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レベル1の魔王様は遠慮しない!  作者: サトウロン
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レベル42 間章 魔法

ベルスローンの都の郊外に大きな建物がある。

白い三階層の建物だ。

数百年前に建てられたもので、当時異世界から召喚された勇者は「まるで鏡餅だ」と呟いたと言われる。

そのカガミモチがどのようなものかはいまだに解明されていない。


その建物の名称は、ベルスローン帝国国立魔法スキル学院という。

通称、帝国魔法学院。

あるいは、さらに略して魔法学院。

生徒数三百人、全員が魔法職をすでに得ている。

そして、魔導科、精霊科、神官科に百人ずつ三科に別れて、日々魔法スキルの修得、発展に励んでいる。


この日は、全生徒が参加する大講堂での授業が行われていた。

数ヶ月に一度行われる全体学習だ。

他の科の授業内容を知ることで、自分の系統の魔法スキルに取り入れる狙いがある。

多くの視点が重要ということでもある。


「では、この世界に存在する魔法スキル。これは三つの系統に分けられる」


一つは魔導スキル。

魔力をそのまま扱い、操るスキル群だ。

これに長けた者を魔法使いや魔導師と呼ぶ。


もう一つは精霊スキル。

魔力を契約した精霊に渡し、引き換えに精霊が力を貸してくれる。

これは精霊使いと呼ばれている。


最後の一つは神聖スキル。

魔力を他者に渡すのは精霊と同じだが、渡す相手は神である。

神官職、クレリックやプリーストと呼ばれる人々が使うスキル群だ。


では、まずは魔導スキルについて説明する。

魔導とはその呼び方の通り、魔力を導く技術だ。

基本的に魔力は自身にのみ作用し、他者の魔力に干渉することはできない。

魔導スキルに妨害系や回復系がないのはそのためだ。

しかし、魔力を体外に導き、形を与えたならばそれは比類なき攻撃の魔法となる。

精霊スキルには属性がある地火風水といった四大属性に、光や闇、雷や草とかいった細かなものがいくつもある。

その属性によって効きやすい、効きづらいという相性がある。

しかし、魔導にはそれがない。

そのためどんな相手にでも効果を発揮する。

状況にハマれば強いのが精霊スキル、安定した性能を持っているのが魔導スキルというわけだ。

また、魔導スキルには妨害や回復はないと言ったが、逆に言えば他者に影響を及ぼすもの以外はあるということだ。

おおよそ、人間の想像力の範囲の中ならどんなことでもできると断言しよう。

一例を上げると、身体強化魔法がある。

魔力を込めることで見かけ上のステータスを向上させることができる。

武術の達人などが急に試合中に強くなったように見える現象があるが、それは無意識にこの身体強化を使っているからだと考えられている。

それを発展させると飛行魔法というものも使える。


こら、騒ぐな。

確かに空を飛びたいというのは夢のある話だ。

しかしな、理論上は飛行魔法は実現できるが、実現できた者はいない。

空を飛ぶということはそれくらい難しいことなのだ。


話を戻すと、身体強化というものはいろいろな発展ができる。

例えば、視力に特化することで遠くの物を見ることができる“センリアイズ”の魔法とかな。


ん? なに? 魔導スキルの時間が過ぎている。

仕方ない。

各自、魔導スキルについて学習しておくように。

将来、精霊使いになるにしろ、神官になるにしろ、魔導スキルは魔法スキルの基本だ。

勉強しておいて損はないぞ。


魔導スキルの教師は、そこで退場した。

代わりに入ってきたのは精霊スキルの教師だ。


ふう、ようやく行きましたね。

彼は熱心な教師ですが、視野が狭い。

魔導スキルが基本などと。


まあ、いいでしょう。

この後は精霊スキルについて説明しましょう。


その前に精霊とはなんでしょう?

誰か答えられますか?


ん? 自然のエッセンスが人格を持ったもの? なかなか良い考察ですが、違いますね。

他には、どうですか?

いませんか。


では正解を教えましょう。

精霊とは、神になれなかった、あるいはならなかった霊的存在の総称なのです。

原初、この世界の創造の際に非常に多くの神が誕生したと言われています。

そして、その付属物である霊も。

それらはいろいろなもの、火や水、草や森、山や大地などを司り、土着化していきました。

それが今日精霊と呼ばれているものです。


彼らは総じて気まぐれで、刹那的です。

目の前の面白いことにしか興味がないのです。

ですが、彼らの興味をひき、契約を結んだとき、彼らの性質が変わります。

契約者との関係を重視し、気まぐれな行動をとりにくくなります。

決してとらないわけではないんですよ。

こちらを尊重してくれるだけです。


そうやって契約した精霊は、魔力を与えることによって魔法を使ってくれます。

一つの精霊につき、基本は一つの魔法です。

その分効果は高く。

同じ魔力消費量の魔導スキルの二倍から十倍の効果を発揮してくれます。

まあ、精霊との信頼関係がなければそこまで高威力にはなりませんね。


精霊との契約者ですか?

まあ、気になるでしょうね。

ですが、実のところ契約の方法はそれぞれの精霊によって違います。

力比べをしたり、知恵比べをしたり、アイテムを要求したり、その時の気分だったり、色々です。

ただ一つ確実なのは、精霊を敬うこと。

使役してやるとか、こきつかってやるとかいう考えを精霊は敏感に察知します。

そうなるともう契約してくれる可能性は低くなりますね。


まあ、世の中には確実に契約してくれるアイテムもあるらしいですが、貴重品なのでそうそう世には出ないでしょう。


え? 私の時間はもう終わり?

魔導スキルの授業で時間を使ったからでは?


終わりですか。

そうですか。


精霊スキルの教師はわりとすぐに諦めた。

扱う精霊のように気まぐれな点があるのかもしれない。


次に入ってきたのは、神聖スキルの教師だ。

教師というよりは、現役の神官といったほうが相応しいかもしれない。


では、これより神聖なるスキルについて説明する。

このスキルは神に対してうやうやしく魔力を献上することで使うことができる。

よいか、うやうやしくだ。

畏敬の念をもって、献上するのだ。


往古の時代、この世界には十二の大神がいたという。

冥府の神アルメジオンや、永劫の竜神エルドラインなどが有名だな。

しかし、長き時を過ぎてほとんどの神々は去ってしまった。


そして、我々人間を憐れみただ一柱お残りくださったのが、光と司法の神バルニサス様である。

この偉大なるバルニサス様の権能は、光のごとき癒しの力と法を守る障壁の力。

神聖なるスキルは、この二つに特化しておる。

邪悪なるものを探知するスキルなどもあるが、ほとんどがパッシブスキルとなっている。

即ち、人間が自分の意志で使うことができるのは、回復スキルと障壁スキルとなる。


使えるスキルの数が少ない?

愚か者め!

よく考えてみよ。

傷を負った戦士を癒すことのできる重要性を。

どうしても守りたいものを守ることができる意味を!


良いか?

多種多様な手札を持っていれば、戦闘では有利となろう。

しかし、神聖なるスキルとそれを扱う神官の役目というのは戦闘のみではない。

長き旅の癒し手、あるいは町の施療院、都の貴族の家庭教師など、そのスキルと知識を生かす仕事は多様なのだ。

その専門に長じておるがゆえに、多くの仕事がある。


何?

他の神々のスキルは使えないのか?

貴様、バルニサス様を愚弄するか!?

そうではない?

ただの興味?


まあ、よい。

あとでバルニサス様に四半刻ほど祈りを捧げるがよい。


他の神々じゃが、どこにおるのか検討もつかん。

つまり、魔力を献上するあても、祈りを捧げる場所もわからん。

もし、そのようなところを見つけたら試して見ればよいだろう。


ただし、十二大神の中にも破壊の神や混沌の神などがいる。

その他にもダークエルフの祀る悪神や由来のわからぬ邪神も多い。

うかつにそれらの興味をひけば、破滅につながるゆえに気を付けるがよい。

よし、これからバルニサス様に祈りを捧げる時間としよう。


終わり?

祈りを捧げるのは各個人に任せる?

ふん。

まあ、よい。

これで神聖なるスキルの説明は終わりじゃ。


神聖スキルの教師も出ていった。

そこでようやく休憩となった。



メルチはため息をついた。

四半刻の祈り!?

今日はお姉様がいないからゆっくりできると思ったのに。



「という感じで勉強してたのよ」


「ふむ。興味深いな」


現在より二年から三年前くらいの話になります。

メルチはこのころからお姉様が苦手だったんですねえ。


次回!ベルスローン帝国に入った魔王様たちに新たな難題!どうする?どうなる?


明日更新予定です。

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