荒野の探索
街から出て数時間、何も変化はない。後ろを見ればまだ、外層の壁がうっすらと見えている。
「そういえば、リエラの武器は剣でいいんだよな」
「ええ、エスペル使用のブレードよ。それと、光線銃も持ってるから、変異魔獣くらいならなんとかなるわね」
「そうか」
なら、本気で注意しないといけないのは壊獣だけだな。とは言え、こんな街が見えるような位置には、殆ど出てこんだろうが。
「でも、壊獣相手だと何もできないから、その時はよろしくね」
「ああ」
もちろんそのつもりである。依頼のこともあるしな。こんな感じでリエラと話していると、前方の視界に一瞬だが影が映った。
「ん?」
「どうしたの」
リエラは気づいてなかったのか、急に立ち止まった俺を不思議そうに眺めている。だが、この時の俺はそれを認識することはなく、ただ前方に意識を集中させていた。
「いた」
対象を見つけると同時に駆け出す。走りながら大剣を起動し接近すると、俺はその影に向けて剣を振り下ろす。
ザシュッ。という手応えとともに、甲高い断末魔が響き渡る。そして、その獲物が動かなくなるのを確認したら、剣をしまった。
「ちょ、ちょっと。一体なんなの。さっきの声といい、急に走り出すことといい。ちゃんと教えてくれるのよね」
駆け寄ってきたリエラが、不機嫌そうに言ってくる。だが、不可抗力だ、こいつはすぐに仕留めないとダメだからな。逃げられてしまう。
「すまんな。だがこいつを見つけたもんでな」
そう言って、今仕留めた獲物をリエラに見せる。すると、リエラは目を見開いた。
「な、これってサンドキャット⁉︎」
「ああ」
俺が、自慢げに掲げるサンドキャットは、とてもいい毛皮の材料になる。そして肉もうまい。だが、なかなか見つからないし、途轍もなく逃げ足が速い上、肉の鮮度の落ちるのが異様に早い。だから、売られることはまずない。こんな時でもないと食えないレアな奴なのだ。
「取り敢えず、さっさと血抜きして食おうぜ。腐らせたらもったいない」
「そうね」
早速、サンドキャットの血抜きを始める。うん、うまく倒せたようで何よりだ。
「ダストって剣の扱い上手いわよね。そんな大きい大剣で、こんな小さい動物の首を斬るんだから」
サンドキャットは頭の先から尻までで、大体70センチ、対して俺の大剣は刃渡りが160センチあるからな。柄もいれたら2メートル超えるし。
「まあ、これくらいはな。でもこれくらいなら、他にもできるやつはいると思うが」
俺だけが特別ってわけじゃないと思うが。
「それでもよ、一般的な目線から見て上手ければそれでいいじゃない」
「そういうもんなのか?」
「そういうものよ」
そうか、と一人納得していると。血抜きが終わった。なら次は解体だな。よく外にいてなれてるから、すぐに終わった。
「さてと、これどうやって食う?」
「単純に塩で焼いたらいいんじゃない。これ食べるときは余計なものは要らないって聞くし、他に調理道具なんてないし」
それもそうか。リエラの言葉に納得した俺は、肉を焼くための用意を始める。けど、俺料理苦手なんだよな。基本外は干し肉とか保存食ばっかだし。そのことをリエラに伝えると、
「焼くのは任せて、一応私は料理もできるから」
「わかった」
そう言ってきたので、俺は串を作ることに専念する。火をつけると、リエラは俺の作った串を焼き始めた。うん、ただ焼くだけなんだけど、俺とはまるで違うな。
暫くすれば、肉の焼けるいい匂い漂ってくる。そろそろだろうか、さっきからよだれが止まらない。
「出来たわよ」
「おお…」
うまそうだ、程よい焦げ目に滴る肉汁。今すぐかぶりつきたい。
「はいはい、そんな慌てない。それなりに量はあるんだから。はい」
リエラが苦笑しながら、肉串の一本を俺に渡してくる。だがなリエラよ、これは仕方ないのだ。うまそうな肉を前にして落ち着けと言われる方が無理だ。
渡された肉串を受け取り、早速一口。
「美味いな」
「ええ」
なんというか、美味すぎて肉以外のことを考えるのが失礼な気がするくらいだ。それは、リエラも同じようで、ひたすら肉を味わっている。狩ったのは二度目だが、焼き方がうまいのか今回のほうが遥かに美味い
あっという間に、肉がなくなった。とても残念である。また見つけたら、絶対に仕留めなければ。と言うか仕留める。
「ああ……」
だからリエラ、食べ終わった串をそんな名残惜しげに見るな。そして舐めるな。
「……また、見つけたら捕まえてやるから、片付けて行くぞ」
「それ、絶対よ!忘れたら承知しないからね」
滅茶苦茶食い気味に返された。ちょっと怖いぞ。
取り敢えず、リエラを落ち着かせ、道具を片付けて探索再開。しばらく行けば、もう街の外壁は見えなくなっていた。
「あっ、あそこ」
「ん?」
今度はリエラがなにか見つけたようだ。リエラの指す方向に意識を向けると、100メートル程先に体長20メートル位の巨大な蛇がいた。
「変異獣か…」
「そうね。街までそれなりに近いし狩っておきましょう」
「そうだな」
変異獣を放っておいて街に近づかれたら面倒だ。ここで倒してしまうべきだろう。
俺は大剣を展開し、距離を詰める。残り60メートルくらいの所で気づかれた。
鎌首をもたげ威嚇してくる。が、変異獣如きに俺が遅れを取るわけがない。威嚇を無視して突っ込んでいく。
「シャアアアアア!!」
俺が怯まないのがわかると、蛇は威嚇をしながら攻撃体勢に入った。そして、俺との距離が20メートルを切ったところで飛びかかってくる。
「ハァ!」
それを落ち着いて横に躱しながら、剣を振り上げる。肉を斬る感触が腕に伝わってきて、蛇の首が宙に舞う。断面からは噴水のように血が吹き出した。
蛇の胴体は斬られたあと、しばらくのたうち回っていたが、次第に動きが鈍くなりその動きを止めた。




