報告とお隣さん
「チッ、生きていたか」
門にたどり着いて初めてかけられた言葉がこれだった。ほんとムカつくなあの門番。まあ、またリエラに怒られてたけど。学習しないのかねぇ。
そんでもって、今はリエラの城の中。賊?は既に爺さんに引き渡し、シモンのところに向かっている所だ。
そんな事を考えていると、いつの間にか部屋の前に来ていた。リエラがノックして呼びかけている。
「ああ、はいってくれ」
許可が出たので部屋に入っていく。中のソファーには疲れたような顔をしたシモンが座っていた。
「据わってくれ。ライから簡単に何があったかは聞いてはいるが、当事者からちゃんとした事情知りたい」
「ライ?」
誰だそいつ。聞いたことないぞ。俺が不思議そうにしているとリエラが吹き出した。なんだよいきなり。
「ふ、ふふっ。爺やったら自分の名前教えてなかったのね。ライっていうのは、あなたが爺さんって呼んでる人よ」
そんな名前だったのか、あの爺さん。というか名前くらい教えてくれよ。まあ俺が聞かなかったのもあるんだろうけど。
「やれやれ、相変わらずだなライは。まあそれはともかく、本題に入ろうか」
どういう訳か知らんが、呆れたような様子のシモンから察するに、こういうことら良くあるらしい。まあ、それはどうでもいいか。今はあいつ等のことについてだな。
本題の話になるとシモンの顔が引き締まる。
「まず、リエラに聞こうか。何があった」
「分かったわ。まず、最初は、普通はいるはずの無い大きさの変異獣を一体見つけたの。それを見た私達はぐれだろうと考えてダストがすぐに討伐したんだけど」
「そこで終わらなかったんだな」
「ええ、その後それと同じぐらいの奴やそれ以上のやつが大量に見つかって、流石におかしいから私達は原因を探り始めたの。そしたら、途中から変異獣が全くいなくなって、その先に行くとこの結界石があったの」
そう言ってリエラは鞄から結界石を取り出した。
「しかし、これではこの都市には影響しないだろう」
「違うわ。これ圧縮してるから小さいけど、ほんとはもっと大きいの。それこそこの都市ものより」
リエラがそう言うと、シモンは、ああ、と納得した。そして、この都市より大きいものだと言うことに渋い顔をしている。
「それでこれを取り除いたらあの賊が出てきて、それをダストくんが倒したと」
「ええ、そのとおりよ。これであった事はだいたい言ったわね」
「ふむ、なる程な。ではダストくん、今の話をに加えて他に言うべき事はあるかい?」
他に言うことか、あった事はリエラがほとんど行った。あ、そういえば俺たちの会話については話してなかったな。奴らは確実に誰かにやとわれていたはずだ。
「あいつらのことなんですが、結界石を持っていかれると依頼が達成できなくなると言っていましたね」
「依頼…だと?」
「はい」
シモンの顔がいっそう険しいものとなる。
「なら結界石の置かれていた場所になにか模様はあったか?」
「いえ、全く。あとリエラはリベラへの攻撃だろうとも言っていましたね」
「模様が無いなら、そうだろうな。はぁ、分かった。あとは、君たちが捉えてきた賊から聞き出すとしよう。おそらく、大した情報は持ってないだろうが。ありがとう、もう戻っていいよ」
だろうな、どうせ使い捨てできると思って雇った傭兵だろうしな。
シモンが退室していいと言ったので、前に案内された客室に戻った。
ん?なんか外が騒がしいな。なんかばたばたしてる様な気配を感じる。何があったんだ?俺が疑問に思っていると、ドアがノックされた。
「ダスト様、旦那様がお呼びです」
爺さんか。さっき報告して戻ったばかりだが、どうしたんだ?
「わかった。だが、どうしたんだ?言うべき事は、言ったぞ」
「それが、私も詳しくは分からないのですが、その件で当事者の意見があった方がいいとの事で、至急呼んできてくれと」
やはり何かあったようだ。至急と言うくらいなのだ、結構やばいかもしれない。
爺さんの言葉をうけた俺は、万が一の事を考えて武装を整える。忘れているものがないことを確かめてから、爺さんとシモンのいるところに急ぐ。
「旦那様、連れてまいりました」
「入れ」
爺さんがノックして呼びかけると、堅い声で返事が帰ってくる。どういう事だろうか。
……ふむ。中にいるのは8人。2つは知ってる気配、シモンとリエラだ。ほかは知らんが、全員から若干殺気というか、敵意が漏れてるな。
これらのことを部屋に入るまでの数秒で確認。これは、万が一の事態の可能性が高まったな。そう感じた俺は、気配を押し殺しつつ、何が起こっても二人を守れるように臨戦態勢を整えつつ、ドアを開けた。
「遅れてすみません、シモン様」
「いや、構わない」
部屋はシモンの執務室の3倍くらいの部屋だ。中央のテーブルを堺にシモン達3人と知らないおっさん側に5人睨み合っている。
「ふん、随分待たされたが来たのは薄汚い傭兵ではないか。何故こんなゴミの為に待たされねばならんのだ」
でかいソファの真ん中に一人で座っている偉そうなおっさんが俺を見るなりそう言ってくる。典型的な権力者だな。はぁ、こういう奴らの相手はめんどくさいんだが。
「申し訳ありません。それと、シモン様。急ぎの用とのことだそうですが」
取り敢えずおっさんには頭を下げといて、状況を尋ねる。だいたい予想はつくが余計な事は言わない。
「ああ、その通りだ。その前にまず紹介しよう。そこに座っておられるのは、リベラの隣の都市、ラムールの都市長ムッカス殿だ」
どうやらお隣さんのトップが訪ねて来たようだ。面倒くさそうな予感がするな。




