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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

過ぎてく年月。

作者: しっちぃ

『私と愛猫かのじょ。』39日目になるのかな。

 ゆっくりと、今年が終わっていく。そして、新しい年が、一歩一歩近づいてくる。


「今年も、もう終わりだねぇ……、なんか、ちょっとドキドキしちゃうよ」

「わたしも。……何でだろうね、年が変わったって、大して変わるわけじゃないのにね」


 隣で、そう言って笑うのは、私の、一番大好きな人。

 そう言えば、『恋人』になったのは、ちょうど一1ヵ月前だったね、ミーナ。

 この一ヵ月ですら、経ってしまえばあっという間だったような、長かったような気がする。今年も、あっという間で、長い一年だった。


「もうすぐ、終わっちゃうね」

「本当だ、あと一分だね」


 なんとなく、ちょっと寂しいような気がする。ミーナと『恋人』になれた、特別な年だったから、なのかな。

 半分だけ電気を落とした部屋で、小さいテレビを二人で眺める。画面の出た時計の秒針が、日付が変わったことを知らせる。新しい年、またミーナと迎えられた。去年は猫だったミーナと。そして今年は、人に生まれ変わったミーナと。


「あけましておめでとう、今年もよろしくね」

「こちらこそ、よろしくね」


 自然と重なる、唇と唇。『真部美奈』としてのミーナと初めて出合った日からしてきたそれは、もう数えきれないくらい、私とミーナの心を繋いでくれる。


「今年も、来年も、その先も、ずっとずっとよろしくね?」

「もう、ミーナってば……」

「だって、わたしが猫だったとき、いつかはカスミより先にいなくならないといけなかったんだよ?」

「そうだね……」


 重い言葉に、ちょっとだけ二人の間の空気も沈む。

 猫の寿命は、人よりもずっとずっと短い。猫だったミーナが死んでしまったとき、一生で一番ってくらい泣いた。遅かれ早かれ、ミーナに先立たれるっていうのはわかってたつもりだったけど。

「でも、これからは、もっと一緒にいられるでしょ?」

「うん、そう……だねっ」

 毎日キスをするって条件、もう忘れかけてるかもしれない。だって、恋人になってから、一日で何回もしてきたから。


「そろそろ、お休みしよっか」

「うん、ちょっと眠い……」


 電気もテレビも消して、いつもみたいにベッドに潜り込む。


「お別れのときが来るまでだけど、……ずっと一緒にいようね、ミーナ」

「うん、約束、だよ?」


 もう、真っ暗な中でも、ミーナとの間合いは分かる。

 誓いのキスみたいに重なったくちづけは、私とミーナの間を甘酸っぱいもので満たしてく。


「おやすみ、カスミ」

「うん、……おやすみ、ミーナ」

 

 体が、自然とおやすみのキスを交わしていた。

 幸せ、という気持ちに、体が満たされる。

 大好きだよ、ミーナ。いつもみたいに、ゆったりと、夢に流されていった。

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