荒野の異変
動かなくなった蛇を眺めながら、息を吐く。街が近いのに、結構な大物だったな。この辺にいるのは大体10メートル位がせいぜいなのに。
「最初見たときも思ったけど、あなたってホントすごいわね」
「そうか?」
そんなに凄いのだろうか。今のは技術さえあれば誰でもできると思うが。
「ええ。それよりもコイツね。この大きさなら普通はどの街からも2日はかかる距離あたりにいるはずなんだけど」
そうだった。この辺りにこの大きさがいるのはちょっとおかしい。荒野の奥で何かあったのだろうか。
「まあ、何年かに一回は、はぐれが出るって聞くし、今気にしても仕方ないわよね。取り敢えず保存して帰ったら、こんなのがいたって報告さえすればいいでしょう」
確かにはぐれが出るのは俺も聞いたことあるな。だが、それよりも聞き捨てならないこと言ったな。
「腐らないか」
腐肉と探索なんて嫌だぞ俺は。そんな事するくらいなら一回戻るぞ俺は。
「大丈夫よ。圧縮すれば、普通の10倍以上は長く持つから」
凄いな。リエラの謎理論で作られた保存法。それならまあ、許容範囲か。俺が頷くと、リエラは蛇を圧縮して手のひらサイズにする。それを革袋に入れるとかばんに放り込んだ。
「便利だな」
「ええ、そうでしょう」
自慢げにするリエラに同意しながら探索を再開しようとした。が、
「……ねぇ、ダスト。あれ」
「おいおい」
目の前を蠢く変異獣にそれを阻まれる。蛇だ。だが、その数がおかしい。目に見える範囲だけでも10匹はいるぞ。
「これが全部はぐれってのは、無いよな」
「当たり前でしょう。絶対なにかおかしい」
やっぱり奥の方で何かあったのだろうか。増えすぎて餌がなくなったとか。
「どうする?一旦戻るか」
取り敢えず、どうするかリエラに相談する。
「……いえ、原因も調べたいし、先に進みましょう。あと、負担をかけて悪いんだけど、見つけた変異獣は殲滅してもらっていいかしら」
ここにいるはずの無い変異獣の大量発生。確かに原因を調べられそうなら調べておいたほうがいいだろう。
「わかった。だが、危なそうならすぐ撤退するぞ」
「ええ、あと撤退の判断はあなたに任せるわ」
「了解」
さて、方針は決まった。なら、まずは殲滅だな。俺はクラースルィークを展開、全力で地面を蹴って蛇を殲滅。ただの変異獣なのでたいして時間は掛からなかった。
「保存、終わったわよ」
「そうか、なら行くか。一応武器はすぐ用意できるようにしておけよ」
「分かったわ」
なにが起こるかわからんからな。いつも以上に気を引き締めて行かないとな。
それから奥に進んでいくこと数時間。既に日は傾き空を茜色に染め上げている。
「しっかし、原因はわからんが多いな」
「そう、ね」
俺の言葉にリエラが同意する。ここまで、に狩った変異獣の数は20メートルくらいのが80匹近く10メートルクラスが20匹位だ。
普段この辺りを探索すれば、5〜10メートルくらいのと、数匹出会うかどうかだというのを考えれば、今日の結果がどれだけおかしいかわかるというものだ。
「けど、暗くなるから今日はここまでだな。野営の準備をしよう」
「そうね。ああ、テントは任せてくれるかしら。私が開発したやつを使うから。ダストは、他のをお願い。」
「別に構わんが、どんなやつなんだ」
使うのは別に構わないが、今は緊急事態だからな。下手なもの使われて危険になるのは嫌だぞ。
「そんな顔しなくても大丈夫よ。変異獣とか壊獣が一定範囲内に入ると警報が鳴るように作ったやつなの。もうすぐ量産方法も確立出来そうだから、そのうちみんな持っているようになるんじゃないかしら」
今は移動の多い都市の重役の一部だけが持ってるって感じだけどね。と、付け加えて用意を始めるリエラ。
なんというか、凄いな。今までどっちかだけの警報機は合ったんだが、両方ってのは聞いたことがない。
「そうか、なら期待しておくよ」
「ふふっ。ええ、大船に乗ったつもりでいて頂戴」
俺の言葉に嬉しそうに答えてくるリエラ。仕組みが気になるが聞かない。どうせ謎理論で説明されるだろうし。
用意が終わったときには、もう日が沈む所だった。俺は、リエラの建てたテントを眺める。うん、なんというか……
「普通だな」
「当たり前でしょ。変におっきくしても持ち運びに困るでしょう」
それもそうか。納得した俺は、夜番の準備を始める。リエラには任せられんからな。
「ねぇ、ほんとに一晩全部するの?」
「構わんさ。それに、寝ながらでも警戒する方法はたたき込まれてるからな。問題ない」
主に師匠にな。あのときはほんとに死ぬかと思った。
「で、でも」
「それに、リエラじゃ壊獣が出たら対応できんだろ」
「うう、わかったわよ。でも、しんどくなったら言いなさいよ。わかった?」
そう言って、リエラはテントの中へ入っていった。ふう、ようやく認めてくれたな。それでも渋々といった感じだったが。
「さて、やるか」
俺は周りを見渡し、手頃な岩を見つけるとそれににもたれかかる。
「取り敢えず、起動しろ――ブラウハイト」
俺の言葉と同時に青い双剣が展開される。対人と野営、体格の小さい相手用の武器だ。壊獣にも小さいのはいるからな。
それを横に立て掛け俺は目を閉じた。




