもお茶をたてられなくて誰にも気づいてもらえないときにお茶をくれたのも鏡宮さんだってきいて。私が一人で困ってたときに先生が助けてくれてたんですけど、全部鏡宮さんが最初に声をかけてくれてたんですよね。森で迷子になったときも声をかけて案内してくれたし。」
そういってヒロインが悪役令嬢の手をぎゅっと握る。
ち、違う!!!
いや、違わないけど!!!!
本当はそれを攻略対象がして私が文句を言うためだったの!!!!
「あの、この学院では仲良くなりたい人に自分の瞳の色をしたリボンを送るって聞いて。受け取ってもらえてよかったです。」
ええー?!
それって他学年の姉妹間でするんですけど?!
っていうかこれリボンを渡すイベントなの?だまし討ちすぎない?お菓子を受け取ったつもりだったんだけど?!
「リボンを受け取ってくれたからもう一番の仲良しだよね?あ、夏にお洋服も貸してくれてありがとう!お礼といったらなんだけど、今度一緒に街に出かけてお洋服をプレゼントさせてほしいな!」
すっごく嬉しそうに笑ってるヒロインちゃん可愛い・・・。
勘違いだよ、ともだまし討ちなので受け取りません、とも言いづらい・・・。
「初詣やカフェも一緒に行ってくれて、私すごく嬉しかったし、楽しかった!!卒業プロムでも一緒に過ごしてくれたから心強かった!ドレスのこと、恥ずかしくて誘えなかったけど来年の卒業式はお互いの瞳の色のドレスを着たいなって思って!いままではちゃんとお話できなかった分、三年生はもっとたくさんお話して仲良くなりたいの!」
いいかな?そういって頬を染めながら恥ずかしそうに笑うヒロインちゃん。
・・・ん?
初詣やカフェに一緒に行った・・・?卒業プロムで一緒に過ごした・・・?
ちがう!!いや、違わないかもしれないけど・・・いや、やっぱ違う!!!
めちゃくちゃ距離あったじゃん?!一緒に行ったとか過ごしたとかいうレベルじゃないよね?
完全にソロプレイヤーが二人居合わせただけだったよね?!
ってか見張ってたのバレバレだった!さすが公式ストーカーの悪役令嬢!!
でも、そんな風に思っちゃうヒロインちゃんの発想こそストーカーすぎるのでは・・・?!
気まずさで固まっているとヒロインはにっこり可愛く微笑む。
「恥ずかしがってて可愛い。まずは最初の一歩にリボンつけてあげるね!」
そういって紙袋につけていた茶色のリボンをとって、手櫛で整えながら私の髪に結ぶ。
「ふつつかものですが、これから末永くよろしくお願いします。」
頬を赤く染めて微笑むヒロインちゃん。
固まる悪役令嬢。
「これからはずっとずーっと一緒だよ。」
握られた両手はまるで逃がさないと言っているようだ。
え、ちょ・・・。
どうしたらいいの?!
<完>
お付き合いいただき、ありがとうございました!
とりあえず完結できてよかったです!!
読んでくださったみなさまのおかげです。
次回は評価やブックマークをくださった皆様へのお礼をかねて、サポートキャラのたまちゃん視点でのエピローグです♪