野営の朝と都市の核
朝が来た。ものすごい寝不足だ。思った以上に変異獣が襲ってきたせいだ。
「ふぁ、おはよう。何回か警報なってたけど大丈夫?って何それ!?」
リエラがテントから出てきた。どうやらお目覚めのようだ。そして、俺の横に積まれている変異獣の山を見て目を見開いている。
「変異獣」
取り敢えず、答えておく。
「見ればわかるわよ!私が聞いてるのはこんなに来てるのになんで起こさなかったのよ」
ものすごく怒られた。別にそんなに言うほどのことでもないだろうに。
「いや、この程度なら何匹来ようと変わらんし、起こす必要もないだろうと思ったんだが」
だから思ったことをそもまま伝えたら、なんだか諦めたような表情でため息を吐いていた。
「もういいわ。それにしてもこんなに来たら普通はもっと警報なるはずなんだけど。何でならなかったのかしら」
「ああ、それは多分一匹一匹来たわけじゃなくて、一回ごとにまとめて来てたからじゃないか?」
見ていた限りではそんな感じだったしな。多分間違ってないだろう。そんな事を考えていたら、リエラが呆れたような目で俺を見ていた。
「ん?どうしたんだ」
「別になんでもないわよ。さ、早く片づけて原因探しの続きしましょ」
なんだか釈然としないものを感じるが、本人が何でもないと言っているならそうなんだろう。
それから俺達は、軽めの朝食をとりテントを片付けると、探索の続きを始めた。
2時間ほど歩くと、俺達は新たな異変を感じ始めた。
「ねぇ、ダスト」
「ああ、なんにもいないな」
いないのだ、変異獣はおろか動物の気配さえない。どういう事だろう。
「もしかして、ものすっごく強い壊獣が出て移動したとか?」
「それはないだろ」
研究ではまだ明確な理由は分かってないが、壊獣は変異獣を絶対に襲わない。そしてその逆もない。
だから俺が壊獣と戦っていようが、真横に強力なやつがいようが奴らの行動は変わらないはずだ。流石に戦いには、巻き込まれないようにはするみたいだが。
「まあ、そうよね」
リエラもそれは無いと思っていたようですぐに引き下がった。
「じゃあ、どうして何にもいないのかしら。普通でもこれくらい歩けば、2,3匹くらいなら出会うはずだし、遠目にも見えたりするものなのに」
「さあな、だから今こうやって原因を探してるんだろ?まあ、最初とはだいぶ目的が変わっちまったが」
「そうなんだけど」
不安そうだが、頑張ってもらうしかない。これをほっとくとなんかやばそうな感じがするし。しっかし、ほんとになんにもいないな。さっきまでアホみたいに群がってきたのに。
それから更に数時間が経った。ここまでまだ一匹も出会ってない。そして、手がかりも見つからない。
流石に諦めて戻ろうかと考え始めたとき、ようやく変化が訪れた。
「ん?なあ、リエラ。あれなんだと思う」
遠くに台座のようなものが見えたのだ。それを指してリエラに聞いてみる。
すると、リエラの顔が驚愕に染まった。
「うそ……都市結界石」
「都市結界石?」
聞いたことないな。師匠にも教わってない。
「都市の中心に必ず置かれている要石よ。ペルピアスの影響を受けた生物はあの石を避けるの。距離は石が大きければ大きい程遠くなるわね」
都市にそんな秘密があったとは。それで、あの台座の上に乗ってるやつがそれか。
「なる程奴ら多かったのはその影響か。けど、それならリベラにも近寄らないんじゃないか?」
「そう都合よく行けばいいんだけどね。強い結界石がある時は、弱い方を無視して動くのよね」
なる程、つまりあの結界石とやらはリベラのやつより強いわけだ。問題はなんであんな所にあるかだが。
取り敢えず、遠目に見ていても仕方ないので結界石の所まで行ってみた。意外とでかいな。
台座の上にある丸い結晶体は、直径2メートルくらいで薄く光っている。
「これが、都市結界石か。何でこんなところに置いたんだろうな」
「多分、リベラへの攻撃でしょうね。この大きさだとリベラも結界に入りそうだし、移動してきた変異獣に襲わせようとしたんじゃないかしら」
大問題だな。それだと今頃やばいんじゃ。
「なあ、都市大丈夫か?」
「移動が始まるにはそれなりに時間がかかるし、途中ダストが狩りまくったから、直ぐにというわけではないでしょうけど。取り敢えず収納して持って帰りましょう」
「勝手に持っていってもいいのか?」
「大丈夫よ。誰が仕掛けたとか明確な証拠もないし、台座も壊しておけば、誰も何も言えないわよ。だから収納したらダストお願いね」
「わかった」
まあ、問題ないならいいか。俺は俺の仕事をするだけだな。そう思って、俺は大剣を展開する。リエラが石を圧縮してカバンに放り込み、台座から離れたのを確認すると、俺は台座を壊すために攻撃する。
「砕け―――ロア」
俺の言葉に反応して、大剣にエネルギーが充填される。そして、俺が大剣を振り下ろすと、その膨大なエネルギーが轟音と共に放たれた。
そのエネルギーの奔流は、台座を呑み込み跡形もなく消滅させた。
「やっぱり……」
リエラがなにか呟いていたが、よく聞こえなかったな。まあ台座は壊せたから、問題ないだろう。
「よし、じゃあ戻るか」
「そうね。それと、ずっと気になってたんどけど、ダストの剣って…」
ああ、これのことか。まあ特別製の武器だしな。気になるのも仕方ないか。
「ああ、これ壊獣の素材と核を使った武器だからな。そのへんのエスペル武装とは格が違うぞ」
「獣装……」
「ん?」
「いえ、なんでもないわ。それよりも、原因もわかったし報告に戻りましょ」
それもそうだな。さっさと帰ってうまい飯を食いたい。そう思ってリエラの言葉に頷いていると、背後から声がかかった。
「それはちょっと困るな。ここにあった結界石はおいていってもらわないとなぁ」
どうやら、まだ帰れないようだ。




