イベントにソロ参加ってどういうこと?!
それから半年近くが過ぎまして。
季節は秋。
ヒロインちゃんと攻略対象者に愛が育まれる様子が全くみられない。
私はこの半年近く、悪役令嬢をするべく頑張って見守り続けてきたのに!
「ちょっと!たまさん!!あなた、ちゃんと仕事しているのかしら?!」
「してるってば~!大丈夫だから!」
この会話は各イベントが終わる度に繰り返されている。
サポートキャラの公式ニックネームのたまを私も使わせてもらっている。
「そうおっしゃるけど、進展は全くないままでしてよ?」
そう、全くないのだ。
皐の月の新緑の中で短歌を詠むイベントもヒロインちゃんはソロ参加だった。悪役令嬢もぼっち参加。
校外で短歌を詠む会をするのだがそのときは制服ではなく、正装での着物での参加となる。正装の着物は結構重いし、動きづらい。正装の着物に慣れていないヒロインちゃんが体調を崩しかけたところ、攻略対象者がフォローしてくれるのだ。
悪役令嬢は攻略対象者にフォローしてもらったあとに例の「お手を煩わせるなんて何様のつもりなのかしら?!」のセリフを言わないといけないのでひっそりと見守っていた。
ヒロインちゃんの着物は大正ロマンな柄でとても可愛いかったので見とれてしまったのは内緒だ。そうこうしているうちにヒロインちゃんの顔色がどんどん悪くなっていく。
フォローしてくれるはずの攻略対象者がいなかったので、先生に気分が悪そうな人がいると伝えておいた。ほら、悪役令嬢だから表立っての接触はできないから。
水無の月の紫陽花を写生するイベントもヒロインちゃんはソロ参加だった。悪役令嬢もぼっち。
ただの写生だから制服で良くない?って感じなのだが、校外に出るからということで普段用の着物を着る。このイベントは着物よりも髪型に力が入っていて、ヒロインちゃんは耳隠しのレトロな髪型に鞠簪をつける。この鞠簪を落として困っていることろを攻略対象者が一緒に探して見つけてくれる。そのときに容姿やセンスを褒めてくれるのだがなぜかドキドキしちゃうのだ。
悪役令嬢は攻略対象者に見つけてもらったあとに例の「お手を煩わせるなんて何様のつもりなのかしら?!」のセリフを言わないといけないのでひっそりと見守っていた。
しかし誰も探しに来なかったので落し物として先生に届けた。ほら、悪役令嬢だから表立っての接触はできないし。
文の月の七夕に星空のもとでのお茶会イベントもヒロインちゃんはソロ参加だった。悪役令嬢もぼっち。
これは浴衣で涼みながらのお茶会イベント。お茶とともに出されるた錦玉羹は夜空をイメージしたグラデーションに金箔が散りばめられていて綺麗だった。上生菓子はお花をイメージしていてとても可愛かった。このイベントでは攻略対象者がお茶をたててくれる。
悪役令嬢は攻略対象者のお茶を飲み終わったあとに例の「お手を煩わせるなんて何様のつもりなのかしら?!」のセリフを言わないといけないのでひっそりと見守っていた。
しかしヒロインちゃんにお茶をたててくれる人がいない上に自分ではできないようで、困っている様子だった。先生経由で私がたてたお茶を渡してもらった。ほら、悪役令嬢だから表立っての接触はできないからね!
葉の月の海辺イベントもヒロインちゃんはソロ参加だった。悪役令嬢もぼっち。
アッパッパと呼ばれる木綿のワンピースを着て、普段は見えない肌がチラみえしちゃって、女の子同士のはずなのにドキっとするイベントだ。あ、日帰りの予定で設定されているが希望者は泊まることもできる。ヒロインだけ日帰りで攻略対象者は泊まりの予定だ。海辺を散歩する二人が夕焼けに照らされてとても綺麗なスチルをゲットできる。そして急な夕立で二人そろって濡れてしまうがヒロインは着替えの用意もなにもない。そこで宿泊セットを持ってきている攻略対象者からタオルと服を借りるのだ。
悪役令嬢は攻略対象者に着替えをかりたあとに例の「お手を煩わせるなんて何様のつもりなのかしら?!」のセリフを言わないといけないのでひっそりと見守っていた。
しかしヒロインちゃんは一人で散歩し、一人でびしょ濡れになってた。私も日帰り予定だったが、念のためお着替えセットを持ってきていたので先生経由で渡した。ほら、悪役令嬢だから表立っての接触はできないからね?
***
うん、やっぱり全然進展してない。
しかも私が悪役令嬢じゃなくてサポートキャラにジョブチェンジしてる気がするのは気のせいかしら?
「たまさん、残りは半年しかないのですよ?!しっかり仕事して頂かないと困りますわ!」
私の悪役令嬢ができない!
「好感度によってリボンを渡すタイミングが変わるとはいえ、半年もリボンの存在がないままなのはおかしいのではなくて?ヒロインがノンケってことは私はお役御免になるのではなくて?!?!」
「大丈夫、大丈夫だから!制作サイドの私がいうからには間違いない!あんたはちゃんと活躍できるから!!ね?!」
力強く話すたまさんの言葉に私は少し落ち着きを取り戻し、自分のクラスに帰るのだった。
「・・・知らぬが仏。な~む~。」
そういって合掌するたまさんの姿はまったく目に入っていないのであった。