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天ノ川

船底に身を隠していた彦橋が船上が静かになった事を不思議に思い顔を覗かせる。


目に飛び込んだ凍った天帝の姿に驚き、高らかに声を上げる。


「ひゃっほー!に本当にやっちまいやがった!嬢ちゃんたちには度肝抜かれっぱなしだぜ!人は見かけによらないもんだなー!!にしても真冬ちゃんの方はひどい怪我だ。早く手当しねーと!」


あたふたする彦星。


「大丈夫!私に任せといて~♪」


香はリュックをがさごそっとあさり薬を取り出す。


「少ししみるかもだけど我慢してね。」


負傷した痛々しい体を悲しそうに見つめ、傷口にそっと薬を塗りだした。


「こんなに怪我しちゃって。真冬一人に頑張らせちゃったね。。」


そんな事は無い。香がいてくれたからこそだよ。


薬を塗り終わり包帯を巻き、所々の痛々しい傷口は隠された。


「はい、おしまい!とびっきりいいお薬塗っといたからすぐ治るからね♪」


「ありがとう。助かったよ。」


「いえいえ~!お代は体で払ってもらうから~♪」


「はいはい。」


いつもの彼女の冗談に呆れ口調で言葉を返した。


しかし最近その冗談が本気で聞こえるのは私の気のせいだろうか?


もしかしたら香は本音を冗談っぽく言っているのかもしれない。


なんにせよ言葉で聞く事が出来なければ、答えを知っているのは彼女のみだ。


まあ気がどうにかしているのは私の思考か。


これ以上は考えると長くなりそうのでこの辺で止めにしておこう。


船は引き返す事なく航路を進む。


船体の損傷も少なく川をここまで渡って来たのだから引き返すのももったいないし川先の村の様子もいち早く確認したいとの彦星の提案だ。


私たちも早く先に進める事にこした事はないので彦星に賛同した。


だんだんと岸が近くなり、反対岸からはかすかにしか見えていなかった大陸がはっきりと見えるようになってきた。


大陸は白く、雪に覆われていた。


春神が言っていた、「僕の力が届く範囲」の境目がここなのだろう。


川境で季節が異なるというのもおかしなものだな。神秘的でもあるが。


ここ最近暖かい春を過ごしていた為、急に気温が下がるというのは辛いものがある。


久しぶりの冬の再来に私達の心も冷めていく様な気がした。


「到着だー!碇をおろせー!」


船は無事村へ到着。船が来た事に驚いた村人達がわんさかと集まってくる。


船を降りた私達に、その中からひときわ目立つ綺麗な女性がかけよってきた。


「彦星?彦星なのですね!?無事でよかった。」


彼女は彦星に抱き着き涙を流す。


「織姫・・・無事でなによりだ。」


この人が彦星の言っていた奥さんかぁ。


大衆の前で熱い抱擁を交わす二人。


無事に再会できてよかったよ。


私達は二人を温かく見守るのだった。


村の人々は天帝を退治した私達を歓迎してくれた。


傷つき疲れ果てた私達を織姫は自宅へと招き入れる。


彦星は船の修理を早急に終わらせたいとの事で今夜は徹夜で作業するらしい。


夕食には目移りする程の豪勢な料理が食卓を飾る。


織姫に旅の話しを聞かせて欲しいと言われ、食事を頂ながら私達の旅の経緯を話す。


何故旅をしているか、この世界はどんな状態か。


話しを聞いた織姫は事の真相に驚きを隠せないようだった。


当然の反応だろう。今ある常識を覆すような話しなのだから。


何かを思い出したのかの様に突如表情を変え織姫はこう答える。


「この村の古い言い伝えなのですが、天ノ川の由来は夜空に星々が創り出す光の川と言われております。それはそれは美しいものだとか。しかし一年の間に見れる時期が決まっており、夏から秋の間夜空を彩ると・・・。残念ながらわたくしは一度もそれを拝見した事がありませぬ。お二人のおっしゃっている四季と言うものが過去に存在していたならば、この言い伝えとの辻褄が合いますわ。」


光の川の存在を初めて耳にし想像が膨らむ。


「きっとその言い伝えは正しい。夏と秋の季節の名が出てきているのが何よりの証拠だ。私達が本当の世界を知らなすぎるだけ。四季が目覚めた時には本当の天ノ川を是非見てみたいものだな。」


「そうですわね。その時が訪れたら心ゆくまで天ノ川を堪能いたしましょう。お二人のご活躍に期待しております。」


織姫は優しく笑みを浮かべていた。


「よっしゃあ~!じゃあとっとと四季目覚めさせちゃわないとね~♪」


香は天ノ川見たさに更に気合いが入ったようだ。


まだ見ぬ未知との遭遇に期待が募る。


それから女同士というのもあり織姫と打ち解けるのに時間はかからなかった。


ガールズトークに花が咲く。


こうゆうのって楽しいな。


君達と一緒に光の川を見れる日が来るのを楽しみにしておくよ。


辛く長かった一日の最後は笑顔で締めくくられたのだった。

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