<エピローグ>製作サイドの苦悩1
サポートキャラのたまちゃんが現世でゲームアプリを製作していた頃のお話です!
現代の製作サイド視点でお楽しみいただけると嬉しいです♪
恋人いない歴=年齢の社畜で百合ヲタな私。
ゲーム開発者の集大成として大正ロマンあふれる百合ゲームアプリを作った。
いままで担当した乙女ゲーのソフトが複数ヒットしたことから、ご褒美と期待を込めて私好みのゲームを作らせてもらえることになったのだ。
百合ヲタの私は大歓喜!
私は大正時代の少女同士の恋愛を描いたエスの作品観がとても好きだ。エスはsisterの頭文字からきている。
現代は百合といえばゆる百合な作品が主流だし、それも楽しんでいる。
けれど、売れる作品ではなく、好みで作っていいなら断然エスの世界観たっぷりな大正ロマンな百合シナリオを書きたい!!
好きに書いていいとは言われても、仕事である以上ある程度の需要と売上は求められる。
お偉いさん方には大正ロマンな百合はかなり渋られた。
「百合作品でもいいけど、現代風の世界観を主流にした方が売れるんじゃない?」とは言われたけど、それでは大正ロマンな百合は書けない。
万人受けはしないけど、文学的で和風な百合を必要としている人は絶対にいると説得して「女學院物語~エスの世界~」をリリースした。
でも全く流行らず、撤退を余儀なしと宣告された。
私の理想を詰め込んだ渾身の大正ロマンな文学的表現を駆使して織り成す和風百合が・・・。
課金アイテムもつくるからと粘ってなんとかリメイクして再度リリースするという方向に持って行った。
けど、製作陣に王道の乙女ゲームアプリのスタッフが加わったことでもう全く違うゲームアプリになっていった。解せぬ。
まずタイトルから変わった。「女學院物語~エスの世界~」だとSMなアブノーマルっぽい雰囲気がでているといわれた。Sisterのエスなのに!!!
また、大正ロマンの和風百合だったはずがなぜかめちゃくちゃ西洋風なお城の学院生活になっていた。
たしかに明治大正は白亜の洋館が流行ったけど、これはどう考えても異国の城だ。
私の考えた細やかな設定はゲーム上では活かされなかったものの、設定としては残しておくからと押し通された。
ホームページに載せておくといっても、わざわざホームページまで設定を見に来る人なんていないだろうよ・・・。
もはや設定は破棄されたとみなさざるを得ない。解せぬ。
今回のゲームアプリ開発は一応私へのご褒美みたいなところもあったので、温情として設定だけが残されたという雰囲気だった。特に必要のない細かい設定扱い…。泣ける。
それでもその方向でストーリーでシナリオを書き、スチルも完成し、プレリリースした。
しかし予想外のコメントが多数きた。
「ライバルキャラがいないので面白くない」というレビューだ。
たしかに、王道にはライバルキャラが必要だがもう今更である。
だがしかし。
プレとついているがもうリリースしたし、大幅なシナリオ変更は難しい。
プレリリースとは、もうほぼこれで完成するよというお披露目なのである。
なのに、レビューをみたお偉いさんは言った。
「ライバルキャラ、つくろう!イイ感じの悪役令嬢をよろしく!」
と。
デスマーチに突入である…。
これまで仕事上の大人なお付き合いをしていた王道スタッフチーム。デスマーチ中の深夜のテンションでカミングアウト大会になった。
私は純文学百合ヲタだが、イベントシナリオ担当はヅカヲタだった。ちなみにキャラデザ担当はヤンデレ好きであることが判明した。
みんなひっそりと自分の好みや理想をこのアプリゲームに突っ込んでいたことが判明した。
自分をさらけ出しながら、私達は考えに考え抜いた。
みんなの理想を詰め込んだシナリオを活かさず殺さず、ほどよくライバル役をこなせる悪役令嬢を。
「うん、イベント終わりにヒロインにちょろっと文句をいう系の悪役令嬢でいこう」
「令嬢なら品が良いし、あんまりひどいこととかできなさそうだしね~」
「念のため、下位貴族にして権力を持たせない感じにしよう」
「じゃぁさ、家族に存在をスルーされてる子にしない?愛されワガママ令嬢だと性格悪くなりそうだし~」
「いいね!愛されヒロインが羨ましくてつい意地悪言っちゃう孤独な令嬢みたいな?」
「大したことができない感じのキャラでいこう。根は善人の悪役令嬢はどう?モブより存在感がある程度のキャラ付けになるんじゃない?」
「とりまきがいないようにしないとね。ぼっちでいこう。数が多いとできること多くなっちゃうし。」
「そうね。各イベントが終わって主人公が一人になったときにちょろっと登場させて捨て台詞みたいな文句を言わせればいいんじゃない?」
「よし、それでいこう。いつもヒロインと二人ならスチル絵もそんなに必要ないしね~」
「そうだ!キャッチフレーズみたいな感じで決めセリフは一個にしたらさらに使い回しが良いんじゃない?」
「おお~!お嬢様っぽい感じの嫌味な言い回しを毎回させるわけね。それでいこう。」
「悪役令嬢っていう新キャラ登場でどうなるかと思ったけど、これならちょびっと付け加えるだけだしリリースに間に合いそうだしよかった~。」
攻略対象じゃないから、同学年にするか~
そういや、金髪碧眼の王道キャラがいないじゃ~ん
定番のロングヘアとかドリルヘアだとイラスト描くの時間かかるから長さはミディアムくらいでいいよね~
みたいな感じで、デスマーチ中の夜中のテンションでさくっと作ったキャラクター。
そしてできた悪役令嬢が鏡宮 芙実果だ。
このキャラクターがアプリの命運を握るなんてそのときの私たちは思いもよらなかった。




