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ネカマの弟に親友が恋しました  作者: 奈倉小町
彼はモテ期を愚考する
2/8

第1話 「学校」

「ハロー!けんけん」

「その呼び方……やめ……やっぱいいや」

「おいおい、全く暗いよ健人」

「いつも通りだよ……はぁ」

公立大和川高等学校。学校はよくありがちな『文武両道』をモットーに部活を行うことを熱心に勧めている。

隣のモテ期は30回あると言われても頷けるほどの男は、山崎和也。バスケットボール部の部長。僕のような前髪が目を隠す長さの根暗には似合わないような人間。

最初会ったときは僕を更正させたいのかと思ってた。実際は、ただ単に一番印象深いのが僕だっただけらしい。

まぁとにかく山崎という人間は完璧だということだ。

ただ一つを除いて……。


ネカマの弟に恋しているという一点を除いて。


何故気づいたのか。気になることだろう。

言いにくいのだが、弟は山崎の2倍完璧なのだ。

だから……その……弟の部屋に忍び込んだ。

忍び込んだのは悪いと思っている。が、やってしまったことはしかたがない。そう思わないと心が折れそうだ。

弟の部屋は、自分の部屋に比べてとてつもなく完璧な部屋だった。

壁には全ての辺には本棚、そしてそこにつまっている本。その本棚に囲まれ、真ん中に存在する机。何処かの貴族学校の生徒会長室をも思わせる机にはパソコンが置いてある。


そんな部屋で僕は見つけてしまった。パソコンの横に置いてある「現代女子語辞典(年頃の女の子の言葉を知る)」を。

おかしい。最初につけて思ったのはこれだった。あの弟がこんな本を?あり得ない。

仕方なく、絶対にやむを得なくパソコンを見ると、チャットルームへのショートカットアイコンを見つける。アクセスすると、ユーザー名「千尋」の文字が……。

僕は咄嗟にサイト名のURLをメモする。自分もパソコンでアクセスして弟の真偽を確かめるために。



「どうした?急に浮かない顔して」

「いや、なんでもないよ」

そう、何でもないのだ。きっと、悪い夢で悪い夢なのだ。

「なぁ、健人。昨日も千尋ちゃんと話したんだ」

夢じゃなかった。


***********


上がいろいろあったころ、階下でもいろいろあ

った。

この高校は学年が上がるたびに階が上になる。

その高校1年の教室では、僕を囲んで女の子が立ち往生っていうフィクションのようなことが起こっている。

自分で言うのもなんだが、僕はこの学年でずっとテスト1番の秀才で、県主催の水泳記録会、陸上記録会では堂々の優勝。部活ではバスケ部の副団長で部を全国まで行かせたスター。おまけに容姿端麗。完璧なのだ。

兄からは

「お前には、モテ期なんてものは存在しないよな。だってさ、お前は人生=モテ期だもんな」

だそうだ。

しかし、兄も美男だとは思う。根暗というか、ネガティブというかそれをなくせばモテるのだろう。

まぁ兄も知らない一面を除けば僕に好意をもたない人間はいない。

いや……あの人は違った。

七音寺ドレミでら由依。

彼女は会ったときの最初の一言は、

「私の前に立つなんてなんと恥知らずな事か」

と言った。

その後、非公認佐藤光ファンクラブにされた事を思うと七音寺もトラウマになっているだろう。


おっと、脱線してしまったが。

兄も知らない一面、僕がネカマをやっていること。

やっている理由は……その……モテない人になりたかった。

どうすれば、いいか。考えた結果、オカマになればいい。そう考えた。

しかし、プライドが許さない。だから、ネカマになった。

あんなに女の子に囲まれたら気は誰でも狂うだろう。

まぁ女の子に囲まれる事がなかなか無いのだろうが。


そんな言い訳をしていたが、いつの間にか趣味になっていた。



今日もまた、僕はパソコンを開く。千尋として。

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