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短編集  作者: まきじゃく
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生態学者の愚痴

俺は生態学者だ。仕事は生態観察。毎日相棒の宇宙船に乗って、色んな星の奇妙な生物を観察しては報告書にまとめて提出している。ぶっちゃけた話、こんなのは誰にでもできる。だがそうはいかないのがお役所ってヤツで、資格がいるだの専門知識を持った人間がふさわしいだのごねられた挙句、半ば無理やり俺が選ばれたってワケだ。趣味で宇宙船をいじっていたのもあって、決定されるまでそう時間はかからなかった。まあ金はいいし、延々と続く宇宙旅行と時々見るおぞましい生物に目を瞑ればそう悪くない。

宇宙ではやることがない。娯楽も、同じことを何年もやっていれば飽きる。そろそろこの仕事を切り上げて、ゆっくり余生を過ごしたいところだが……。丁度次の星が見えてきた。とりあえず続けるかどうかはこれを片付けてから考えるか。

スコープを覗き込んで、俺は言葉を失った。その星の生物はあまりにもおぞましく、気味が悪い造形をしていた。まず、毛がほとんど生えていない。個体差はあれど、多くても体の一番上を僅かに覆う程度だ。大量の「その生物」は少ない足をせこせこと動かして蠢いている。

吐きそうになるのをぐっとこらえて、俺は観察を続けた。なるほど、二種類いるようだ。おそらく雄と雌だろう。これは俺の種族もそうなので、特に何も思わない。だが、皮膚がつるつるなのは不気味だ。しかもこの星の生物はそれがステータスのようだ。ああもう、本当に吐きそうだ。

目、鼻孔、耳はふたつずつ。だが口はひとつだ。どうして全て二つずつにしないんだ?他の器官も二つずつある中、所々ひとつのものがある。これには吐き気を通り越していらいらする。

栄養摂取の方法も気持ちが悪い。食物を口から取り入れ、ぐちゃぐちゃにしてから体に寄生させている小さな生き物どもに与えて、栄養を完全に搾り取らずに大量に排泄する。非効率な生物だ。みれば見るほど酷い。

ふと、俺は発見した生物の命名権が俺にあることを思い出した。普段は面倒だからやらないが、たまにはいいだろう。どんな名前にしてやろう。ひどい生物……そうだ、「ひど」というのはどうだろう。いや、どうせなら名前の由来は分からない方がなんとなく格好がいい。

よし、「ひと」だ。

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