プロローグ-ウタカタのユメ-
「…………」
気がつくとワタシは深い暗闇の中にいた。もう何度も見たことのあるような光景。
無言でこのセカイを歩いてゆく。特に目的はないが、行動していると目的が見つかる気がして。
突如、後ろから何者かの気配を感じた。なにか、得体の知れないようなものの。
ワタシはとっさに背中に帯剣している剣を構えた。ワタシの能力がこいつに叶うかは分からないけど。
トットットットッ…自然と自らの鼓動も大きく、速くなっていく。
「勘違い…か……」
背中に剣をチンッとしまいながら呟いた。ワタシの呟きはどこにも反響せず、虚しく虚空へ広がった。
どれぐらい経ったのだろうか。ワタシは相変わらず1人でこのセカイをフラフラしていた。
「………?」
突如、ワタシの目の前に見覚えのある影が浮かび上がった。
全てが深い暗闇のセカイのはずなのに、その影はまるでワタシそのものを表しているかの様だった。何処にも交わらない、孤独の存在。そう思えるほど寂しげだった。
ワタシは無意識にその影に手を伸ばしていた。助けを求めるように。それとも、寂しかっただけなのかもしれない。
もう少し、もう少しで届く距離。その影に触れる、その刹那───。
セカイは明転した。