今日から悪役令嬢じゃなかったけ?
ブックマーク、評価に加え感想までありがとうございます!
誤字報告もめちゃくちゃ助かります!!
丁寧にみていただいて感謝です。
みなさま、本当にありがとうございます。
悪役令嬢初日が終わりました。
えぇ、何事もなく。
平穏に。
(いや、おかしいでしょう!!)
ヒロインこと、一条 薫子は無事に転入してきた。
本来のゲームではヒロインは放課後に一人で学院を探索する。
そこで初心者向け攻略対象である紫の百合の君こと道山科 由之と出会うまでがプロローグだ。
道山科さまと出会って、悪役令嬢が登場するまで選択肢は一切ない。
道山科さまは女子高のプリンスという王道キャラだ。
紫色の髪はショートだけどサラサラのつやつや。手足が長くて背も高い。
瞳は群青色でみていると吸い込まれそうな深い青だ。
学院とはいえ、やんごとなき身分のご令嬢を預かる場所。
めちゃくちゃ広い。地図が必要なレベルで。
ヒロインが道に迷っているところに道山科さまが登場する。
短い髪を風になびかせながら木から颯爽と飛び降りて美しい笑顔を向けてこう言うのだ。
「こんなところに可愛い子猫がいるなんて珍しいな。」
そういって道山科さまの手がヒロインの肌にそっと触れる。
プリンスな道山科さまは頬を赤く染めた女の子を見ることが好きなのだ。
でもヒロインは慌てた顔で怒りながらこう言う。
「木から飛び降りて足しびれませんでしたか?!危ないですよ!!」
と。
道山科さまは他の令嬢とは違う反応をするヒロインを気に入って、そのまま学院を案内していい感じの雰囲気になるのだ。
そして二人が別れたところに颯爽と悪役令嬢が登場する。
「わたしは鏡宮 芙実果よ!あなた、道山科さまのお手を煩わせるなんて何様のつもりなのかしら?!」
うん、ちゃんと名乗って偉いよね。
でも、悪役令嬢こそ何様のつもりだと言いたい。
こういうとき、悪役令嬢は婚約者だとか攻略対象と何らかの関係がある。
赤の他人だとしてもとりまきだったりする。
でも、悪役令嬢は何の関係もない。真っ赤っかの他人である。
学院には各学年に蜜組と呼ばれるカースト最上位グループがある。
これがいわゆるファンクラブとかとりまきのようなものだ。
この蜜組を通して、姉妹関係を結ぶのが通常のルールだ。
お姉さまが自分の髪の色のリボンを妹に渡し、関係を了承する場合は妹が自分の髪にお姉さまの色のリボンを結ぶ。
これで姉妹となる。姉妹になるための申し込みの権利はお姉さまにしかないのだ。
私は見た目は悪くないと思うんだけど、意地悪そうな目つきに身分の低さ、そして紹介してくれるような友達もいないことから蜜組には入っていない。
ついでにいえば、お姉さまから呼び出されたことはないし、蜜組からお目通り希望があったことの打診さえない。
これはもう悪役令嬢のゲームの強制力ということにする。
私の魅力が足りないわけではない。決して!
ちなみにお姉さまが卒業するときに妹がリボンを返したら関係は姉妹関係は終了。
なお、このときに妹がリボンではなく、紐を渡した場合は「二人の世界に旅立ちましょう」という駆け落ちもしくは心中ルートらしい。
申し込みの権利はお姉さまにしかないけど、関係を続けるか終了するかの権利は妹にしかない。ロマンチック要素なのかヤンデレ要素なのか判断しかねる。
まぁ、全ルート悪役令嬢で失恋決定の私には関係ない話なんだけどね!!
ついでにいえば、アプリゲームではハッピーエンドは全てリボンを返却して、綺麗な思い出をありがとうみたいな感じで終わる。
このアプリゲームにがっつりハマった友人は「妹が紐を渡すメリバエンドの必要性について論文書いて運営に送った」と言っていた。
本気すぎる。
話を戻して。
私は放課後ヒロインちゃんを見守った。
最高のタイミングで悪役令嬢をしようと思って。
そしたら普通に寮に帰ってしまった。
寮にいったん帰ってまた外にでるのかな、と思って玄関付近をずっとうろうろして待ってた。
そしたら日が暮れた。
夕食のあとは外に出てはいけないので今日はもう道山科さまのフラグが立つことはないだろう。
ちょっと、どうなってんの?!
道山科さまという攻略対象を経由して全キャラのルートが開放されるのに!!
道山科さまがヒロインちゃんにちょっかいをかけてかけてかけまくって。
3年生の攻略対象である明るく気さくな生徒会長の要小路 奈都さま、クールな生徒会副会長の総武 明さまが道山科さまを諌めることで二人のルートが開放される。
ちなみにヒロインが各攻略対象と初接触する度に悪役令嬢が言うセリフは同じ。
「あなた、お姉さま方のお手を煩わせるなんて何様のつもりなのかしら?!」
語彙力がない。
攻略対象がヒロインを構ったり、注意したり、優しくしたり、からかったり。
すべてが「お手を煩わせる」で表現されるのだ。
まぁ、悪役ってことが分かりやすくていいだろう。
覚えるセリフも少なくてすむし。
ちなみに初回接触以降のセリフはこう。
「何度言えばわかるのかしら?お姉さま方のお手を煩わせるなんて何様のつもり?!」
いや、語彙力なさすぎでしょ。
一応、意地悪そうに見える顔の角度とか高慢な言い方のバリエーションの研究もしたし、お披露目したいんだけどなぁ・・・。
ま、まぁ初日だし!
もしかしたら私の記憶違いかもしれないし!!
天真爛漫なはずのヒロインちゃんの表情の変化があんまりなくて、話しかけられても愛想がなかったけど、たぶん初日で緊張していたせいだろう、うんうん。
「よーし!明日こそ悪役令嬢の初日、がんばるぞー!!」
私は決意を新たに刻むのだった。
大正時代の女学生に流行ったエスの文化が舞台だったりします。
大正ロマンな文章力がないので、言い回しは現代風になってしまうのが悲しい・・・。