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8/11

悪役令嬢の見せ場がないままエンディングを迎えそうなんですが?!

それからさらに半年が過ぎました。

えぇ、もうすぐ卒業プロム、そしてエンディングを迎えます。


悪役令嬢として、奮闘してきたつもりですが見せ場がまったくありません。


長の月のお月見イベントもヒロインちゃんはソロ・・・えぇ、まさかの愛され系ヒロインちゃんがぼっち仲間だということを認めましょう!ヒロインちゃんも悪役令嬢(わたし)もそれぞれぼっちで参加しましたよ!


お月見といってもただのお月見ではなく水月を見に行くイベントだ。湖に浮かぶ月をみて攻略対象者が「月が綺麗ですね」をそれぞれのキャラ風にアレンジして言うところがとても素敵な見所です。


お団子がおいしかったです。このゲームの世界の食べ物は日本の文化がベースなのでどれもとても美味しい。ヒロインちゃんも美味しそうに食べていた。何を隠そうヒロインちゃんは大のお団子好き。好感度が一定を超えていれば攻略対象者が自分のお団子を分けてくれるイベントがあります。


攻略対象者におすそ分けしてもらったあとに例の「お手を煩わせるなんて何様のつもりなのかしら?!」のセリフを言わないといけないのでひっそりと見張っていた。


攻略対象者からのお団子の差し入れはなかった。ヒロインちゃんが物足りなさそうにしていてかわいそうだったのでこんなにたくさんは食べられないからという理由で先生経由でヒロインちゃんに渡した。ほら、悪役令嬢だから表立っての接触はできないから・・・。




神無の月の文化祭イベントもヒロインちゃんも悪役令嬢(わたし)もぼっち参加だった。

攻略対象によってクラスの出し物の内容が変わるのでイベントスチルも豊富だ。同じなのはヒロインちゃんは喫茶店の出し物をすること、そして着物にフリフリ白エプロン白カチューシャという大正ロマン風のメイド服を着てること。


攻略対象者の文化祭での活躍をみているところにガラの悪い悪漢がやってきてヒロインちゃんに絡んでくる。そこに離れた場所にいたはずの攻略対象者がかけつけて颯爽と助けてくれるイベントだ。


攻略対象者に助けてもらったあとに例のセリフを言わないといけないのでひっそりと見張っていた。悪漢がきても誰も助けにこないので、慌てて先生を呼びに行った。ほら、悪役令嬢だから表立っての接触はできないから!




霜の月の紅葉イベントもヒロインちゃんも悪役令嬢(わたし)もぼっち参加だった。

これは学院内の見事な紅葉を楽しんだあと、落ち葉を集めて焼き芋をする会だ。

ご令嬢が焼き芋ってどうなのかなと思うけど、秋といえば焼き芋だもの!


このイベントでは落ち葉拾いに夢中になって迷子になるヒロインちゃんを攻略対象者がみつけて一緒に焼き芋を食べる。


攻略対象者に助けてもらったあとに例のセリフを言わないといけないのでひっそりと見張っていた。迷子になっているのに誰も見つけにこないので、さりげなく「そろそろ戻らないといけない時間ですわね!ここから帰りましょう!」と叫んで姿は見せないように、でも足跡が残るようにしながら走った。ほら、悪役令嬢だから表立っての接触はできないからね!



師走の月の聖夜イベントはヒロインちゃんは参加がなかった。悪役令嬢が本当のぼっちで参加したといえる。


これはただのクリスマスイベントではない。時代背景に配慮してかクリスマスっぽいイベントとして演出された夜咄という夕方から夜にかけて行われる茶会なのだ。いままでは学院全体のイベントだったが、こちらは攻略対象と二人きりだ。

お手紙で呼び出されて手燭を持って外にでると寄宿舎からの小道に灯篭が灯してある。それをたどっていくと攻略対象者が学園の茶会用の小屋を用意して待っているというサプライズだ。小屋で出会ったときに手燭の交換をするときのスチルはとてもロマンチックで好きだった。


ヒロインちゃんが寮に戻るときに例のセリフを言わないといけないのでひっそりと見張っていた。でも誰も来なかった。寒空の下にいたので風邪をひいて、バカじゃない証明をしてしまった。よく考えれば灯篭がともされていない時点でイベントは起きなかったと判断して帰ればよかった。灯篭サプライズ、見たかった・・・。



睦の月の初詣イベントもヒロインちゃんも悪役令嬢(わたし)もぼっち参加だった。

これは振袖をきて、初詣にいくイベントだ。ヒロインちゃんのおみくじがまさかの大凶で落ち込んでいるところを攻略対象者が大吉のくじと変えてくれたり、破魔矢をプレゼントしてくれたり、運気と気分をあげてくれるイベントだ。


これも二人きりで発生するイベントだが、悪役令嬢(わたし)もなぜか登場する。攻略対象者が運気と気分をあげてくれたところに颯爽と登場し、例のセリフを言わないといけないのでひっそりと見張っていた。人ごみの中で。大変だった。


ヒロインちゃんはノンケな上にぼっちで、攻略対象者と一切交流がないことからイベントは発生しないと思ったが見張りに行った。実際、二人きりイベントが開始された12月はなにも動きがなかったし。そう思うけど、一応ね、一応。


ヒロインちゃんは一人で来ていた。ぼっち詣仲間だった。おみくじもひいていた。一人で木に結んで帰っていった。わたしはひっそりと見送ったが、ヒロインちゃんが木に結んだおみくじが地面に落ちてきた。かわいそうだったので拾って結び直した。私が届く範囲の一番上に。ヒロインちゃんに大逆転がありますように・・・。



如の月の街カフェイベントもヒロインちゃんも悪役令嬢(わたし)もぼっち参加だった。

ヒロインと攻略対象者が白亜3階建ての洋館にあるハイカラなカフェにホットチョコレートとアイスクリームを食べにいくのである。イベント日は2月14日であることをやけに強調しているので、現代でいうところのバレンタインを意識しているのは明確だ。

攻略対象が卒業前の思い出作りとしてカフェに連れて行ってくれるデートイベント。もちろん二人きりで発生するイベントだが、悪役令嬢(わたし)もなぜか登場する。もはや公式ストーカーである。


もしイベントが発生するなら例のセリフを言わないといけないのでひっそりと見張っていた。ゲームの中の悪役令嬢はどうやって予定を把握しているのか不明すぎる。私はイベントを把握しているからわかるけど。ゲームアプリの中の悪役令嬢の祖先は隠密で将来は女スパイだと思う。



ヒロインちゃんは一人で町のカフェに行った。おひとりさまカフェである。大人だ。

特になにも起きずに終わった。

ちゃっかり頼んだホットチョコレートとアイスクリームはとっても美味しかったデス。



***



弥生の月の卒業パーティーのプロムイベントはもう来週だ。


プロムイベントでは某歌劇団っぽさあふれるお姉さまが男装の麗人となるイベントだ。いつも美しい攻略対象者の男装の麗人姿のスチルは大人気だった。もちろん、主人公が男装する場合は妹である攻略対象者はとっても可愛いドレス姿でこれもまた人気だった。

ちなみに攻略対象者と踊り終わったあとに例のセリフを言うのが悪役令嬢としての最後の仕事だ。

これまでは攻略対象者がいないところでヒロインだけに向かって言っていたが、ラストは攻略対象者の前で言うのだ。

そんな悪役令嬢からヒロインを庇うとともに、攻略者から熱い視線と言葉で愛を伝えるイベントなのだ。


そしてエンディングの卒業式。

袴に矢絣柄の着物にブーツをあわせたハイカラさんが通ったのかなみたいな服装を全校生徒がする。


この日の式の前に妹はお姉さまにリボンを返す。そして、お姉さまは髪にそのリボンを結ぶのだ。

蝶が花から離れるように、姉妹の関係が終わる。


ヒロインちゃんが攻略対象者にリボンを返すときの笑顔は本当に幸せそうなのに、攻略対象者の姿が見えなくなった途端に儚い微笑になり、その頬に一筋こぼれる涙が胸を締め付けられる最高のラストだった。


ちなみに妹を攻略する場合はこの卒業式までにルート開放のために三年生と接触をする必要がある。


もしかして妹を攻略するのかなと思った時期もあったけど、ルート開放のための攻略対象者との接触が一切ないことからこれは実現不可能だ。


***



「・・・たまぁ~!本当に仕事(サポート)してたのかしら?!何にも起きないまま終わりますけど!!」


「大丈夫!これでいいの。あんたは卒業プロムの準備終わった?」


「当然終わってますわ。一人での参加だから普通にドレス着るだけですもの。」


「うん、これでヒロインは幸せになれるから!間違いないから!あんたはそのまま待っとけばいいの。」



えぇ~?本当に?

疑いつつも予鈴がなったので自分の教室に向かう。


「ヒロインは、ね・・・。」


遠い目をしながら合掌するたまの姿に見送られてることなんて気づくことはなかった。




次回最終回です。

明日も朝七時に更新予定です。


お付き合いくださった皆様へのお礼もかねて、違う視点でのエピローグを明後日の朝と夜に分けて公開予定です。

評価、ブックマークをくださった方、本当にありがとうございます!

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