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レベル1の魔王様は遠慮しない!  作者: サトウロン
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レベル5 世界史の授業

「ふざけるなよ、小僧」


鋭い踏み込みでテルヴィンが魔王を狙う。

速すぎて、メルチの障壁が間に合わない。


テルヴィンの激怒も当然のことだった。

この世界では、自分はレベル1だと宣言することは、私は赤ん坊同然ですよ、と言っているのに等しい。

子供でもレベル2、3になり、成人すれば誰でも二桁になるような世界でそんなことを言ったら、とんでもない挑発行為として捉えられること必至である。

中指をたてる、と同レベルの挑発を受けたに等しい。


「余は何もふざけてはおらぬぞ?」


魔王は古ぼけた盾でテルヴィンの剣を受ける。

そのまま剣を押し止め、攻撃を加えようとするが魔王は動けなかった。

テルヴィンの剣の勢いが想定より強く、逆に押されてしまう。


「いいタイミングでのガードだったが、重さが足りない。それでは私の剣を受けることはできないッ!」


そう、タイミングはバッチリだった。

足りなかったのは“力”と“守”。

レベル1の魔王の値は共に10。

テルヴィンは“速”にステータスボーナスがかかる“剣士”とはいえ、“力”の値は180。

比較にもならない。


防御も弾き飛ばされて、魔王も吹き飛ばされる。


「ぐうッ」


「魔王様!?」


メルチがあわててヒールを放つ。


「危ない、危ない、削りきられるところだった」


「このガキが、本当にレベル1だったのかよ……」


テルヴィンは呆れたようだった。

だが、表情を変えずに言う。


「だが、私を怒らせたんだ……死ね」


テルヴィンは“剣士”の技スキル“直突き”を放つ。

テルヴィンの筋肉のバネが弾け、真っ直ぐに魔王に向かう。


魔王は吹き飛ばされた衝撃から回復しきっていない。


魔王は叫んだ。


「ヨート!」


「拳聖流・七折!」


魔王に集中していたテルヴィンは、意識外から現れたヨートの技に対応できなかった。

力と速さを活用する拳聖流の七折は、テルヴィンの剣を魔王から逸らす。


「キース!」


魔王の次の号令でキースが動く。

剣を逸らされたテルヴィン、だが発動したスキルは途中で止められない。

敵に当たるか、ある程度の距離を突進するまで止まらない。


「バカめ!矢のない弓使いなど役に立たん!」


「バカはお前だ!」


テルヴィンの前に青ざめた顔のキースが立つ。


「弓使いが何を!?」


「集中!」


キースがスキル名を叫ぶ。

直接スキル名を唱えることは、正確性を高めることから初心者鍛練に使われる。

やがては、スキル名を唱えないでスキルを発動する訓練をすることになるが、今キースはあえて唱えた。

“集中”の効果は命中率の上昇だ。


キースはスッと右拳を前に突き出す。


そこは、テルヴィンの“直突き”の突進終了の直前の地点。

テルヴィンの顔の前。


“集中”の効果で命中率が上がったキースの攻撃は、スキル終了直前の動けないテルヴィンの顔面を強打した。

キースとテルヴィンのレベル差、前衛と後衛の差、二人の力の差はこの瞬間においては何の関係もなかった。

テルヴィンの受けたダメージは、テルヴィン自身のステータスから換算されたスキル“直突き”の威力そのままなのだから。

例をあげれば、全速力で地面から突き出た棒にぶつかっていったようなもの。


キースの拳には、テルヴィンの頬骨や歯、鼻の骨が砕けていく感触が伝わっていた。

普段、弓矢では感じることのないダメージの感覚にキースは震えた。



「まさか、弓使いに近距離戦をさせるとは」


気絶したテルヴィンを縛り上げながら、キースはため息をついた。


「これこそが戦術というものだ」


偉そうに魔王は言った。


「戦術……ですか?」


その魔王にヒールをかけながら、メルチは聞く。


「その通り、余の命令でキースを戦線から外したことで奴の意識からキースの存在を消したのだ。そして、一対一の状況に持ち込むことでヨートの存在も消す」


「なら、私はなんで?」


「全員が居なくなれば不自然に思われるだろう? 余のサポートをさせるとともに、奴の注意を引かせていたのだ」


「よく考えていますね」


ヨートが感心したように言った。


「これは戦だ。勝つために考えることは当然ではないか。それに貴様らは仲間に裏切られ、余は貴様からの信頼を得ねばならぬ」


「はぁ、なんかすごいですね」


「それで、これから貴様らはどうするのだ?」


「私たちはとりあえず、キディスに戻ってギルドに事の次第を説明しようと思います」


リーダー代行として最年長のキースが言った。


「キディス……平原になにかあるのか?」


魔王の言葉にキースらが怪訝な顔をする。


「キディスは王都があるんですが」


「あの平原に、か?」


今度は魔王が怪訝な顔をする。


「あの、魔王様は今までどうなさっていたのですか?」


メルチが自分達と魔王との齟齬を解消しようとし始めた。


「うむ。余は人類連合軍との戦争の最中、魔王城に突入したきた大賢者らに封印されてしまったのだ。そして、ついさきほど目が覚めたのだ」


魔王の説明に、三人が固まる。


「ま、マジか」


「ほ、本当に?」


「伝説の魔王……」


「どうしたのだ三人とも」


三人の反応に魔王は眉をひそめる。


「もし、それが本当だとして、魔王……様はそれが何年前とか、その間に何があったとか知らない、わけですよね?」


キースがおそるおそる聞いてくる。


「その通りだ。どうやら、余の封印後、人類側が勝利したことは予測できたのだがな」


「え、ええとじゃあ私から説明しますね」


クレリックであり、神官学校で教育を受けたメルチが歴史の説明を始めた。


今から五百年前、世界征服を企んだ魔王軍はこの大陸のほとんどを支配した。


「今から、五百年前……?」


人類は結束し、反抗した。

キディス平原に連合軍の精鋭部隊が集結し、魔王軍に決戦を挑む。

その間に大賢者をはじめとする二十人が魔王城に突入。

最後には大賢者一人になりながら、魔王を封印することに成功した。


「そこまでは余も当事者ゆえ、わかっておるが、まさか二十人も入ってきていたとはな」


残った人類は大賢者を中心として神聖帝国ベルヘイムを建国。

その後の人間諸国家の礎となった。


大賢者自身は、国家の成立を見守ってから行方をくらませたのだと伝わる。


「そうか。死んだか、大賢者。もう一度戦いたかったものだが」


しかし、魔族の脅威が去ったわけではなかった。

魔王軍十二魔将の存在である。

筆頭魔将ジャガーノーンを中心として、魔王軍は人類、ベルヘイムと戦い続けていた。


「さすがは余の右腕ジャガーノーンよ」


その状況が変わったのは百年がたったころ、今から四百年前のことだ。

異世界から召喚されたとされる“勇者”が次々と魔王軍の拠点を攻略、そしてジャガーノーンと一騎討ちし、これを討ち果たした。


「“異世界”から召喚された“勇者”……ジャガーノーンを一騎討ちで破るほどの……」


勇者は、この戦いの傷がもとで亡くなったが、子孫がおり代々勇者の職を襲名している。


勇者の出現と、人類の復興によって魔王軍は徐々に勢力を減退させていく。


やがて、キディスに魔王城を見張るためにキディス王国が建国された百五十年前。

魔王軍は降服した。

そして、残されたその拠点は三つ。

生存している魔将は代替わりしたものも含めて三将と言われている。


そして、現在。

この大陸は人間が支配するが、数十もの国家が割拠している。

次回!五百年もたってて魔王様驚く!


明日更新予定です。


ゴブリン、ノーブルエッジ、テルヴィンの連戦でレベルが変動してます。


魔王様 レベル1

キース レベル18

メルチ レベル16 UP!

ヨート レベル16 UP!

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