お花見イベントなのにぼっちで過ごすの?!
二日目が平穏に終わった。
三日目もおだやかに過ぎた。
一週間たっても平和だ。
放課後はずっとヒロインちゃんを追い回・・・じゃなくて、見守っていた。
でも、何もなかった。
気づかない間に接触イベントが終わったのか・・・?
いや、でも!
今日は最初のメインイベント、お花見会がある!
このイベントでは、全校生徒が外でお花見をしながらお茶会をするのだ。
用意したお菓子を姉妹もしくは姉妹になりたいと思っている候補の子に渡して、仲を深めるのだ。
そのときに誰ルートをすすんでいるかわかるだろう。
私はのんびり構えることにした。
例え、ヒロインがクラスで一人で過ごしていたとしても。
本来の天真爛漫さが全くないぼっちだとしても。
ヒロインなんだから、攻略対象からもらえるはずだ。
アプリゲームでは複数個もらってたし、あげていたのだから!
ちなみに道山科さまには絶対にもらえるし、絶対に渡すはずだ。
ちなみにそれをみた悪役令嬢のセリフはこう。
「あなた、道山科さまのお手を煩わせるなんて何様のつもりなのかしら?!」
まだ一回も言えてないとはいえ、バリエーションの少なさに脱帽だ。
そして迎えたお花見当日。
ヒロインちゃんは一人で参加し、自分が用意したお菓子を黙々と食べていた。
美味しそうなクッキーだ。
クッキーなら何人かに渡しやすいし、やっぱり私が知らない間に攻略対象との接触があったとみていいだろう。
アプリの悪役令嬢、仕事できすぎじゃない?
私だって放課後はずっとヒロインちゃんのために使ってきたんだけどなぁ~。
私は少し離れた場所に腰掛けて、自分で用意したお菓子を黙々と食べていた。
ちなみにガレットである。
前世からめちゃくちゃ大好きで、さすがにこの世界にはないと思ったけどさすが日本のアプリ。
普通に売っていた。しかも私の好み。ラッキー。
そしてお花見の時間がおわった。
(っておーい!なんでやねーん!!)
思わず関西弁で一人ノリツッコミをしてしまうレベルである。
道山科さまー?!ヒロインちゃんはここにいますよー?!
道山科さまは可愛い子猫ちゃんに囲まれていた。
女子ハーレムを作っている。
道山科さまは「誰か一人のものになるなんて、子猫ちゃんがかわいそうなことはできないのさ」とか言って、姉妹の打診を断り続けている。
ゲームではそんなみんなのプリンス、道山科さまがたった一人をヒロインちゃんに決めるところが見所だった。
なお、道山科さまは初心者向けなので割と序盤で姉妹の申し込みとしてリボンをくれる。
それを断れば他の対象キャラのルート開放に繋がったりもするので、道山科さまは当て馬的な役割もあるのだ。
リボンを断ったあとに開放されるキャラは三年生の外苑寺 帆夏。紅色の髪が似合うちょいワルな雰囲気があるドSなお姉さまだ。
「あの人の姉妹を断るなんて、あなたはセンスが良いのね。気に入ったわ。」と妖艶に微笑むのだ。
もちろん私のセリフは「あなた、外苑寺さまのお手を煩わせるなんて何様のつもりなのかしら?!」だ。
いくら汎用性が高いとはいえ、さすがにこの状況で使うのはどうだろうか。
でも仕方ない。私は語彙力少ない系悪役令嬢なのだから。
外苑寺さまとの接触後、初めて一年生の攻略対象が開放される。
お姉さまではなく、妹。
外苑寺さまにくっついている子犬系な愛らしさがある一年生の朝日倉 芽衣さま。
外苑寺さまにふさわしい姉妹は彼女だけだと噂されている妹人気ナンバーワンの子だ。
まぁとにもかくにも、道山科さまと接触しなければ全ルートが開放されないのだ。
そう、つまり。
ヒロインが道山科さまと一切交流がない現状では。
「・・・悪役令嬢の活躍がない!」
こんなにやる気にあふれているのに!
そうだ、ヒロインちゃんと道山科さまとの接触に夢中ですっかり忘れてたけど。
同じクラスにサポートキャラがいた。
「サポートキャラに仕事してもらえばいいかも?」
うん、だってヒロインなのに一人でお花見してるし。
友達はいた方がいいじゃない?
うん、サポートキャラなんだし、すぐ仲良くなれるだろうし、道山科さまとの接触イベントも起きるかも知れない。
そうと決まれば、サポートキャラに話しかけてみなければ!
違う目標をみつけて、私は晴れやかな気持ちで悪役令嬢としての決意を新たにしたのだった。