ムッカス
シモンの紹介に偉そうにふんぞり返るおっさん。だがブクブク太ったその体と顔だとブサイクなだけだぞ。禿げてるし。
そう思いながらムッカスたち5人を眺める。おいおい、座ってるムッカスの後ろに控えるように立っている4人、全員獣兵かよ…。切り札として都市にこもってるんじゃなかったのか?
「とりあえずダストくん、座ってくれるかい?」
うーん。出来れば後ろで立っていたいな。座ってると対応しにくいし。
「ふん。そんな薄汚いゴミなんぞ、後ろで立っておれば十分だろう」
いやお前には聞いてねぇだろ、このハゲ豚野郎。とはいえ、立っておきたいのは事実だ。ここは、こいつの言葉に乗っておこう。
「いえ、ムッカス様のおっしゃる通り後ろで十分です」
そう言ってシモンの後ろに控える。はぁ、隣の女も獣兵か。しかもこの感じって……。
「ふはは、そうだろうそうだろう。お前のようなゴミは、この場にいることが出来ることさえ本来はできないのだからな。後ろに立てるだけでも泣いて感謝するがいい」
いや、ほんとなんなのこの豚。いつかぶん殴ってやる。
「取り敢えず全員揃ったのだ、要件をお聞きしようか」
ハゲ豚の言葉を聞き流して、シモンが切りだした。
「そうでしたそうでした。シモン殿、最近ご息女が賊に襲われたようで。ご息女はこの国に必要な人材です。襲われたと聞いた私はいてもたってもいられず、こうして参った次第でして……」
と、こんなことをのたまうハゲ豚。顔がにやけてるせいで、全然心配してないのが丸わかりだ。
それはともかく、最近てのはいつの事だ?普通なら俺が来る前の話になるはずだが、爺さんの言葉的に考えると2日前のことになるよな。
「……最近とはいつ頃の話でしょうかね」
俺が疑問に思ってたことをシモンが聞いてくれた。
「つい2日前での事ですよ。たまたま、私の部下が襲われている所を目撃したそうで、今回はなんとかなったそうですが、次回からもそううまく行くとは限りませんよ?」
2日前ってやっぱりあの時のことか。見られてたのかよ。はぁ、これからは遠距離の視線にも注意しなきゃならんのか。
「何が…言いたい」
苦々しげにシモンが質問する。うん、俺も正直嫌な予感しかしないわ。
その俺の予感の的中を告げるように豚がより一層笑みを深める。超キモい。
「ええ、そこで相談なんですがシモン殿。ご息女を我が都市に預けてみませんか?」
なる程、それが狙いか。短い間だがリエラの凄さはよくわかる。リエラのだす功績と、研究成果をラムール都市、いやこの豚自身のものにしたい訳か。
シモンは何も言わない。そのことに調子を良くしたのか、またベラベラと喋り始めた。
「私の後ろにいる護衛ですが、なんと全員獣兵なのです。そして、コレらを外に出してなお我が都市には、あまりある戦力がある。見たところ、シモン殿は傭兵を雇わねばならないほどに兵力に苦心している様子。我が都市のほうが安全性は高いと思われますが」
おいおい、俺の仕事取ろうとするなよ。それに後ろのやつなんて、その気になれば50人くらいいても瞬殺できるぞ、俺は。
「何なら、この私と婚約なんてどうでしょう。軍事力のラムールと技術力のリベラ。この2都市の絆を深めるいい機会になると思うのですが」
豚の言葉がリべラに来て一番衝撃を受けたな。衝撃すぎて、さっきまでの不満が吹き飛んだわ。
確かにリエラは赤い髪と赤い目が特徴的な美人だ。狙いたくなるのもわかる。けど、このやり方は気に食わないな。
横目でリエラを見ると、震えていた。横顔も見てわかるほどに青ざめている。
「……婚約はともかく、預けたとしてリエラの安全は守られるのかね」
おいおい、シモンさんよ。あんた父親だろ?もうちょい頑張れよ。今の言葉せいでであの豚、今までで一番気色悪い顔してるぞ。リエラも顔が青を通り越して白いし。
……。見てられん、そしてムカつく。豚もそうだが、シモンもだ。はあ、こういうのは柄じゃないんだがね 。
「ひとついいでしょうか?」
「ああ?なんだゴミ、貴様とは話してないんだ黙っていろ」
「まあ、そう怒らずに。ダスト君、何かね?」
ん?なんか急にシモンの態度が変わったな。声も安心したような感じだし。どういうことだ?もしかして俺が口出すの待ってたのか?まあいい、取り敢えずは目の前のことだけを考えよう。
「その、もし護衛というのが後ろの者たち程度なら不安だなと思いまして」
おお、豚の顔が面白いくらいに歪んだな。
「何?どういうことだ」
怒りを押し殺しながら、俺に問いかけてくる。まあ自慢の兵を馬鹿にされたんだ、こう言う奴なら怒るよな。
そんな豚に対し俺は更に挑発していく。
「あー、簡単に言うと弱すぎ。なんなら試してもらっても構いませんよ?4対1で。それで負けるようならこの話は無しでいいですよね?そんな奴らになんて任せられませんし。ですよねシモン様」
俺の言葉に頷くシモン。それを見た豚はこめかみをピクピクさせている。
「ほ、ほほう。言うではないか。そこまで言うならいいだろう。ただし私の兵が勝ったらその暴言、命をもって償ってもらうことになるぞ?」
暗にここで引けば見逃してやるってことなんだろうか。シモンの前だからか知らんが、案外甘いんだな。でもまぁ、引く必要なんてないしな。絶対俺が勝つし。
「どうするダスト君?」
「いいですよ俺は」
「そうか、では30分後、訓練場で試合を行う。ムッカス殿もそれでよろしいかな?」
「無論だ。貴様の冥土の土産に我が都市の強さを教えてやろう」
こうして、俺はムッカスの兵と戦うことになった。




